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アメリカで感じる静かな「パープル革命」の進行とトランプ大統領誕生の理由
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2017年3月
- 書店発売日
- 2017年2月15日
- 登録日
- 2017年1月17日
- 最終更新日
- 2024年3月13日
重版情報
2刷 | 出来予定日: 2017-02-24 |
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ネットからの注文が好調のため発売10日で重版となりました。アメリカの真の内情がわかると評判です。 |
紹介
明日はわが身!
アメリカの絶望が日本にも忍び寄る。
この本を読まずして、日本人はアメリカ人とは付き合えない!
マスコミが報道しない、専門家も語れない、今のアメリカの本当の姿
オバマ政権下、アメリカ18州で過ごした政府の裏側を知る元・日本人が語る、本当のアメリカ。市民たちが静かに起こす「パープル革命」がトランプ政権の「希望」になる!
リベラル支持の大手メディアの報道だけを信じていたらわからない真実。「なぜ、ヒラリー・クリントンは負けたのか」「トランプって報道されているようなひどい人間なのか」「メディアの報道とは違う、トランプの支持者たち」「中産階級を疲労困憊させたオバマ・ケア」など、今のアメリカとアメリカ人を知るための一冊。
目次
はじめに
第1章 アメリカンドリームは消えていた――
正解がない旅へ/輝いて見えた「アメリカ」/まったく見えていなかったアメリカの「絶望」/フードスタンプ協奏曲/単に働かないのか、働けないのか――負のサイクル/救急病院に行ったのに、待たされすぎて「死にかける」/アメリカの疲れた実像
第2章 歪んだアメリカの政治とメディア――
政府がサポートする不思議な支援先/政治とお金の不都合な真実/中産階級の悲鳴/壊れた保険制度「オバマ・ケア」/リベラルを後押しするアメリカ・メディア/世の中の理不尽に声を上げる「出入り禁止」のベストセラー作家たち/トランプ大統領がメディアの妨害に負けなかった理由と問われる報道の使命/ヒラリーは選挙のスターではなかった
第3章 富の偏在とその功罪――
「正義の味方」サンダースと学生ローンで儲けるアメリカ連邦政府/民主社会主義の「ユートピア」を夢見た若者たち/「空席の国会演説」とワシントンを逃げ出した世界銀行員/1パーセントの人だけが儲かる不公平のメカニズム/ヒラリーが自ら作ってしまった「ガラスの天井」
第4章 大統領選挙によって分断されたアメリカ――
「国家の分断」助長させているメディア/増えているホッキョクグマの謎/ヒラリーが敗れて、町中がお葬式ムードに/トランプ大統領就任反対デモ参加への「バイト」はいかがですか?/「隠れトランプ」は、なぜトランプを選択したのか/民主主義の最後の砦「連邦最高裁判所」を守るために/人々は悲しんでいる、そして変わろうとしている
第5章 トランプ大統領という「狂気」と政権のゆくえ――
トランプ劇場/嫌われ者に徹したトランプ大統領の作戦/あえて「狂気」を選択する/トランプ大統領は、本当に「最低の人間」なのか/トランプ政権で、戦争リスクが減る理由/ヒラリーの汚点――中東の混乱を招いたのは誰なのか/「メキシコの国境に壁」は良い政策? トランプを支持した国境警備隊/政治をめぐる二つの価値観/トランプ政権のゆくえ
第6章 愛する日本、愛するアメリカ――
「3・11」を知らない私/“Unite Again”(もう一度、一つになろう)/「トランプ支持者の街」を旅して/エージェンティックとコミュニオン―――「社会のために自分を活かす」という生き方
あとがき――半径5メートル以内の幸せ
前書きなど
はじめに
「狂気になれ」――これは、私が日本で会社を経営していた時代に、人生の大先輩が贈ってくれた言葉だ。2016年11月8日、アメリカ合衆国大統領選挙投票日。第45代アメリカ大統領が誰になるかを見守る間、ずっとこの言葉が私の心にこだましていた。
私は2013年の終わりから、ワシントン州シアトルの近郊に住み、アメリカで会社を経営している。それまでは東京のど真ん中で暮らし、そこでも会社を数社経営していた。初めて独立したのは20代半ば。30代は夢のように過ぎていき、手掛けたいくつかの事業は、とてもうまくいった。
当時まだ日本に上陸していなかった「ピラティス」というエクササイズをアメリカの大学と提携して日本に広めたり、自分の会社に所属させていた音楽家や作家、トップ・アスリートなどを世に送り出し、国内外の大きな舞台やイベントなどに出演させるような事業は、手掛けた多くの仕事の中でも特に楽しいものであった。
もちろん失敗もたくさんした。人知れず眠れぬ夜を過ごすことなども、珍しいことではなかったし、部下からの信頼を失って苦しくなったこともあるが、会社や仕事をやめたいと思ったことは一度もなかった。
そんな私が、結婚したアメリカ人の夫の異動に伴い、アメリカに移住したのは2010年10月。移住してから最初の数年間は、今思い出しても胃が痛くなる。結婚当初、主人はアメリカ空軍に所属していたが、私たち家族が日本からアメリカへと移住した2日後に「想定外の辞令」が下され、赴任地だったサウスキャロライナをたった3カ月で離れることになった。
