
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 432ページ 上製
定価:3,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-1853-0 (4-7503-1853-1)
在庫あり
奥付の初版発行年月:2004年01月 書店発売日:2004年02月04日
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日常生活に不可欠な法律。しかし権威ある伝統的学問として法学は男性支配の傾向が強く,性差別的側面が多々あるのも事実である。本書は,「労働」「家族」「身体性」の3領域においてフェミニズムの視点から従来の法律論の矛盾を検証する画期的研究書。
目次
1 労働を生きる……浅倉むつ子
第1章 均等法とコース別雇用
第2章 同一価値労働同一賃金原則
第3章 働き方を考える
第4章 職場のセクシュアル・ハラスメント
第5章 ポジティブ・アクション
第6章 間接性差別の禁止
第7章 パートタイム労働と均等待遇
2 親しさを生きる……戒能民江
第1章 家族法改正へ
第2章 夫婦別姓
第3章 婚外子差別
第4章 戸籍と「家」
第5章 「親密圏」に潜む暴力——ドメスティック・バイオレンス
第6章 離婚の自由
第7章 老いを生きる
第8章 シングルマザーとして生きる
3 身体・性を生きる……若尾典子
第1章 性と人権——女性の身体と家族
第2章 「ポルノ」を批判する視点の登場
第3章 人口論と女性の身体
第4章 女しか妊娠しない!——中絶合法化の流れ
第5章 生殖技術と女性の願い
第6章 買売春と法制度
第7章 性の自己決定権と性業者・買春者
4 フェミニズム法学をめざして……浅倉むつ子/戒能民江
第1章 男女共同参画とは——法律と条例
第2章 司法改革と法学教育
コラム
1 ILO一〇〇号条約の履行について(浅倉むつ子)
2 キャンパス・セクシュアル・ハラスメント(戒能民江)
3 女性差別撤廃委員会の日本に対する最終コメント(浅倉むつ子)
4 セクシュアル・マイノリティと法(戒能民江)
5 犯罪被害者(戒能民江)
6 思春期の少女たち(若尾典子)
7 女子学生のためのシェルター(若尾典子)
8 子どもの性的自己決定(若尾典子)
9 ジェンダーの主流化——国際機関の動きから(浅倉むつ子)
前書きなど
法学とは、生活と法との関係にかかわる理論である。しかし、男性の視点が市民社会を支配している現状では、女性の実際の生活が女性自身の言葉で語られることは、なお少ない。だからこそ、女性が生きている現実の生活を直視して、実際にそこで何が起きているのかを認識するところから、法学は出発しなければならない。 Aさんの夫は、常に「お前は馬鹿だ、何の能力もない」と侮辱し続け、Aさんの首をしめる、殴る、蹴るなどの暴力をふるっていた。暴力は、徐々にエスカレートしていき、子どもにも向けられるようになり、耐えかねたAさんは、離婚を決意して子どもたちとともに家を出た。ところが、ある日、学校の門の前に待ち伏せしていた夫に子どもたちは連れ去られてしまった。夫はその日の内に出国して、自分の国に渡航したのだが、それ以来、子どもたちの行方はわからない。事件が起きたときは、離婚調停の途中で、夫もまだ親権者だったし、国外への連れ去りであったために、警察や裁判所、外務省は、できることはないと冷たく突き放すだけだった。 いま、配偶者暴力防止法(DV防止法)の改正が進められている。立法にあたる国会議員や省庁関係者とNGOとの意見交換の場には、いつもAさんの姿がある。「日本の刑は軽いから」とうそぶく夫に身も心も深く傷つけられたこと、DVから一緒に逃げてきた子どもを直接守る法制度がないこと、離婚裁判で子どもの引渡しが命じられても、日本政府が「子どもの国際的奪取の民事面に関する条約」を批准していない以上、国境を越えてしまえば、離婚判決も意味をなさないこと。Aさんのこれらの体験を、法に携わる者は、耳を傾けて聴かなければならない。そして、Aさんの悔しさ、怒り、無力感を生み出したものをはっきりさせていくことから、私たちは出発しなければならない。法と女性や子どもの経験との溝がこんなに深くなければ、これほどまでに彼女の自由と希望が失われることはなかったのではないだろうか。 