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寄生バチと狩りバチの不思議な世界 前藤薫(著/文 | 編集) - 一色出版
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寄生バチと狩りバチの不思議な世界 (キセイバチトカリバチノフシギナセカイ)

自然科学
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発行:一色出版
A5判
324ページ
並製
価格 2,800円+税
ISBN
978-4-909383-12-9   COPY
ISBN 13
9784909383129   COPY
ISBN 10h
4-909383-12-3   COPY
ISBN 10
4909383123   COPY
出版者記号
909383   COPY
Cコード
C0045  
0:一般 0:単行本 45:生物学
出版社在庫情報
絶版
書店発売日
登録日
2020年5月8日
最終更新日
2021年10月12日
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紹介

クモヒメバチがクモに寄生し操作する仕組み、水中にまで侵出し寄生するミズバチ、働きアリが運んでいるすきに幼虫に産卵するアリヤドリバチなど、これまで分からなかったハチたちの生理・生態・進化の不思議について、日夜研究をかさねてきたハチ専門家たちが、初めてその正体を語り出す。

目次

プロローグ - ある寄生バチのひとり語り
第1章 寄生バチ・狩りバチの誕生と進化:産卵管の巧みな使い手
第2章 マイクロハイメノプテラ:小さなハチの華麗な世界
第3章 虫こぶをつくる“寄生バチ”: 植物食への回帰
第4章 アリに寄生する - 最大規模の多様性をほこる寄生バチがたどり着いた究極の寄主
第5章 クモヒメバチ:獰猛な捕食者を手なずけて操る
第6章 内部寄生の謎 - 危険な体内環境を支配する
第7章 細胞内共生細菌 - 寄生バチの性と生殖を操作する
第8章 兵隊カースト - 寄生バチにおける真社会性の進化と分子擬態
第9章 キノコとキバチと寄生バチ - 枯れ木をめぐる奇妙な三者系
第10章 シイタケを守る - ハエヒメバチの多様性と生態
第11章 剣を持った寄生バチ - 狩りバチへの進化
第12章 ダニと狩りバチの共進化 - 竹筒のなかを覗いてみると
第13章 クモを狩る - 原始社会性の進化的起源
第14章 寄生バチと狩りバチの採集と同定 - 多様性を正しく理解するためのメソッド
エピローグ - 数千万年後の不思議な世界

前書きなど

プロローグ
ある寄生バチのひとり語り
前藤 薫



寄生バチと狩りバチの不思議な世界へ、ようこそ。
本書では、アリやスズメバチ、ミツバチなどの華麗な女王国の礎にもなった、あまり目立たないハチ達の暮らしぶりをお楽しみいただきたい。どの章から読み始めてもらっても良いが、まずは学生達が飼育している寄生バチのひとり語りに耳を傾けてほしい。語ってくれるギンケハラボソコマユバチ(Meteorus pulchricornis)は、日本各地の里山に生息し、チョウやガの幼虫に寄生するごく普通の寄生バチである。

「まだ少し眠い。寄生バチには昼間活発に動き回るものが多いが、私は夕方にならないと頭がさえない。日暮れ前から明け方までが私の時間だ。花蜜や露をすすってお腹をみたしたら、チョウやガの幼虫を探しにいこう。葉っぱのうえで動く幼虫を見つけたら追いかけて産卵管を突き刺し、1個だけ卵を産み込む。幼虫の強靭な皮膚を瞬時に貫くことができる産卵管は私の宝物だ。」

「私は結婚していない。一族には交尾して子を産むものもいるが、私は交尾しなくても娘を産めるので子孫はどんどん増える。染色体を組み換えないで卵を産むので、娘たちはみな同じ遺伝子をもったクローンだ。」

「毎日10個ほどの卵を産みつづけて、もう半月が過ぎた。これが125個目の卵なので、そろそろ命がつきる。私は娘たちの面倒をみないが、彼女らが立派に育つように準備したつもりだ。これから先は、3日前に私が産んだ娘に語ってもらうことにしよう。」