結論から言うと、主人のキャリア的には望ましい展開になったのだが、彼は軍の所属からアメリカ国防総省(通称・ペンタゴン)のサイバー専門の内局に移り、連邦政府文官にキャリアチェンジすることになったのだ。そして、彼が勤めた先、つまりアメリカ合衆国の事情により、私たち一家は2年のうちに9回も引っ越しを経験することになった。
暮らした州はミシシッピ、アラバマ、フロリダ、サウスキャロライナ、メリーランド、ワシントン。短期滞在都市を入れると、全18州を渡り歩いた。私たちが2年で移動した総距離は6万キロ。地球1周半の長さになるほどの距離だ。どこに住んでも数カ月後には引っ越しになる。まったく落ち着くことがない毎日だった。
その他にも思わぬ出来事はあった。移住して半年後の2011年3月11日に起こった東日本大震災によって、私は自分が築き上げた日本でのキャリアも手放さなければならなくなった。本当なら数カ月おきに日本へ仕事で帰国するという計画が、続行できなくなったためだ。主人の仕事の関係もあり、余震等が続く日本へ、私一人で帰国することが許されなくなり、私は当時日本で経営していた会社の現場から完全に離れてしまうことになった。経営者としては、ありえない事態ではあったが、私にはどうすることもできなかった。
今思えばアメリカから指示を送るだけに等しい「遠隔操作」と称した身勝手な悪あがきをしばらくは続けたが、結局2012年の秋に、私は12年にわたって経営してきた日本の会社の代表から退いた。
その間に身内を亡くす経験もした。東日本大震災から5カ月後の2011年8月、弟が突然35歳の若さでこの世を去ったのだ。何の前触れもなく、あっけなく突然目の前から消えた。生きるということ、人生の常識。信じていた「何か」が、その時、崩れ落ちた。約束された明日など誰にもないのだと、私は悟った。
まったく落ち着くことのない毎日の中で感じるアメリカは、旅行で出会うアメリカとも、日本のニュースや書籍で知っていたアメリカとも違っていた。そして実際にさまざまな土地に住んでみて感じたアメリカも、私が「知っているつもり」だったアメリカとは大分違っていた。
しかも、主人がアメリカ国家に従事していることから、そのうちに「私はアメリカ合衆国と結婚してしまったんだ」と思うようになった。「国のオーダー(命令)」には絶対に従わねばならない立場におかれ、外側から見ただけではまったく理解することができなかったアメリカという国の仕組みを知るようにもなった。
アメリカへの移住、弟の死、日本の会社の代表退任など人生で経験したこともないほどの紆余曲折を何とか乗りきって、私は2015年に自らの意思で「アメリカ国籍」を選択した。主人の仕事の事情や、弟を失い一人日本に残した母をアメリカに呼び寄せるためである。政治家の二重国籍問題が記憶に新しいと思うが、日本の法律では二重国籍は認められていない。また、合法的な条件を満たす形で母をアメリカへ呼び寄せるには、私にはこの国の市民権(通称グリーンカードは「永住権」であり、市民権とは異なる)がどうしても必要だった。
隠れて二重国籍を維持している人はいるようだが、私は自分のルーツである日本の法律への敬意、育ててくれた国への感謝をもって、日本への国籍喪失届を提出した。また、移民として私を受け入れ、私に新たな人生を、文字通りゼロからスタートさせてくれるというチャンスを贈ってくれたアメリカという国に対しても、その国旗の前で忠誠を宣誓した。
そもそも、アメリカ人になったからといって、私のルーツが日本であることは変えようがない。多くのアメリカ人がそうしているように、これからも自らの日本人というルーツは大事にするだろうし、それは一生変わらないだろう。さまざまな民族と文化の混合こそが、アメリカのアイデンティティの軸を作っていることは疑いようもない事実だ。
市民権取得の宣誓式でも、それは感じた。さまざまな出身国、肌の色、宗教的バックグラウンド。しかし、私たちはみな同じ「アメリカ人」。この国は、多様性を尊重し、個人の選択を重んじる場所の「はず」であった。
しかし、アメリカ人になった途端、予想外の事態が起こってしまった。そう、2016年の大統領選挙で、ビジネスマンで政治経験ゼロ、暴言王の異名を持つドナルド・トランプが大統領に選ばれたのだ。
アメリカは今、大きく揺れている。この国の素晴らしい点であった多様性は単なる「バラバラ」というような状態になってしまい、「国が分断された」などと多くが言っている。
アメリカは今まさに、多くの人が無意識に信じていた「何か」が、崩れ落ちてしまった状態だと言ってもよい。これは、誰もが経験したことのない異常事態だ。しかし、落ち着いて考えれば「崩壊した後は、再生していくしかない」のだ。私は自分自身の身の上に起こった数年間のいろいろなことを思い出しながら、そんな風に感じている。
ひょっとしたらアメリカのみならず、世界を飲み込むようなネガティブともポジティブともまだわからない「狂気」の渦の中で、私たちの誰もが大きな岐路に立っていると言っていいのかもしれない。
異なる意見や価値観の対立。グローバリズムへの矛盾。自国を優先することへのプラスとマイナス。誰かにとっての善が、誰かにとっての悪に猛スピードで入れ替わる。強烈な大統領批判、そしてトランプ大統領自身の持つ狂気……。「狂気」には二面性が存在する。
普通の生活をしていたのでは、決して出会うことはなかったであろう「本当のアメリカ」。特異な環境で過ごしてきたことで得た小さな気づきが、心の中で何かをささやく。
アメリカは、これからどう生まれ変わるのか。私は自分が生きることを決めたこの地で、そのささやきに耳を傾け続けている。
2017年1月
ジュンコ・グッドイヤー
上記内容は本書刊行時のものです。