法とは正義だという。だが、「正義」とは、性差別社会で優位な立場を占め、権力を握る男性たちの価値観を基準とした「正義」にほかならない。法は中立であり、客観的でなければならないともいう。しかし「中立」や「客観性」という価値基準もまた、男性の経験のみに根ざしたものでしかない。男性の経験や感覚が「普遍」とされる一方、女性の経験や女性がかかわる事実は、「特殊」として、周辺化されてきたのである。 女性が性役割を付与された「私的領域」は、男性の場である「公的領域」とは区分されてきた。私的領域における労働や経験は、価値のないものとされた。私的領域、すなわち結婚や家族、性、身体といった生活にかかわる問題は、政治的ではない事柄とされ、法の不介入が原則となった。 女性と法との関係に根本的な変化をもたらしたのは、一九六〇年代に始まる第二波フェミニズムである。それまで個人的な問題として片付けられ、政治の世界では周縁にしか置かれてこなかった問題、すなわち、性的自由や身体の自己決定、結婚制度と家父長制、あらゆる形態の女性に対する暴力について、「個人的な問題は政治的である」というスローガンのもとで、女性たちがようやく語り始めたのである。私的領域における性支配こそ、性差別社会の構造の中核にあることを、第二波フェミニズムは明らかにした。 学問研究の世界を支配してきたのも男性である。どの学問領域においても、研究を職業にすることは、女性には不向きだと言われてきた。なかでも法律学は、権威のある伝統的な学問として、男性支配の傾向が根強い。もっとも、近年、女性研究者も増えてきており、大学教員の女性比率もある程度あがってきた。しかし、女性の管理職の比率はなお低迷を続けており、法律学が男性支配から抜け出るには、なお時間がかかるだろう。生活と法の新しい関係を創り出す作業は、だからこそ、真剣に取り組まれなければならない。 フェミニズムとは「性差別をなくし、性差別的な搾取や抑圧をなくす運動」であり、一部の人のためではなく「みんなのもの」である(ベル・フックス)。なにより「女」はひとつではない。また、セクシュアリティの多様性は、男女二分法でくくることはできない。 本書のタイトルは「フェミニズム法学」である。私たちは、本書によって、性差別社会をなくす営みの一翼を担いたいという思いから、また、性差別と人権侵害への闘いのために法を必要としているすべての人たちへの支援となることを願って、あえて「フェミニズム法学」を名乗ることにした。本書によって、法律学が社会の中心に位置してきた男性による「知の世界」であったことを批判しつつ、ジェンダー視点から、新たな法律学を構築しようと試みるものである。 本書では、生活と法の新しい関係を創り出すために、「労働」、「家族」、「身体・性」という三つの領域を対象として設定した。それぞれの領域で、できるだけ新しい問題を取り上げつつ、なお理論的ジレンマを抱える問題に対しても、果敢に切り込んだつもりである。読者の方々による率直なご批判を仰ぎたい。(後略)
著者プロフィール
浅倉 むつ子(アサクラ ムツコ)
浅倉むつ子(あさくら むつこ)<br>東京都立大学法学部教授<br>専攻:労働法、ジェンダー法<br>【主要著書】<br>『導入対話によるジェンダー法学』(監修、不磨書房、2003年)<br>『労働とジェンダーの法律学』(有斐閣、2000年)<br>『均等法の新世界』(有斐閣、1999年)
上記内容は本書刊行時のものです。戒能 民江(カイノウ タミエ)
戒能民江(かいのう たみえ)<br>お茶の水女子大学生活科学部教授<br>専攻:女性学、家族法学<br>【主要著書】<br>『ドメスティック・バイオレンス』(不磨書房、2002年)<br>『ドメスティック・バイオレンス防止法』(編著、尚学社、2001年)<br>『法女性学への招待』(共著、有斐閣、1996年)
上記内容は本書刊行時のものです。若尾 典子(ワカオ ノリコ)
若尾典子(わかお のりこ)<br>県立広島女子大学生活科学部教授<br>専攻:憲法学<br>【主要著書】<br>『ヒロシマと憲法』(共著、法律文化社、2003年)<br>『闇の中の女性の身体』(学陽書房、1997年)<br>『わがままの哲学』(学陽書房、1992年)
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