事例で学ぶ 司法におけるジェンダー・バイアス
第二東京弁護士会司法改革推進二弁本部ジェンダー部会司法におけるジェンダー問題諮問会議:編
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 400ページ 並製
定価:2,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-1812-7 (4-7503-1812-4) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2003年11月 書店発売日:2003年11月15日
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紹介

2004年春から始まる法科大学院で開講される「ジェンダー法学」の画期的テキスト。総論,家事編,民事編,刑事編の4部構成で,離婚,セクハラ,昇進・昇給差別,強姦など具体的事例を通してジェンダーの視点から法を考察する。

目次

発刊のことば 尾崎純理
はじめに 市毛由美子

第1部 総論

 1 ジェンダーとは 江原由美子
 2 近代、ジェンダー、そして高齢社会 瀬地山角
 3 法とジェンダー 大村芳昭
 4 社会正義とジェンダー——ジェンダーの視点から見る正義とは何か 岩瀬民可子
 5 暴力とジェンダー 江原由美子
 6 被害者心理とジェンダー 野坂祐子
 7 司法におけるジェンダー・バイアス 小倉京子/番敦子

コラム
 「同性婚」ないし「パートナーシップ登録」について 大村芳昭
 性同一性障害と戸籍訂正の可否 大村芳昭

第2部 家事編

解説
 1 家事事件の手続 打越さく良
 2 諮問会議の参考議論 色川雅子/白土麻子

コラム
 親権者について 大島やよい
 不倫をどうとらえるか、そして性の二重基準? 瀬地山角
 夫による強姦罪の成否 大島やよい
 夫婦財産制 大村芳昭
 離婚給付 大村芳昭
 ドメスティック・バイオレンス 吉川真美子

第3部 民事編

解説
 1 男女賃金差別をはじめとする職場におけるジェンダー問題について
 2 賃金差別事件判例の検討
 3 セクシュアル・ハラスメント
 4 セクシュアル・ハラスメント事件判例の検討
 5 企業のコンプライアンスとジェンダー

コラム
 雇用均等室とADR 大西祥世
 労働組合の現状 佐々木陽子
 日本における男女賃金格差の現状 原田史緒
 法的救済に至るまでの当事者の困難さ 大西祥世
 法律扶助 佐熊真紀子
 セクシュアル・ハラスメント相談と苦情処理の分離 大村芳昭
 損害論の発展——PTSDによる逸失利益 佐熊真紀子
 コンプライアンス 長谷川卓也

第4部 刑事編

解説
 1 はじめに
 2 強姦は正しく認識されているか
 3 被害者は救済されているか
 4 刑事司法におけるジェンダー・バイアスの再生産

コラム
 被害者の心身 野坂祐子
 なぜ強姦被害者は告訴しないのか 宮園久栄
 貞操観念 佐々木陽子
 レイプ・シールド法 小倉京子/宮園久栄
 「強姦罪」における「暴行又は脅迫」について 小宮友根
 女性加害者と正当防衛理論 吉川真美子

発展問題
 1 判例の検討
(1)被害者の供述および証言の信用性が認められ、強姦罪の成立を認めた事例/(2)被害者の供述および証言が信用できないとして強姦罪の成立が否定された事例/(3)夫婦間強姦について
 2 女性が加害者である場合
(1)統計から見た女性による犯罪/(2)裁判所はどのように判断しているか・その1=正当防衛はなぜ認められなかったのか?/(3)裁判所はどのように判断しているか・その2=刑の免除と「被害者の落ち度」