「何だか体がむず痒い。そろそろ卵膜を破って泳ぎ出るころあいらしい。孵化したばかりの幼虫が大きな牙(大あご)をもつのは、他の寄生バチが産み込んだ幼虫を攻撃して生き残るためだ。それにしても、こうして寄主(宿主)の体内で生きていられるのは不思議だ。昆虫だって強力な免疫システムをもっていて体内の異物は徹底的に排除される。私が生きていられるのは、母親が私を産み込むときに、免疫細胞を一時的に自滅させる物質(ウィルスのような粒子)を一緒に注入してくれたからだ。
ありがとう。」

「私の周りには丸い大きな細胞(テラトサイト)が無数に満ち溢れていて、私の発育を助けてくれる。私の卵の表面にあった細胞から発生したものなので、やはり母親からの贈り物だ。寄主のハスモンヨトウは私が寄生してからもしばらくは餌を食べつづけていたが、もうそれを止めている。私の体は十分大きくなったので、そろそろ脱出しようと思う。」

「寄主幼虫の皮膚に穴をあけて外界に出てみると、これは大変だ!!アリやクモなど、怖い捕食者がうろうろしている。丈夫な繭を作るまでの一昼夜を何とかしのがなくてはならない。私は寄主から脱出するとすぐに糸を吐いて宙にぶら下がった。アリは細い糸をつたって降りてくることができないので、ぶら下がったままで繭を作ろう。」

「宙に吊り下げられた繭は安全な揺りかごだ。羽化するまでの数日を快適に過ごせる。ただ恐ろしいことに、私たちの繭に産卵管を刺して産卵する別種の寄生バチがいて、彼らは細い糸でもつたって降りてくる。だが幸いなことに、私の繭は彼らに見つかることはなかった。」

「繭のなかで無事に羽化し、いざ脱出する時になって、はたと困った。丈夫な繭をどうやって破ろうか。そうだ、鋏のように鋭い大あごを使えばよい。大あごは一生に一度だけ役に立つ必須アイテムだ。
さあ飛び立とう、広い世界が待っている。」

寄生バチや狩りバチを観察していると、彼らがあたかも意志をもって動いているように見える。もちろん彼らは目的をもって行動しているわけではなく、遺伝的な仕組みに基づいて環境に反応しているに過ぎない。その仕組みは、何者かがロボットを作るように目的をもって設計したものではなく、突然変異と自然選択の繰り返しによって形作られ、弛みなく維持されているものである。ただ本書では、彼らの体の作りや行動を分かりやすく説明するために、彼らが意志をもっているかのように擬人的に表現している場合があることをお断りしておきたい。

版元から一言

【丸山宗利氏・すいせん!】
ハチ・アリ類の昆虫ファンは多いですが、特に寄生バチと狩りバチはその生態の面白さ、色彩とプロポーションの美しさのために、ひときわ高い注目を集めています。
本書では寄生した相手を麻痺、コントロールなど、巧妙な寄生戦略によって我が子の発育をまもるハチたちの多くの事例とともに紹介しています。
ふんだんに入った画像は、本と同時に、巻末パスワードを使ってログインするとオンライン版で、フルカラー高解像で、動画とともに視聴できます。

著者プロフィール

前藤薫  (マエトウカオル)  (著/文 | 編集

九州大学大学院農学研究科修士課程修了。博士(農学)。森林総合研究所をへて、現在は神戸大学大学院理農学研究科教授。寄生バチの進化と生態のほか、ハバチやゾウムシなど、森林昆虫の生活史や多様性にも興味をもつ。著書に『森林昆虫総論・各論』(養賢堂・1994 年、共著)、『日本動物大百科昆虫Ⅲ』(平凡社・1998年、共著)など。

上記内容は本書刊行時のものです。