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群島と大学
冷戦ガラパゴスを超えて
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年3月
- 書店発売日
- 2017年4月10日
- 登録日
- 2017年3月14日
- 最終更新日
- 2017年4月15日
書評掲載情報
2017-06-18 | 毎日新聞 朝刊 |
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紹介
冷戦終結を経てグローバリズムや国家主義に包囲され、ますます《ガラパゴス》の様相を呈する国、日本。その歴史的・空間的なしわよせが集中するさまざな《現場》の精緻な分析を通して克服を試みる、「殺さない/殺されない」ための同時代論集。
目次
はじめに
第1部 同時代史という現場──歴史の岐路としての現代日本
1、一九九〇年代のインパクト──帝国・総力戦・冷戦の再審
2、二〇〇〇年代のバックラッシュ──歴史認識の疲弊とレイシズムの台頭
3、「二〇一一・三・一一」の衝撃──フクシマとイオウトウ、あるいは冷戦と核被害
4、危機の二〇一〇年代──上昇するグローバリズムと国家主義
5、〈冷戦ガラパゴス〉を超えて──殺さない/殺されないために
第2部 群島という現場──帝国・総力戦・冷戦の底辺から
第1章 世界史のなかの小笠原群島
1、小さな群島の大きな歴史経験
2、帆船グローバリゼーションと移動民の自治
3、帝国の〈はけ口〉から農業入植地としての繁栄へ
4、総力戦の〈捨て石〉へ
5、冷戦の〈捨て石〉から世界自然遺産へ
6、群島のグローバルヒストリーのために
第2章 硫黄島、戦後零年
1、「戦後七〇年」の帰郷
2、そこに社会があった
3、強制疎開、軍務動員、そして地上戦
4、核基地化と長期難民化
5、解除されない強制疎開
第3部 大学という現場──グローバリズムと国家主義の攻囲のなかで
第1章 大学の自治の何を守るのか
1、グローバリズムのなかの「私大生」
2、国立大学の自治の破壊と知財生産企業化
3、私立大学の自治への攻撃と就職予備校化
4、「私大生」の自由とその消失
5、総力戦・冷戦と大学の自治
6、自由と自治の再構築にむけて
第2章 満身創痍の大学と学問の自由の危機
1、二〇一四年、政官財からの大学攻撃
2、二〇一四年、極右・レイシストからの大学攻撃
3、政官財からの大学攻撃の背景
4、極右・レイシストからの大学攻撃の背景
5、大学への国家主義的攻撃がもたらすもの
6、何をなすべきか
第4部 書物という現場──歴史の岐路を読み解くために
下野敏見『奄美諸島の民俗文化誌』
高江洲昌哉『近代日本の地方統治と「島嶼」』
田中隆一『満洲国と日本の帝国支配』
石井知章+小林英夫+米谷匡史編著『一九三〇年代のアジア社会論』
道場親信『抵抗の同時代史』
荻野昌弘+島村恭則+難波功士編著『叢書 戦争が生みだす社会』
サマンサ・パワー『集団人間破壊の時代』
小熊英二『私たちはいまどこにいるのか』
太田昌国『テレビに映らない世界を知る方法』
駒井洋監修+小林真生編著『レイシズムと外国人嫌悪』
前田朗編著『なぜ、いまヘイト・スピーチなのか』
篠原雅武『全‐生活論』
注
前書きなど
第1部「同時代史という現場――歴史の岐路としての現代日本」は、ソヴィエト連邦が崩壊した1991年から四半世紀間の日本社会を対象とした、社会史的・思想史的レヴューです。帝国期の植民地支配、アジア太平洋戦争期の動員や暴力、冷戦期の特権的地位、そしてソ連崩壊後のグローバリズムや国家主義をめぐって、ポスト冷戦期の日本社会がどのような歴史的・思想的課題を突きつけられ、それにどのように取り組み、あるいはそれをいかに否認してきたのかを、大学という教育・研究・言論の現場に身を置き続けてきた眼から考えていきます。
第2部「群島という現場――帝国・総力戦・冷戦の底辺から」は、小笠原群島・硫黄列島を対象とした歴史社会学の論文・エッセイから構成されています。日本本土防衛の〈捨て石〉として強制移住あるいは軍務動員を強いられ、さらに日本本土復興の〈捨て石〉として故郷を事実上の〈帰還困難区域〉とされてきた、北西太平洋の島民の経験から、日本の総力戦体制や冷戦体制を問い直していきます。
第3部「大学という現場――グローバリズムと国家主義の攻囲のなかで」は、この国の大学という場に関する論文・エッセイから構成されています。グローバリズムと緊縮主義、国家主義とレイシズムの隆盛のなかで、政官財界と民間極右勢力から、大学の教育・研究があらゆる圧力や攻撃を受けている現在、学問の自由と大学の自治をどのように守り発展させていくことができるのかを――その歴史的蹉跌をふまえながら――考えていきます。
第4部「書物という現場――歴史の岐路を読み解くために」は、同時代に刊行された書物に寄せた書評群から構成されています。対象とした書物は、社会学、歴史学、政治学、社会思想、民俗学など多様ですが、いずれの書評においても、21世紀に入ってますます偏狭さを増してきた「日本」をめぐる通念を相対化し、別の歴史と社会のあり方への想像力を得ようとしました。
関連リンク
上記内容は本書刊行時のものです。