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かくして『源氏物語』が誕生する
物語が流動する現場にどう立ち会うか
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年3月
- 書店発売日
- 2014年3月17日
- 登録日
- 2014年2月12日
- 最終更新日
- 2014年3月13日
紹介
『源氏物語』。それは、日本の文学が遭遇した、画期的かつ最大級の文学史上の一コマであった。『源氏物語』という驚嘆すべき新しい創造の試みは、いかになされたのか。本書は、寓意や准拠といった観点を軸に、史書、説話、漢詩文、仏典など、様々な外部テクストを本文と対比して、作品世界に分け入り、中世的視界から『源氏物語』の内部世界を照射し、その内実を明らかにする。刺激に満ち溢れる『源氏物語』論。
【テクストに翻弄された中世以前の読者は、本文とのインタラクティブを、すべて作者の手の中に帰着して、解消する。伝承に依拠して出発し、匿名の語り手を装う物語において、本質的な意味で、ここにはじめて〈作者〉が誕生する。読者もまた、生まれ変わらずにはいられない。まるで経典に対するように、本文に注釈を施したり、作者は何が言いたいのかと、問いかけたりするのである。挙げ句の果てに、ストーリーテラーの罪を背負って苦しみ、源氏供養を求める亡者「紫式部」までも仮構する…。作者、語り手、読者。今日ではあたりまえの構造認定が、こうして自然に達成される。】…はじめにより
目次
はじめに 源氏物語論へのいざない
Ⅰ
第一章 玄宗・楊貴妃・安禄山と桐壺帝・藤壺・光源氏の寓意
はじめに
1 信西「長恨歌絵」の寓意
2 帝王の寵愛―安禄山と信頼と
3 安禄山・楊貴妃密通説の発生と白居易『胡旋女』
4 『長恨歌』の前提と「新楽府」的楊貴妃―『源氏物語』へ
5 二人の楊貴妃と『源氏物語』創造
6 安禄山・楊貴妃と光源氏・藤壺の対応
おわりに―まとめと展望
第二章 武恵妃と桐壺更衣、楊貴妃と藤壺―桐壺巻の准拠と構想
はじめに
1 『源氏物語』と白河院・後鳥羽院
2 『源氏物語』に依拠して描かれる史実と『長恨歌』の関係
3 桐壺巻准拠の重層性
4 藤壺の准拠としての楊貴妃―父と子と
5 〈貴妃〉と〈妃〉と―楊貴妃と藤壺
6 准拠の仕組みと構想―おわりにかえて
第三章 〈北山のなにがし寺〉再読―若紫巻をめぐって
1 問題の所在―北山への旅
2 研究史概観
3 角田文衛の大雲寺説
4 大北山・西園寺あたりを指すとする説その1
5 大北山・西園寺あたりを指すとする説その2―公季説話の周辺
6 通底するもの―拭いがたい鞍馬寺の像
7 新出『鞍馬縁起』と鞍馬寺像の再構築
8 鞍馬寺の『縁起』再読と「北山」
9 いくつかの問題と角田説再考―おわりにかえて
第四章 胡旋女の寓意―紅葉賀の青海波
1 問題の所在―楊貴妃・安禄山密通説と『源氏物語』
2 『胡旋女』をめぐって
3 『源氏物語』の音楽と交情
4 紅葉賀の青海波演舞とその底意
5 青海波のコンテクスト
6 物語の外側へ―史実化する『源氏物語』青海波
第五章 胡旋舞の表象―光源氏と清盛と
1 『政範集』と「新楽府」そして『源氏物語』
2 『胡旋女』と「廻雪」・「雪をめぐらす」の周辺
3 「廻雪」の典拠
4 『胡旋女』の寓意と青海波
5 『胡旋女』から彷彿する青海波の形象
6 清盛と光源氏の重なりと両義性
Ⅱ
第六章 〈非在〉する仏伝―光源氏物語の構造
1 桐壺巻の予言
2 予言の「三国」的仕組み―高麗人をめぐって
3 『源氏物語』の内なる仏伝
4 仏伝の予言と文脈
5 予言に続く仏伝の要素と『源氏物語』の類似点
6 釈迦の多妻(polygamy)伝承と三時殿
7 四方四季と六条院
8 仏陀の反転としての光源氏
9 光源氏物語とその後―不在の人
Ⅲ
第七章 宇治八の宮再読―敦実親王准拠説とその意義
1 宇治八の宮という呼称
2 『源氏物語』本文と「八の宮」呼称出現箇所の問題―敦実親王准拠説へ
3 「八の宮」の准拠説について
4 八の宮と音楽および宇治
5 八の宮をめぐる出家と栄達
6 敦実親王と皇位継承への思い
7 『源氏物語』という創作へ
第八章 源信の母、姉、妹―〈横川のなにがし僧都〉をめぐって
1 なにがし僧都の登場と恵心僧都源信
2 二つの准拠―源信の母と妹
3 安養尼説話と『源氏物語』
4 源信の姉と妹―安養尼蘇生説話の起源
5 源信伝の仕組みと安養尼という収斂
6 初期源信伝の推移と母の役割
7 僧伝と母―『源氏物語』の結構
あとがき―「圏外の源氏物語論」始末記
初出一覧
凡例にかえて
上記内容は本書刊行時のものです。