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乱世を語りつぐ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年5月30日
- 書店発売日
- 2020年6月11日
- 登録日
- 2020年5月7日
- 最終更新日
- 2020年6月9日
紹介
軍記物語が華やかに開花したのは、室町文化の中であった。
文学のみならず、歴史・芸術・言語等の周辺分野からのアプローチも交じえた、最新の研究成果を提示。この20年のうちに大きく変化してきた軍記物語研究の現在と、今後を見据えた文学本来の課題を照らしだす。
目次
まえがき●山上登志美
◆Ⅰ 室町という時代
室町という時代●坂井孝一
はじめに/足利義満の時代―「室町殿」から「北山殿」へ―/足利義持の時代―「室町殿」の安定期―/足利義教の時代―「万人恐怖」から将軍弑逆へ―/足利義政の時代―将軍親裁から大乱勃発へ―/むすびにかえて―室町という時代の文化―
◆Ⅱ 武家政権の陰に 曽我物語・義経記
『曽我物語』の女性たち―〝女語り〟の物語は女性をいかに語ったか―●小井土守敏
はじめに/『曽我物語』に登場する女性/兄弟を弔う女性たち/恩讐を超えて/仮名本の女性たち/称讃される女性たち/おわりに
曽我物語における挿入説話の問題●鈴木元
注釈としての説話/慈恩寺縁起の周辺/『宝物集』をめぐる問題
『義経記』の構想力と遊戯性―弁慶像を中心に―●藪本勝治
『義経記』の二面性/作品としての構想力/伝承の改作と遊戯性/『義経記』の開放性
『義経記』の時代―『謡曲拾葉抄』『異本義経記』からみる『義経記』享受―●西村知子
はじめに/『謡曲拾葉抄』について/『義経記』の引用/『異本義経記』の引用/おわりに
判官物の古状型往来―古状で綴られる義経・弁慶の生涯―●本井牧子
『腰越状』『義経含状』『弁慶状』/『弁慶状』にみられる伝承/『弁慶状』の位相
◆Ⅲ つづく戦乱 明徳記・嘉吉記・応仁記・鎌倉大草紙・後南朝関係軍記
『明徳記』における「弓矢」●大坪亮介
はじめに/『明徳記』の武士と「弓矢」/延慶本『平家物語』と『太平記』の「弓矢」/『明徳記』における「不義ノ弓矢」「弓矢ノ不義」/氏清・満幸を「朝敵」と認めないこと/おわりに
嘉吉の乱関係軍記にみる叙述のあり方―謀叛の動機と自家の功績に対する認識の観点から―●瀬戸祐規
はじめに/謀叛の動機/自家の功績/むすび
和歌を詠む赤松教康●藏中さやか
嘉吉の乱首謀者の祖/和歌を詠む武人として/嘉吉の乱関係軍記と和歌/教康の終焉場面―実録的な作品群より―/教康の終焉場面―『嘉吉物語』より―/おわりに
『応仁記』一巻本・二巻本の成立―『野馬台詩』の呪縛からの解放―●山上登志美
はじめに/一巻本と二巻本の先出をめぐって/『野馬台詩』をめぐって/未完『応仁記』/おわりに
『鎌倉大草紙』とその周辺―「作品」として考えるために―●田口寛
はじめに/『大草紙』研究の現状/『大草紙』記事の周辺―同話・関係話資料など―/『大草紙』における上杉憲実/おわりに
「後南朝」の軍記物語●武田昌憲
はじめに 後南朝とは―後南朝の初見―/後南朝の歴史/後南朝の軍記とは/後南朝軍記の行方
◆Ⅳ 戦国から偃武へ 戦国軍記・家伝・幸若舞曲・御伽草子
「戦国軍記」の範囲―細川政元殺害の記録を例に―●笹川祥生
「後期軍記」の概要/細川政元殺害事件の記録/戦国軍記の範囲
家伝史料『結城軍記』諸本の相関関係―『小山記』『長沼日記』と対照して―●髙橋恵美子
はじめに/『結城軍記』における結城合戦の描写/『小山記』について/所収記事の比較からみる『結城軍記』諸本の関係/おわりに
十七世紀初頭における幸若舞曲享受の一様相―梵舜の書写活動をめぐって―●小林健二
はじめに/梵舜等が書写した幸若舞曲/梵舜本幸若舞曲の各写本の性格/梵舜本「含状」の場合/『舜旧記』に見える梵舜と幸若舞曲/むすび―梵舜の幸若舞曲書写から見えてくること―
物語草子の闘諍・合戦譚●大島由紀夫
はじめに―軍記物語とお伽草子―/まつろわぬ者―悪党・山賊・盗賊―との合戦/お家騒動―「家」をめぐる闘諍―/寺社の被災―聖域への侵犯―/おわりに―物語が紡ぐ「乱世の記憶」―
* * *
軍記物語年表(二)●加美甲多
あとがき●松尾葦江
執筆者紹介
前書きなど
軍記物語が華やかに開花したのは室町文化の中だと言っていい。覚一本『平家物語』や『太平記』が成立したのは室町期であり、平家語りが京都で隆盛を誇ったのも室町期だった。そういう視点から文学史を見渡す軍記物語研究をめざすなら、一旦、室町時代という枠組みを設けて、前代からの変容とその完成とを考えてみることも無益ではないだろう。(「あとがき」より)
上記内容は本書刊行時のものです。