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木地屋と鍛冶屋
熊野百六十年の人模様
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年2月24日
- 書店発売日
- 2022年2月24日
- 登録日
- 2022年2月7日
- 最終更新日
- 2022年2月22日
紹介
森を渡り歩いた漂泊民と炎を操る孤高の職人
木地屋から身を起こし長者となった小椋長兵衛、疫病退散の題目塔で名を残す木地亀蔵、その製品の評判が海外にまで轟いた新宮鍛冶の大川増蔵。
幕末から近代にかけて、熊野の地で活躍した三人をつなぐ細い糸をたどり、その末裔たちの現在までを追った人間ドラマ。
目次
まえがき
第一話 椎茸長兵衛──祖神の縁起を伝え持つ
第二話 金借り道──庄屋まで一札入れる
第三話 新たな発見──先祖への想いが実る
第四話 大義院──縁ある人をひとまとめに
第五話 賀田村──買った山林で潤う
第六話 木地亀蔵──長兵衛とつながる糸は
第七話 題目塔──疫病退散の願い込め
第八話 新宮鍛冶──入鹿、三輪崎鍛冶が合流
第九話 大川増蔵──新宮の川原町で開業
第十話 キリスト者──尾鷲で接し、新宮で洗礼
第十一話 熊野川町畝畑──出会いの縁の不思議
あとがき
前書きなど
木地屋(木地師)は山中に暮らし、トチ・ブナ・ケヤキ・ミズメといった木を刳り抜いて椀や盆、杓子などを作る職人だ。「木の国」熊野に近世たくさんいたが、今はもう山中にその姿を見ることはできない。一方、鍛冶屋は火と水、風を用いて鉄を鍛え、さまざまな生活、仕事の道具を作る職人である。ごくわずかだが、その伝統を守る人たちが各地にいる。
私は木地屋の痕跡を追って地元紙『熊野新聞』で二〇一九年九月から十六回連載し、それを本にした(『木地屋幻想』七月社、二〇二〇年)。その中で熊野市飛鳥町の奥地・池の宿に居を構え幕末に一財産築いた小椋長兵衛を取り上げ、彼から六代目にあたる小倉章睦さん(昭和二十年生まれ・愛知県津島市在住)から先祖への熱い想いを聞いた。
その小倉さんと親戚という、その名もずばり木地孝嘉さん(昭和十六年生まれ・愛知県あま市在住)は、明治時代に今の尾鷲市賀田町に「南無妙法蓮華経」のお題目を刻んだ題目塔を建てた木地亀蔵の末裔である。連載でそれを紹介した際、長兵衛と亀蔵のつながり、賀田という地区に興味を覚えたが、それ以上取材を深めなかった。
一方、新宮市で現在も鍛冶職を続けている大川治さん(昭和十一年生まれ)は旧知だが、その祖父大川増蔵の出身地が賀田で、大正時代に新宮に出て熊野川河口の河川敷で鍛冶屋を始めた、という事実を最近になって知った。
小椋長兵衛の名が文献(『晴雨日記』)に登場する幕末の文久二年(一八六二年)から百六十年。池の宿、賀田、新宮を結ぶ木地屋と鍛冶屋の人模様を描いてみたい。そんな気持ちで改めて皆さんに話を聞いて回った。
上記内容は本書刊行時のものです。