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それでも僕たちは「濃厚接触」を続ける! 広瀬浩二郎(著/文) - 小さ子社
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それでも僕たちは「濃厚接触」を続ける! (ソレデモボクタチハノウコウセッショクヲツヅケル) 世界の感触を取り戻すために (セカイノカンショクヲトリモドスタメニ)

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発行:小さ子社
B6判
162ページ
並製
定価 1,500円+税
ISBN
978-4-909782-06-9   COPY
ISBN 13
9784909782069   COPY
ISBN 10h
4-909782-06-0   COPY
ISBN 10
4909782060   COPY
出版者記号
909782   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年10月20日
書店発売日
登録日
2019年12月16日
最終更新日
2023年2月28日
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書評掲載情報

2020-12-13 産經新聞  朝刊
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紹介

世界よ、さわることを忘れるな――
新型コロナウイルスの出現は、いやおうなく、世界に「さわる」ことの意味を問いかける。
このまま人々は「さわる」ことを忘れるのか、それとも新たな「さわるマナー」を創出できるのか。

「濃厚接触」による「さわる展示」・「ユニバーサル・ミュージアム」の伝道師として全国・海外を訪ね歩いてきた全盲の触文化研究者が、コロナ時代の「濃厚接触」の意義を問い直す。
2020年5月~7月に小さ子社のweb上で連載された内容に大幅加筆。
さらに、2020年に国立民族学博物館の企画展で、さわって楽しめるように展示される予定だった民博所蔵の世界の資料60点を、紙上展示「世界の感触」としてカラー掲載。

目次

はじめに―さわる文化と新型肺炎

第一部 写真集「 さわる世界旅行」
 1 人生にさわる六つの手
 2 紙上展示「 世界の感触」
〔コラム1〕バードカービング-世界をさわるツールとして

第二部 「ユニバーサル・ミュージアム」への道
 第1章 海外出張は体外出張なり
〔コラム2 〕ボイス・コンタクト-感じて動く読書法
 第2章「生き方=行き方」の探究
〔コラム3〕写真を移す人
 第3章「禍を転じて福と為す」 新たな博物館構想

おわりに―ポストコロナの特別展に向けて

前書きなど

はじめに―さわる文化と新型肺炎

2020 年、新型肺炎の流行は人類にとって何を意味するのだろうか。オリンピック・パラリンピックは、人間の「能力」(できること)を追求する成果発表の場といえる。世間がオリパラの祝祭に沸き立つ中、その軽薄さをあざ笑うかのように新型コロナウイルスが猛威を振るっている。オリパラは人間の「能力」を可視化する。とくにパラリンピックは、「できない」はずの障害者たちが、じつは健常者以上に「できる」人であることを明示する点で有意義だろう。オリパラが人間の「能力」を再考する絶好の機会になるのは間違いない。
一方、世の中には可視化できないものがある。コロナウイルスは、「目に見えない世界」からのメッセージを伝える存在なのかもしれない。新型肺炎の流行は、「可視化=進歩」と信じてきた人類の傲慢さに鉄槌を下したともいえよう。誤解を恐れずに言うなら、オリパラはすべての人が「できる」ようになる、もしくは「できる」ようにする創意工夫の産物である。そのオリパラの開催予定年に、人間の無力さ(できないこと)を明らかにし、進歩とは何なのかを問いかけているのが新型肺炎なのではなかろうか。
近代化は、「距離」の概念に変化をもたらした。近年の情報通信技術の進展により、人間のコミュニケーションのあり方は日々変容している。人々は物理的な「距離」を意識することなく、インターネットを介して、さまざまな情報を獲得できる。飛行機や新幹線による高速移動の日常化は、「距離」を実感する身体感覚を奪ったともいえる。「距離」を感じない時代だからこそ、逆に人と人、人と物の間が離れていく。
ミュージアムは、近代文明のシンボルである。古今東西、ミュージアムでは来館者と展示物の間に「距離」があるのが大前提とされてきた。「可視化=進歩」と信じて近代化の道を邁進する人類にとって、五感の中で、視覚は最重要の感覚と位置付けられている。「より多く、より速く」情報を入手・伝達できる点において、視覚は他の感覚よりも優れているのは確かだろう。「距離」を感じない時代だからこそ、ミュージアムの来館者は物に触れず、遠くから「見る」だけの鑑賞が当たり前だと考えてきた。近代とはさわらない、さわれない、さわらせない時代なのである。
新型肺炎の流行に伴い、「濃厚接触」という言葉を頻繁に耳にするようになった。ウイルスの感染を防ぐために、濃厚接触を避ける。単純にとらえるなら、一連のコロナ騒ぎは、さわる文化の危機ということができる。しかし、そもそも接触とは何だろうか。かつて人間は「距離」を縮めるために、身体を駆使して対象物に肉薄した。中世・近世に各地を遍歴した琵琶法師の芸能を想起するまでもなく、テレビやラジオがない時代、人々の生活は濃厚接触で成り立っていたともいえる。濃厚接触で人・物に触れる際、そこには暗黙のマナー、触れ合いの作法があった。近代化の「可視化=進歩」の過程で、人類は濃厚接触のマナーを忘却してしまった。
物を媒介として濃厚接触を実践できるのが、本書で取り上げる「ユニバーサル・ミュージアム」(誰もが楽しめる博物館)である。展示物に直接触れるには、身体を動かし、手を伸ばして「距離」を縮めなければならない。展示物の背後には、それを創り、使い、伝えてきた人々の文化、目に見えない物語がある。なぜさわるのか、どうさわるのか。新型肺炎の流行は、現代社会が濃厚接触のマナーを取り戻す契機となるに違いない。
感染予防の本義は、万人が消毒に心がけ、ウイルスが増殖・拡大しないように注意を払うことである。消毒とは自分のためのみではなく、周囲に対する配慮、優しさを示すものだろう。新型肺炎の流行後に開かれるオリパラは、どんなものになるのか。2021 年は究極の濃厚接触、新たな触れ合いのマナーが創出される記念の年となることを期待したい。さあ、「距離」を感じない時代だからこそ、一歩踏み出してみよう。伸ばした手の先に、目に見えない豊かな世界が広がっていることを信じて!

著者プロフィール

広瀬浩二郎  (ヒロセ コウジロウ)  (著/文

自称「座頭市流フィールドワーカー」、または「琵琶を持たない琵琶法師」。
1967年、東京都生まれ。13歳の時に失明。筑波大学附属盲学校から京都大学に進学。
2000年、同大学院にて文学博士号取得。専門は日本宗教史、触文化論。
01年より国立民族学博物館に勤務。現在はグローバル現象研究部・准教授。
「ユニバーサル・ミュージアム」(誰もが楽しめる博物館)の実践的研究に取り組み、“ 触”をテーマとする各種イベントを全国で企画・実施している。
『目に見えない世界を歩く』(平凡社新書)、『触常者として生きる』(伏流社)など、著書多数。

上記内容は本書刊行時のものです。