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株式会社 ドバイ 斎藤 憲二(著/文) - 柏艪舎
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株式会社 ドバイ (カブシキガイシャ ドバイ) メディアが伝えない商業国家の真実 (メディアガツタエナイショウギョウコッカノシンジツ)

社会一般
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発行:柏艪舎
四六判
236ページ
並製
定価 1,429円+税
ISBN
978-4-434-14867-5   COPY
ISBN 13
9784434148675   COPY
ISBN 10h
4-434-14867-2   COPY
ISBN 10
4434148672   COPY
出版者記号
434   COPY
Cコード
C0033  
0:一般 0:単行本 33:経済・財政・統計
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2010年9月
書店発売日
登録日
2010年8月24日
最終更新日
2010年10月6日
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紹介

「ドバイはヤバイ」???
今後のビジネスチャンスは中東にあり。
日本のビジネスマン必読の一冊!
日本の国際化、将来を考えるうえで、中東アフリカ地域、イスラム諸国という新市場への玄関口ドバイを知ることは欠かせない。
リーマン・ショックをドバイで体験した著者が、いまだ知られぬドバイのありのままの姿を伝える。

目次

目次

はじめに

ドバイの魅力
  ドバイ・クリーク/ドバイのイメージ/多国籍国家という側面/外国人に寛容なドバイ/外国人への気遣い/アイデンティティの維持/危機後の治安状況/治安維持の秘訣/各国富裕層の避難場所
  <ちょっと一息①:女性身代金誘拐事件!>

ドバイの略史
  近代ドバイの発祥/ドバイ発展のきっかけ/ラーシド首長/突然だった独立/海上輸送のハブに向けて/空のハブの発展/日本との不幸な出会い/ムハンマド首長の登場/ドバイが目指した将来像
  <ちょっと一息②:今に生きるダウ船>

国際金融危機の直撃
  危機直後の楽観ムード/表面化する深刻さ/ドバイ・ショック/アブダビとの綱引き/連邦制の不思議/首長の絶対性/経済の浮き沈みとともに/不動産価格の下落/出稼ぎ外国人の帰国/国内移民/実需の感覚のズレ
  <ちょっと一息③:砂漠で温泉はいかが?>

ドバイ経済のしたたかさ
  危機に対するドバイ人の受け止め方/ハブ機能の健全性/ドバイへの来訪者数/元気な観光分野/あるべき姿に向かいつつあるホテル環境/危機の中の労働環境/危機後のドバイの状況をどう見るか/不動産バブル崩壊の教訓/将来の不安要素/報道姿勢の違い
  <ちょっと一息④:探しても見つからないドバイ料理店>

ドバイからみえる日本
  日本人コミュニティの規模/UAE人の親日的な感情/中東での日本企業の活躍/不慣れなヨーロッパ式のビジネス慣習/文字より言葉重視という世界/日本人の国際化について/ドバイ・ビジネスについての考え方/現地での購買力/中東ビジネスに対する抵抗感/日本政府が後押しする取り組み/食品の輸出拡大のために/オール・ジャパンとしての取り組み/政府補助事業の役割
  <ちょっと一息⑤:冬の集客マシン「グローバル・ビレッジ」>

 アジア勢の猛攻
  中国の進出/中国店舗の驚くべき実態/急速に進む中国への傾斜/韓国勢の動き/インド人の位置づけ/職種で偏る国籍/アジア人の状況/スピーディさに欠ける日本ビジネス/頼るべき相手が見えない
  <ちょっと一息⑥:ラマダーン中の食事は?>

 ドバイ・ビジネスを始める前に
  プラス面とマイナス面の比較/イギリス流に依存した国造り/危機の中でも元気な中東/ヨーロッパ一辺倒からの脱皮/言葉重視の文化/UAE人の感覚/イスラム色の濃いシャルジャ/先に箱ありき/国際見本市の活用/日本人ビジネス感覚の思い違い/UAEで製造業?/求められるがむしゃらさ/日本デザインへの人気/脱石油ビジネスの可能性
  <ちょっと一息⑦:灼熱の中で楽しむゴルフ>

日本ならではの商売
  砂漠で農業/イスラム国家で酒・豚肉ビジネス/ドバイの外国人の内訳/外国人旅行者を狙ったビジネス/出稼ぎ外国人を介した商機の拡大/ドバイ土産の商品開発/健康という政策課題/ハラールについての基礎知識/若者向けのビジネス/そのほかのアイデア/待ち望まれるジャパン・アンテナ・ショップ
  <ちょっと一息⑧:ラクダの豆知識>

