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沖縄の空手
その基本形の時代
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年4月14日
- 書店発売日
- 2021年4月15日
- 登録日
- 2021年3月26日
- 最終更新日
- 2021年4月13日
紹介
唐手? 空手? KARATE?
世界各地に広まり、オリンピックの種目に採用された空手は、なぜ沖縄固有の武術と言えるのか?
推定で語られることが多かった歴史を排し、確かな文献・伝承資料とその解釈に基づいて、空手の起源に迫る一書。
目次
まえがき
第一章 本書の目的
第二章 従来の諸研究
一 一般的な説明
二 中国伝来説
三 沖縄固有説
四 空手の固有性
コラム① 巻藁
第三章 固有語の名称
一 固有語と漢字表記
二 糸洲安恒の唐手
三 船越義珍の空手
四 若干の留意点
第四章 名称の民俗分類
一 民俗分類
二 唐手と沖縄手
三 首里手と那覇手
四 棒唐手と櫂手
五 手と空手
六 民俗分類の性格
第五章 民俗分類と文献
一 先行研究
二 空手
三 唐手
四 空手と唐手
コラム② 京阿波根實基の逃走経路と塚
第六章 民俗分類外の諸用語
一 からむとう
二 ティツクンと組合術
三 手ツコミノ術と拳法術
四 民俗分類との違い
第七章 空手史の基本形
一 無記載の記載
二 空手史の基本形
第八章 今日的な問題点
一 残された問題点
二 京阿波根實基塚の性格
三京阿波根實基の墓碑
四 空手の史祖
参考文献
あとがき
索引
前書きなど
最近の沖縄地元紙の紙面を賑わしている話題の一つが「沖縄空手」である。『沖縄タイムス』も『琉球新報』も、ほぼ毎週欠かさずに、各道場や流派、その歴史や著名な空手家、および国の内外への発展の状況などを紹介している。また、時には、それに加えて、新聞社の主催する空手家や研究者などの座談会、および県の空手振興課主催による空手アカデミーでの講演などについても報じている。
恐らく、空手好きの読者にとっては、興味津々、楽しくてたまらない記事であることは間違いないであろう。何を隠そう、私もその一人なのである。それを目にするたびに、空手の裾野の広さを改めて認識させられているのである。
しかし、その反面、理解に苦しむというか、あるいは腑に落ちないというか、どうにもすっきりしない点もないわけではない。沖縄の文化としての空手という具合に、「文化」の二文字が目に飛び込んでくる割には、民俗学や文化人類学の側からの、つまり文化の研究を専門とする側からの発言が、ほとんど見当たらないのである。
紙上で語られる沖縄空手の未来像の実現にも関わることであり、その状況は少しまずいのではないか、というのが私の率直な印象である。そうかと言って、おいそれと、誰か専門家に助けを求めるわけにもいかない。そこで、隗より始めよの言葉どおり、私自身が老体に鞭打って、筆を執ってみよう、と思った次第である。
いざ、筆を進めてみると、空手に関する従来の研究には、きちんと根拠を示さないまま語られる過去の推定が、余りにも多いことに驚いてしまった。それらが正当な空手の歴史として安易にまかり通るようでは、お先真っ暗としか言いようがない。研究者にとって当たり前のことであるが、実証不可能な過去の推定を排し、信頼に足る文献資料とその解釈に基づいて、現段階で言えることだけに限定すること、それを私自身再確認した。
私が最も関心を抱いているのは、空手の歴史である。それを二つの時代に分けて捉えることにしたい。一つは、「基本形の時代」で、空手が沖縄の武術として、ほとんど沖縄だけで行われていた時代のことである。もう一つは、「多様化の時代」で、空手が沖縄から飛び出し、他所に伝播し始める時期から今日までである。それら二つの時代のうち、本書では「基本形の時代」に限定して扱うことにしたい。「多様化の時代」については、別途準備中である。
具体的に言えば、私の専門は歴史学ではなく民俗学なので、空手に関する伝承資料をまず吟味し、それと文献資料とを噛み合わせることによって、「基本形の時代」における三つの重要事項を明らかにしたいのである。すなわち、空手が沖縄固有の武術として初めて文献に登場する時期、中国武術の影響が認められる時期、およびそれらと今日的な「空手」の名称との関係である。
本書は、内容的には専門性を保ちながら、出来るだけ分かり易くまとめた小著のつもりであるが、論の展開や文脈をきちんと押さえるためには、最初から最後まで一気に読むのは、少々骨が折れるかも知れない。しかし、少しでも空手の歴史や民俗学に関心のある方々ならば、逆にその分だけ楽しめるかも知れないとも思っている。
上記内容は本書刊行時のものです。