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大食らい子規と明治 食から見えた文明開化と師弟愛 土井中照(著/文) - アトラス出版
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大食らい子規と明治 食から見えた文明開化と師弟愛 (オオグライシキトメイジ) 食から見えた文明開化と師弟愛 (ショクカラミエタブンメイカイカトシテイアイ)

文芸
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A5判
208ページ
定価 1,500円+税
ISBN
978-4-906885-28-2   COPY
ISBN 13
9784906885282   COPY
ISBN 10h
4-906885-28-4   COPY
ISBN 10
4906885284   COPY
出版者記号
906885   COPY
Cコード
C1095  
1:教養 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2017年3月3日
最終更新日
2017年3月15日
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紹介

本書 まえがきより一部抜粋

人生五十年という時代、正岡子規は三十五年にも満たない生涯を送った。しかし、その短い生涯において、俳句と短歌の革新をなしとげ、現在に通じる言文一致の文章をつくりあげるなど、他を圧倒する文学の歩みを続けている。身体を動かすことさえもままならない「病牀六尺」の生活のなかで、攻撃的かつ個性的な文学精神を貫いた。子規は、俳句や短歌、随筆といった数多くの仕事をこなし、それは講談社の『子規全集』で二十二冊という膨大な量にのぼっている。
 子規に関する研究書や解説書は数多く出版されているが、子規の食に関するものはあまり見当たらない。多くの本は、『仰臥漫録』に記された日々の献立の豊富さと、そこから見えてくる「生への執念」に焦点を当てている。今回、「子規と食」というテーマで、食に関するエピソードとともに「食欲」と「旅」に魅了された子規の生涯にスポットライトを当て、子規の根源的な魅力を掘り下げることができないかと考えた。
 子規にとって「飲食の楽」は、生涯を通じて追求した「文学」と並ぶ人生の重大関心事でもある。
 子規の「大食らい」エピソードは、上京したころから急に多彩になる。目に触れるものすべてが新しい東京での食文化体験が、いかに子規への影響を与えたかということの証明である。学生時代の子規は食べる量を誇り、人よりどのくらい多く食べたかを自慢した。常盤会からの支給金を食事に充ててグルメを気取り、他人と違う自分を演出したのである。
 本書は、子規三十五年の生涯を通じて残した「飲食の楽しみ=食欲」のエピソードを知り、子規の生きた明治時代の食べものや飲食店などの蘊蓄を楽しんでいただくものである。誌面にちりばめられたさまざまな情報を、読者には満腹になるまでご堪能いただきたい。

目次

はじめに

第一章 大食らい子規
【菓子パン】初めての東京で口にした都会の味○16
【言問団子】拓川の家を訪ねる前に食べたという団子○18
【書生子規の食欲】親戚も驚いた子規の大食らい○20
【煎餅】共立学校では煎餅党に属していた子規○22
【鍋焼きうどん】三人で二十四杯はうどん屋の主人にも怒られた○24
【酒】飯なら何杯でも食べられるが、酒はダメ○26
【賄征伐】子規が加担した暴動は、叔父や知人にちなむのか? ○28
【桜餅】長命寺の看板娘お陸とのロマンスと食欲○30
【喀血後】肺病の子規を温かく迎えたふるさと松山の食事○32
【下谷の飲食店1】下谷の下宿の近所は飲食店に満ちていた○34
【下谷の飲食店2】下谷の下宿近くにある有名な西洋料理店○36
【子規の小遣い帳】書生時代の子規の金遣いを探る○38
【小説と焼芋】小説『月の都』出版を諦め、焼き芋を齧る○40
【根岸の里】人と食べものの関係が濃密な根岸の里○42
【家族上京】東京に迎える母と妹で京都への旅○44
【小日本と筍飯】「小日本」の創刊と目黒の待合での筍飯と女○46
【従軍での食事】待遇の悪さで病状が悪化した子規○48
【神戸病院とソップ】病室での食べものとソップ○50
【神戸病院と苺】虚子と碧梧桐が毎朝摘みに行った西洋イチゴ○52
【神戸病院の食事】病院食には、ふるさとの思い出の味もあった○54
【愚陀仏庵と鰻】漱石の払いで鰻を食べ続けた五十二日間○56
【松山の句会会場】句会に使われた延齢館と潑々園○58
【奈良の宿の柿】梅の精が剥いてくれた奈良の御所柿○60
【後継者と駄菓子】道灌山で子規が虚子に薦めた駄菓子と俳句の道○62
【正岡家の家計簿1】正岡家のエンゲル係数は約六二%○64
【蕪村忌】蕪村忌には、天王寺蕪の「風呂吹き」が毎年配られた○66
【ご馳走論】晩年の子規が語った御馳走の悲劇○68
【闇汁会】何を入れてもかまわない闇汁の楽しさ○70
【柚味噌会】露月の送別会からはじまった柚味噌会○72
【誕生祝い】門人四人と祝った誕生日の趣向○74
【諸国名物】全国の門人たちから寄せられる名物の味○76
【懐石料理】初めての懐石料理体験を『墨汁一滴』に書き残す○78
【歯痛】すべてを咀嚼してきた子規のチカラの根源○80
【仰臥漫録1】子規の怒りの遠因は根岸の有名団子○82
【仰臥漫録2】日々の献立に見る子規の大食らい○84
【仰臥漫録3】仰臥漫録に登場する伊予松山の味○86
【正岡家の家計簿2】食費の大半が刺身に占められた正岡家○88
【祝いおさめ】岡野の料理を取り寄せて、家族で祝った誕生日○90
【子規の栄養】女子大学長が絶賛した子規の食事○92
【ココア】牛乳に舶来のココアを入れて飲む子規○94
【土筆摘み】赤羽の土筆摘みでふるさとを思い出す○96
【菓物帖】絵を描いていると造化の秘密が分ってくる○98
【末期の水】牛乳が子規の末期の水になった○100
 [コラム・文明開化はじめて物語]日本水産の先駆者が導入した缶詰○102
 [コラム・文明開化はじめて物語]バターは健康のための薬でもあった○103
 [コラム・文明開化はじめて物語]初めての人に悪印象のカレーライス○104

