聾の人びとの歴史
ペール・エリクソン:著, 中野 善達:訳, 松藤 みどり:訳
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 224ページ 上製
定価:3,300円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-1756-4 (4-7503-1756-X)
在庫あり
奥付の初版発行年月:2003年07月 書店発売日:2003年07月10日
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紹介

聴覚障害者である著者が,古代ギリシャ時代から現代までの欧米における聾教育を中心とした聾の人びとの歴史を,豊富な歴史的資料とともに平易に解説。また,聾教育について語ることから,「言葉」と「思考」に対する人びとの考え方の移り変わりも映し出す。

目次

はじめに
スウェーデン語「聾」(Deaf)の進展
スウェーデンにおける「聾唖」という単語
古代エジプト
クロイソス王の聾の息子
最古とみなされる手話への言及
ギリシャ人たち
アリストテレスの信条
ローマ人たち
ユダヤ人たち
キリスト教
『コーラン』
ベネラブル・ベード
聾者のための最初の教師
トルコ人たち
聾者の法的地位
第一の時期
ルドルフ・アグリコラ
ジロラモ・カルダーノ
聾の画家、フアン・フェルナンデス・ナバレテ
ジョバンニ・バティスタ・デラ・ポルタ
コスマス・ロッセリウス
メルヒオル・デ・イェブラ師
ペドロ・ポンセ・デ・レオン
フアン・パブロ・ボネット
エマヌエル・ラミレス・デ・カリオン
ディエゴ・ラミレス・デ・カリオン
フランシス・メリキュリウス・ファン・ヘルモント
ヨハン・コンラッド・アンマン
ジョン・バルワー
ジョージ・ダルガーノ
ジョン・ウォリス
ウィリアム・ホルダー
ヘンリー・ベーカー
ヨアヒム・パシャ
ヴィルヘルム・ケルガー
ゲオルク・ラーフェル
オットー・ラシウス
ヨハン・ルドウィッヒ・フェルディナンド・アーノルディ
ヤコブ・ロドリゲス・ペレイラ
ボルドーのエルノー
クロード・フランソワ・デシャン
聾教育史の第一期の略史
聾教育史の第二期、聾学校
トーマス・ブレードウッド
アベ・ド・レペ
ザムエル・ハイニッケ
アベ・ド・レペとザムエル・ハイニッケの往復書簡の概要
ジャン・マルク・ガスパール・イタール
オーギュスト・ベビアン
ヨーロッパでの聾学校を設立するにあたっての政府機関のイニシアチブ
フランス法の衰退、アベ・シカール
ヨーロッパにおける聾学校の始まり
ドイツ法の衰退、ディーター・エシュケ
ペチュケ
次世代の学校
トーマス・ホプキンズ・ギャローデット
チェクの本の図版
フランス法で設立されたヨーロッパの学校
四種類の異なる指導体系のまとめ
なぜ話し言葉訓練(ドイツ法)が一八八〇年のミラノにおける第二回聾教育者会議で優勢になったか
聾教育の第三期
手話による世界で最初の教授

