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猫橋
巻次:Ⅰ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年5月16日
- 書店発売日
- 2021年5月31日
- 登録日
- 2021年5月13日
- 最終更新日
- 2021年6月4日
紹介
「新奇蹟」同人の作家、齋藤圭介と二ツ目の落語家、林家彦三。二人の一年の歩みを刻む雑誌が産声を上げた。これから10年、アニュアルで発行予定。
ちなみに「猫橋」とは川口市芝にある実在の橋の名である。その近くにあるブックカフェ「ココシバ」では、齋藤が座長を務める読書会、林家の落語会がそれぞれ開かれている。二本の線はここで交わった。
書評、創作、活動報告、随筆…、多岐にわたる内容から溢れ出る才気をご堪能あれ。(80頁中8頁はカラー)
目次
猫橋序文
汀日記補遺
書評集 言葉の桟(一)『稼働する人形』
プロモナートレーゼン i
活動報告 2020-2021
書肆カッツェンステッヒ(一)
あとがき
前書きなど
例えば、自分の一番近くにいるような知人ほど、良くわからない部分が多いという事がある。
わたしにひとりの友人がいる。彼とはもう、数十年来の付き合いである。同じく東北の出身で、同じく煮えきらない性格で、同じく今日苦戦中である。
彼は「はなしか」と云う、奇妙かつ珍妙な稼業をしていて、このところ「二つ目」と云うものになって、ようやくひとつめ小僧を放免されて、少しは人間らしくなっているようだけれども、彼は、それでもどうやら、いつもなにやら悩ましげで、卑屈で、かわいくない。ノラ猫だって、もう少し愛敬がありそうなものである。
そんな彼に対して、隙を見て小言でも言おうものなら、「吾輩ハ鹿デアル」からなどと、つまらない戯言を呈し、続いて彼もわたしに対しての不服を並べ立て、また喧嘩口論になる。わたしはもう彼の事などは構わないでおこうと思うし、彼はもうわたしの事などは考えたくもないという。
このふたりはどうやら、お互いにどこか似ている性質であるために、仲違いもするようである。(以下略)
上記内容は本書刊行時のものです。