 オイル・マネーの環流
  富裕層のアラブ人を呼び込め/イスラム教徒の観光客を受け入れるために/日本情報の発信/公務員の訪日研修/もっと大きな発想を
  <ちょっと一息⑨:酒を飲むための苦労>

 おわりに

 参考文献

前書きなど

はじめに

 はじめに断っておくが、わたしはイスラムの専門でもなければ中東の専門でもない。外務省員でありながら、お恥ずかしい話、2004年に前任地のアフガニスタンに日本から赴任する際、ドバイ経由と聞いて、しばらくの間は「ドーハの悲劇」(注1)の舞台だったドーハと勘違いしていたくらいだ。
こんなわたしでも、2006年にドバイの日本総領事館に転勤して以来、はや4年が経とうとしており、まわりの様子が徐々に見えるようになってきた。
日本では、ドバイについて、まずセレブな高級リゾート地というイメージが先行した。それに、ほかの国では考えられないユニークな形をした高層ビルや奇想天外な埋め立てプロジェクト。これらが次々と完成し、また続々と夢のような新計画が発表されることで、何でも可能にしてしまう「アラブの魔法のランプ」のイメージがこれに加わった。
こうして膨らんだファンタジーな新世界への期待感は、リーマン・ショック(注2)による国際金融危機の大津波を受け、一瞬にして水泡(すいほう)と帰した。20年前に日本が経験したバブル経済崩壊の再来、所詮(しょせん)は成り上がり国家のつかの間の夢。現在、日本人がドバイに対して抱く印象はこんなところではないだろうか。
わたしがドバイに着任したのは2006年10月。まさにバブル経済の絶頂に向けて邁進している最中にあたる。中東アフリカ地域で最大規模の日本人社会を有していることもあり、自然に民間の方々との付き合いも増えることとなった。
最近では、海外にある日本大使館や総領事館が、その業務の一環として日本企業の進出を側面的に支援するようになっている。それでもわたし自身、25年間に及ぶ外務省生活を通じて、ドバイという場所ほど日本ビジネスとの関わりを深くもったことはなかった。同時にまた、世界における日本ビジネスの特徴や位置づけもよく見えるようになった。
ドバイに生活してみると、全てがビジネス感覚で動いていることに気づく。まだ景気のよかった頃、「ドバイ株式会社」と揶揄(やゆ)され、政府高官自身もあっさりとそれを認めるくらい、ビジネスを中心として街造りを行い発展してきた。観光も開発プロジェクトも不動産投資も、あくまでビジネスという大樹を育てるための枝葉に過ぎない。
 どこまで突き進むのかと思われた勢いは、世界的な金融危機の直撃を受けたことで、一息ついた。確かに不動産分野をはじめとする一部のセクターは大きな痛手を受け、これが回復するにはまだ相当の時間がかかるだろう。
それでも、世界的に経済活動が最も低迷した2009年初頭でさえも、ドバイの建設現場の工事は続いていた。ヒトの流れは相変わらず多かった。治安が悪くなったわけでもない。マスコミが期待するような「死の街」と化したわけでは決してない。
ドバイの経済体質は日本人には意外と思えるほど多様化されている。世界経済の回復基調とともにスタート・ダッシュを見せるべく、いろいろな仕掛けが動いている。そして多くの国々が、ドバイの重要性を理解して、民間だけでなく政府も一丸となって、中長期的な投資を行うべく果敢にアプローチをしている。そんな中で、日本の存在感は極めて低い。
 「チャンスがあるのになぜ?」というのが、わたしの素朴な疑問であり、この本を書くきっかけともなっている。
 ドバイはつくづくユニークな街である。中東アフリカ地域、ひいては世界中のイスラム諸国という新市場へのビジネスの玄関口であるとともに、日本の国際化についてもヒントがたくさん潜んでいる。不動産バブルの崩壊という「失敗国家」として忘れ去るには、あまりにもったいない存在なのだ。
 国際金融危機の前後をドバイで体験した身として、ありのまま見て感じたドバイを、日本のより多くの人たち、特にビジネス関係の皆さんにお伝えしたいと考えてきた。
 本著では、ドバイを理解するための最低限の知識をおさらいした後、国際金融危機の影響が実際にどうなのかを振り返り、日本ビジネスが生かせる方法について自身のアイデアを紹介することとした。
法律・規制の詳細や開業するためのノウ・ハウ論には触れていない。旅行ガイドで紹介されている観光的な要素も努めて除外した。底値となった不動産への投資指南もしていない。繰り返すが、ドバイは本来的にビジネス志向の街なのだ。
世界のどこでも同じだと思うが、ドバイでも実際に商売を始めようとしたら、いくつもハードルを超える覚悟と勇気が必要だ。でも閉塞感ばかりが漂う今の日本ビジネスにとって、これらを差し引いても十分なお釣りが来るだけの可能性を予期させるものが、ドバイにはある。新天地でのビジネスに少しでも関心ある方々にとって、何らかの参考になればありがたい。
 ドバイをはじめとする多くの中東地域に共通する問題として、信頼できるデータが少ないという事情がある。調査会社や新聞のデータもそのまま信じるのは危険といえる。本文では、なるべくデータの出典を明確にするとともに、わたし自身の実際の見聞に基づく「現場感覚」も盛り込み、実像が浮かびやすいように配慮した。データはあくまで参考程度に考えていただきたい。
 「らしくない」と言われるが、これでも現職の外務公務員であり、公務員の義務として気を使わざるを得ない部分があるのは事実だ。それでも、本著では可能な限り率直に個人の意見を紹介したつもりだ。文責は全てわたし自身にあり、決して外務省や日本政府の公式見解ではないという点だけは予めご了承願いたい。