〈付録〉アベ・ド・レペとザムエル・ハイニッケの往復書簡
訳注
訳者あとがき
図版索引
文献リスト

前書きなど

本書はPer Eriksson, The History of Deaf People: A Source Book. Daufr, Sweden, 1998.の全訳である。原本はB5変型判、一二八頁、ハードカバーで、豊富な絵・写真・図版、とりわけ各種・各国の手話や指文字が掲載されている、見ていて楽しい本である。 著者のエリクソン氏はスウェーデン生まれの先天性の聾者で、通常の学校内で話し言葉や読み書きの指導を受けたという。聾者の世界との出会いは一八歳ぐらいの時で、それ以後、手話で聾の人びとの文化になじんでいったようである。歯科の業務に携わるかたわら、趣味として系譜学を研究していたが、これが機縁ともなって、あるときから突然に、聾の人びとの歴史に関心を持ち、それを調べはじめたという。その成果が認められ、スウェーデン国立特殊教育研究所の学習教材部門から出版されることになった。 本書は五つの部分と「付録」とで構成されている。最初に、スウェーデンにおける「聾」とか「聾唖」という用語や先駆者の考え方が扱われている。次の部分で、古代エジプトやリュディア、ギリシャ、ローマ、トルコなどにおける聾の人びとへの対応やアリストテレスの言説、キリスト教やコーランの教え、聾者の法的な地位などが紹介されている。この古代や中世における聾の人びとは、社会から追放されたり、虐待されたり、軽蔑されたり、いわば差別と偏見の対象となったことが諸書に記述されている。また、宗教的な同情が寄せられたり、保護されたりしたことも知られている。本書はこうしたことに関し、指弾したり、追及するようなことはしていない。あくまでも資料を提供し、判断は読者に委ねる姿勢をとっている。 この本でもそうだが、アリストテレスは誤解されてきたようである。彼は「聾者は理性を欠いており、教育不可能である」と述べたと諸書に記されているが、訳注に記したように、そうしたことはなかったと判断できる。しかし、こうした考えや、ユスティニアヌス法典の「先天性の聾唖者の無能力」は長い間、聾者の教育や法的権利に影響を与え続けてきた。わが国でも、民法が「盲者、聾者、唖者」を準禁治産宣告の要件とし、全日本ろうあ連盟を中心とする運動によってその規定が削除されたのは一九八〇年のことであった。また、聾唖者は判断能力に欠ける責任無能力者とする「イン唖者ノ行為ハ之ヲ罰セス又ハ其刑ヲ軽減ス」(刑法第四〇条)という条文が削除されたのは、実に一九九五年のことであった。 一六世紀のはじめ頃から、富裕な家庭の聾の子どもたちが個人的に教育を受けたりするようになった。著者はこの時期以後の記述をもっぱら教育を中心に行っている。そして、こうした試みをした先駆者たちやその行ったことを人物を中心にして描出している。一八世紀の後半までが三つ目の部分に相当する。 四つ目の部分は教育の第二期とし、一七六〇年ごろから一八八〇年までを対象にしている。いわば聾教育の開始期の状況がわかるようになっている。聾教育では、一八八〇年に開催された第二回聾教育者会議がその理念や方法の画期とされ、世界的に口話法が推進されることになったが、その事情がわかりやすく示されている。 次の五つ目は教育での第三期で、政府が聾教育に責任を持つようになり、教育の義務化が進行したこと、口話法教育の進展に疑念が出され、手話の活用を図る動きの広がりを予測している(本年三月、イギリス政府はイギリス手話を一つの言語として公認することを発表した)。 付録に、系統的な手話(方法的手話と訳されたりしている)の開発者ド・レペと口話法の主唱者ハイニッケとの興味深い往復書簡が収録されている。 (後略) 訳者あとがき

著者プロフィール

ペール・エリクソン(エリクソン,ペール)

1952年、スウェーデンに生まれる。<br>先天性聾者で歯科関係の業務に従事、スウェーデンのエレブロー地区聾協会役員。「聾者の歴史」研究者で、出版社も経営。<br>著書に『聾の人びとの歴史:第1巻 基本資料集』(1993年)、『聾の人びとの歴史:第2巻 スウェーデンおよびスカンジナビア諸国』(1999年、どちらもスウェーデン語)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。

中野 善達(ナカノ ヨシタツ)

1934年、東京生まれ。<br>1959年東京教育大学大学院教育学研究科修士課程修了。広島大学教授、大阪教育大学教授をへて1989年より筑波大学教授。1998年筑波大学を定年退官。<br>現在、佐野短期大学特任教授。<br>主な著書に、『聴覚障害児の教育』(共編著、福村出版、1996年)、『国際連合と障害者問題』(エンパワメント研究所、1997年)、『聴覚障害の心理』(共編著、田研出版、1999年)、『講座 障害をもつ人の人権 第2巻』(共編著、有斐閣、1999年)ほか。<br>訳書にデル・オルト/マリネリ編『障害とリハビリテーション大事典』(監訳、湘南出版社、2000年)、ターキントン/サスマン著『聾・聴覚障害百科事典』(監訳、明石書店、2002年)。

上記内容は本書刊行時のものです。

松藤 みどり(マツフジ ミドリ)

1953年、北海道生まれ。<br>1993年、筑波大学大学院修士課程教育研究科修了。筑波大学付属聾学校教諭を経て、1994年より筑波技術短期大学助教授。<br>著書に、中野善達・斎藤佐和編『聴覚障害児の教育』(分担執筆、福村出版、1996年)、訳書に、デル・オルト/マリネリ編『障害とリハビリテーション大事典』(分担訳、湘南出版社、2000年)、ターキントン/サスマン著『聾・聴覚障害百科事典』(分担訳、明石書店、2002年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。
※送料は無料です。
FAXによるご注文は、原則としてお受けしておりません。
学校・官公庁などのでの御用でネットショッピングが利用できない場合、メールか電話にてご相談ください。

※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカードがご利用いただけます。


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