書店員向け情報 HELP
出版者情報
書店注文情報
在庫ステータス
取引情報
いかにして抹殺の〈思想〉は引き寄せられたか
相模原殺傷事件と戦争・優生思想・精神医学
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年4月25日
- 書店発売日
- 2019年5月12日
- 登録日
- 2019年2月13日
- 最終更新日
- 2019年5月10日
書評掲載情報
2020-01-10 |
精神医療
97 評者: 早苗麻子 |
MORE | |
LESS |
紹介
妄信、世迷言……。相模原殺傷事件の被告、植松聖の主張をそう切り捨ててしまうのは思考停止である―――。
精神科医として不登校、ひきこもり、発達障害、人格障害などについて、社会の構造の変化を視野にいれながら分析し、精力的に発言してきた著者が、「大麻解禁」、「世界平和」、「障害者排除」に集約される植松の〈思想〉に正面から向き合い、批判を展開。
なぜ植松はその〈思想〉を引き寄せたのかを、第一次世界大戦から第二次世界大戦期の社会思想、優生思想、精神医学の歴史をたどりながら解明。事件の悲劇の本質に迫る。
目次
目次
第一部 相模原殺傷事件の〈思想〉
序 章 相模原事件が問いかけるもの
事件の流れと〈思想〉/三つの論点/措置入院から退院までの経緯/措置入院制度強化をめざす法改正の動き/長期収容施設か地域移行か /植松の示す人間の定義と「秩序」/植松は戦争に反対している/大麻支持、反タバコ、反精神薬
第一章 〈思想〉の見取り図――大麻・戦争・障害者殺害
植松の〈思想〉とヒトラーの思想 /大麻解禁の意図/スピリチュアルとエコロジー/ファシズムと戦争/トランプは〈リベラル〉の政治的交代者/反ユダヤ主義と障害者殺しは別物/家族に対する「恩恵」としての安楽死/「安倍晋三様のお耳に」とは何か
第二章 いかにして植松聖は〈思想〉を引き寄せたか
植松聖の個人精神病理/行動とイデオロギーを引き寄せるモメント/軍隊と徴兵制を引き寄せるモメント/美としての軍隊/国民精神形成の戦争と現実の戦争との乖離/植松が引き寄せたイデオロギー/植松聖にとっての人種問題
第二部 優生思想と戦争
第三章 優生思想の精神医学
植松の〈思想〉は優生思想か?/イギリスとアメリカの優生思想/北欧の優生思想 /英米の優生思想とドイツの優生思想の共通点/優生思想の日本への輸入/中絶禁止法として機能した国民優生法/優生保護法への道/優生保護法の成立と改正/一九七〇年代の優生保護法改正反対闘争/岐阜大学胎児解剖実験/優生保護法に対する日本精神神経学会の意見/母体保護法へ/新型出生前診断に対する危惧
第四章 戦争の精神医学
第一次世界大戦とフロイト/戦争を遠ざける視点を堅持していたフロイト/第二次世界大戦とドイツ精神医学/ナチスの優生思想と反タバコキャンペーン/ベトナム戦争とアメリカ精神医学 /精神医学は戦争から手を引くべきときに来ている
第五章 国家意思・戦争・精神医学――主に日本の場合
第二次世界大戦で日本の軍事精神医学が果たした役割/国家意思を体現した精神科医/若き神谷美恵子/現在の日本の民衆は戦争を求める必然性を持っていない/日本の殺人心理学/自衛隊と自殺/反-軍事精神医学
第三部 イデオロギーと精神医学
第六章 相模原殺傷事件の倫理学――社会・イデオロギー・精神病理学
平常と異常の境界は明確か/連合赤軍事件/ナチスによるT4作戦・人体実験・ユダヤ人絶滅収容所/ノルウェー連続テロ事件/事例の補足――シュレーバー/ナチズムが定着するまでの機序/イデオロギーと結合しても行動化しない場合/まとめと補足――トランプ米大統領をめぐる言説
終章 戦争と福祉国家の逆説――相模原殺傷事件の影
暴かれたアスペルガーとナチスとの関係/情性欠乏というレッテル/役に立つ子どもと立たない子どもはいかに分類されたか/戦争と福祉国家の逆説/再び相模原殺傷事件の〈思想〉について/優生思想と戦争/イデオロギーと行動と精神医学
上記内容は本書刊行時のものです。