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飯島本 源氏物語 第四巻
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2009年3月
- 書店発売日
- 2009年4月27日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2016年7月6日
紹介
室町期に書写されたと思われ、別本を多く含む、54帖揃いの貴重な原本を精密に撮影し、収録。冷泉為和周辺の源氏本文の伝流の実態がうかがえる。
目次
第四巻収録
薄雲、朝顔、少女、玉鬘、初音、胡蝶、蛍
解題(池田和臣)
前書きなど
刊行にあたって
●池田和臣
『源氏物語大成』巻七研究資料篇、「現存重要諸本の解説」の項に、「飯島春敬氏蔵空蝉巻」が取りあげられている。そこにいわく、「一帖。竪六寸四分五厘横五寸。胡蝶装。筆者は明らかでないが、鎌倉末期の書写であらう。別本系統の本文を有する」と。また、校異篇の凡例の「校異ニ採択シタ諸本」、その「別本」の項に、「飯 筆者未詳 飯島春敬氏蔵」とある。事実、校異篇の空蝉・横笛・幻・匂宮・紅梅の巻々に、別本として飯島本の校異が挙げられている。さらに、須磨巻には青表紙本の一本として校異が挙げられ、初音巻には河内本として校異が挙げられている。
飯島本について知り得る情報は右のごとくであり、私は飯島本が五十四帖の揃い本とは、ゆめ思うことはなかった。やがて、縁あって二〇〇五年より、書芸文化院主催の平安書道研究会の講師を務めることになった。書芸文化院は「春敬記念書道文庫」の母体である。折々、飯島春美理事長と雑談を交わす機会に恵まれた。源氏物語千年紀のことが巷の話題になりはじめた頃、『源氏物語大成』所載の飯島本に話しが及んだ。すると、飯島家所蔵の源氏物語は一種類のみで、それは五十四帖揃っている、とのこと。また、東京国立博物館に寄託したままになっていて、全体を詳しく調査したことはない、とのこと。私は驚いた。
飯島本は同一の装丁にかかる四半本の五十四帖揃いであった。明石巻の奥に「為和」と署名があり、冷泉為和(一四八六~一五四九)が関与しているらしい。『源氏物語大成』には「鎌倉末期」とあったが、室町期の写本であった。しかし、室町期とはいえ、冷泉家周辺の源氏物語本文の伝流の実体がうかがえる、貴重な写本である。また、『源氏物語大成』校異篇から見る限りでも、少なからぬ別本の巻を持つ重要な写本と推察される。是非とも全体像を、あまねく源氏物語の研究者や愛好家に公開すべきであろうと思った。そして、飯島春美理事長は私のその思いを快く受け入れてくださった。
そこで、源氏物語千年紀に間に合うように、調査し公開しようということになった。二〇〇七年春から本文の調査をはじめたが、源氏物語千年紀の二〇〇八年中に、全体の本文の校異を精査し分析をくわえ刊行するには、あまりに時間が足りない。そこで、各帖の巻頭数丁の本文を分析し、本文系統のおよその見当をつけるにとどめ、あとは写真複製のかたちで広く研究者に公開することを目指した。こうして成ったのが、本書である。
希有な写本であることを見抜いた飯島春敬氏の慧眼と、飯島春美書芸文化院理事長の寛大な精神なくして、本書は成らなかった。あらためて謝意を表したい。
上記内容は本書刊行時のものです。