おわりに

 アラブ地域には、「ハーリフ・トアラフ」ということわざがある。人であれ組織であれ、ほかの人と違う言動をとれば、ユニークな存在として、時には実力以上の評価を得ることもある、という意味のようだ。
イスラム帝国のアッバース朝(750年~1258年)以後、地域全体としての存在感を失っていたアラブ社会にとって、ドバイは久々に世界にアラブ人の底力を見せつける模範例となった。
人口わずか180万人弱、埼玉県の面積しかなく、石油資源にも恵まれなかったドバイが、世界中の人たちにその名を知られるようになったのは、まさにユニークな発想を徹底的に追求し実践してきたからにほかならない。前向きな考え方が「正のスパイラル」を呼び起こした典型例といえるかもしれない。
他方、近年の日本は全体的に萎縮傾向にある。新しいことを始めようとすると、それを盛り上げようとする気運が見られない。逆に、ちょっとしたつまずきや失敗を徹底的に叩いてしまう。緊縮財政の下、政府も短期的な効率性にばかり目が向きがちで、「国として中長期的にどのような投資をすべきか」という民間セクターとの棲み分けが十分果たせていない。
海外から見ていると、日本はまさに「負のスパイラル」に巻き込まれている。これでは産業界も、リスクをとってでも新しいことにチャレンジしようという意欲が失せるはずだ。ドバイに生活していると、「チャンスは待つのではなく、自ら捉(つか)まえにいくもの」という商売の原則をつくづく感じさせられる。
 ドバイでのビジネスは、中東アフリカという「新市場への挑戦」であるとともに、近い将来に日本が避けて通ることのできないイスラム社会という「異文化への挑戦」への第一歩でもある。多くの人たちが、こういった前向きな姿勢を呼び起こすことこそ、日本全体を活性化する唯一のきっかけではないかと思う。
 本文で紹介してきたアイデアは、わたしの経験と直感に基づくもので、本気で商売化しようとしたら慎重に考えるべき点はたくさんあろう。わたしが訴えたかったことは、海外でビジネスを行うには、常識として頭にこびりついている考え方を一度リセットし、ある程度のリスクを覚悟しながら、それを乗り越えて利益を得る喜びを感じる、というビジネス本来の原点である。
「株式会社ドバイ」は、今後ともグローバル企業として、世界にその名を定着させていくだろう。ドバイの「魔法のランプ」の灯は、バブル崩壊とともに消えたのではなく、これからが本当の見せ場なのかもしれない。
ドバイの自宅にて

著者プロフィール

斎藤 憲二  (サイトウ ケンジ)  (著/文

1961年生まれ。群馬県出身。1986年外務省入省。外務本省、在マレイシア日本大使館、在アトランタ日本総領事館、在アフガニスタン日本大使館などを経て、2006年10月からドバイ日本総領事館主席領事。

上記内容は本書刊行時のものです。