資料1 シャープエレクトロニクスマーケティング事件
資料2 横浜セクシャル・ハラスメント事件
資料3 強姦致傷被告事件
資料4 名古屋夫殺人事件
索 引

前書きなど

 現在、日本の司法のあらゆる場面で、ジェンダー・バイアスが存在することの問題点が指摘されています。  例えば、強姦罪を巡る裁判において、性被害にあった女性の現実を無視し、十分抵抗しなかった女性の供述の信用性を否定して無罪とした判決(平成3年3月26日名古屋高裁)、犯罪事実と無関係な被害者の職業や過去の性体験、貞操観念などを理由にその証言に虚偽・誇張が含まれているとして無罪となった判決(平成6年12月16日東京地裁)があります。なぜ、女性の話は社会や公的な場においてなかなか信用してもらえないのでしょう。強姦罪の成否と過去の性体験・貞操観念とは、一体どう関わりがあるのでしょう。  また、セクシュアル・ハラスメントを巡る裁判でも、抵抗しなかった被害者に非があるとして損害賠償が減額された例(平成12年12月1日仙台高裁)があります。嫌なことを嫌といえない関係のもとで起きるセクシュアル・ハラスメントにおいて、被害者が十分抵抗することなどできるでしょうか。あるいは、強盗にあった被害者に、あなたが抵抗しなかったから悪いんだ、と非難を浴びせるでしょうか。  あたりまえと思われてきたことが、実は全く根拠のない固定観念であったり、無意識のうちに潜在的に刷り込みが行われてきた偏見であったりすることは、世の中に多々あることです。しかし、法律家がこのような固定観念や偏見にとらわれた判断をしていたら、一体何が起きるでしょう。司法が目指しているのは、紛争の解決を通じて自由と正義、公正、人権といった普遍的価値を実現することにあります。そのためには、法曹を志す者、すでに法曹の職にある者が、自分の中にある思い込みや固定観念、偏見といったものに向き合う姿勢とたゆまぬ努力がなされなければなりません。  法曹に対するジェンダーを含む人権教育のありかたについては、すでに国際的な場でも何度も指摘・勧告がなされています。ここで大切なのは、法理論のみならず、現実に起きている問題の根底にあるジェンダー・バイアスを認識する社会学的、心理学的考察です。  平成14年、第二東京弁護士会では、司法におけるジェンダー・バイアスの問題を司法改革の課題として位置付け、司法改革推進本部にジェンダー部会を設置するとともに、当面の課題として、平成16年に開設されるロースクールにおいてジェンダー教育を充実させることを目指し、弁護士メンバーのみならず社会学・心理学的バックグラウンドのある諸先生方にも参加していただき「司法におけるジェンダー問題諮問会議」を設置しました。ご多忙にもかかわらず重任を快くお引受いただいた江原由美子東京都立大学教授を座長に据え、1回3時間、約11回にわたる白熱した議論が展開されました。  本書は、ロースクールでの授業のみならず、すでに法曹の職にある方々や警察官、調停委員など司法関係者の一般の研修にも役立てていただけるよう、工夫がこらされています。ここにいたるまでの諮問会議メンバー各位の情熱と努力に深く感謝するとともに、各方面の方々が、この貴重な成果である本書を、ロースクールの教室をはじめとする法曹教育・研修に幅広く役立てていただくことを切望します。 はじめに 市毛由美子

著者プロフィール

第二東京弁護士会司法改革推進二弁本部ジェンダー部会司法におけるジェンダー問題諮問会議(ダイニトウキョウベンゴシカイシホウカイカクスイシンニベンホンブジェンダーブカイシホウニオケルジェンダーモンダイシモンカイギ)

執筆協力者<br>○弁護士<br> 色川雅子,打越さく良,大島やよい,小倉京子,佐熊真紀子,<br> 白土麻子,菅沼友子,千葉恵子、長谷川卓也,原田史緒,番敦子<br><br>○外部委員<br> 東京都立大学人文学部教授 江原由美子<br> お茶の水女子大学大学院人間文化研究科 吉川真美子<br> 東洋学園大学人文学部専任講師 宮園久栄<br> 東京大学大学院総合文化研究科助教授 瀬地山角<br> 中央学院大学法学部助教授 大村芳昭<br> 東京都立大学大学院 岩瀬民可子<br> 東京都立大学大学院 小宮友根<br> 武蔵野大学心理臨床センター臨床心理士 野坂祐子<br> お茶の水女子大学ジェンダー研究センター講師 大西祥世<br> 東京大学大学院総合文化研究科 佐々木陽子

上記内容は本書刊行時のものです。
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