第二章 紀行文と食べもの
【子規の紀行】各地を旅した子規の記憶に残る食べもの○106
【水戸紀行】水戸への旅は、料理も宿も散々な結果に終わった○108
【四日大尽】大谷是空を訪ねて、大磯に遊ぶ○110
【しゃくられの記1】ふるさとに帰る途中で食べた関西の名物○112
【しゃくられの記2】久万でかつての旅を思い出す○114
【しゃくられの記3】近江に住んだ松尾芭蕉の足跡を巡る旅○116
【かくれみの1】辛口の評価を下す子規が褒めた房総の宿○118
【かくれみの2】瀬戸内生まれの子規には房総の魚が合わなかった○120
【かけはしの記1】信州の旅の思い出は、木いちごの味○122
【かけはしの記2】茱萸の名前が通じなかった信州の茶屋○124
【かけはしの記3】木曽路の旅を締めくくる子規のロマンス○126
【はてしらずの記1】松尾芭蕉の辿ったみちのくを旅す○128
【はてしらずの記2】牛の気配を感じながら貪り食った木いちご○132
 [コラム・文明開化はじめて物語]開国以後に栽培された西洋野菜○135
 [コラム・文明開化はじめて物語]駅弁の起源は塩むすびだった○136

第三章 門人・知人と食べもの
【夏目漱石1】倫敦の焼き芋はおいしいかと尋ねる子規○138
【夏目漱石2】漱石から送られた夏橙は腐っていた○140
【夏目漱石3】漱石作品に登場する店を子規は知っていたか? ○142
【河東可全】下戸の子規には無用の長物だった酒○144
【井林博政】七変人のひとりから送られてきた箱詰めのリンゴ○146
【陸羯南】隣の陸家と正岡家とのおはぎのやりとり○148
【加藤拓川】ベルギー特命公使就任の祝いに贈った名店の豆腐○150
【高浜虚子1】虚子の家で食べた神戸病院以来の味○152
【高浜虚子2】高浜虚子に願ったふるさとの素麺○154
【河東碧梧桐1】碧梧桐のバナナ論評に異を唱えた子規○156
【河東碧梧桐2】碧梧桐が買ってきたリンゴで病床の品評会○158
【天田愚庵】愚庵が心配した釣鐘柿のお礼の遅さ○160
【古島一念】ザボンを送った一念と子規の果物不食宣言○162
【石井露月】日本新聞を辞する石井露月に送った渋柿の句○164
【寒川鼠骨】出獄してきた寒川鼠骨を祝う鮓○166
【伊藤左千夫】牛飼いの歌人・伊藤左千夫に聞いた牛乳の魅力○168
【長塚節1】長塚節の愛にあふれた栗の贈物○170
【長塚節2】子規を健康にしたいと兎を送った長塚節○172
【岡麓1】岡麓が届けた鶏肉のタタキは子規の気に入らなかった○174
【岡麓2】岡麓にねだった西洋菓子と子規の好物○176
【中村不折】写生論の基礎をつくった画家との友情と自炊の思い出○178
【原千代女】神戸土産のカステラと送り主を詠んだ短歌○180
【落合直文】ビフテキに例えられた落合直文の歌と、思案のリンゴ○182
【蕨真】蕨真の送った鯷漬とくさり鮓○184
【新海非風・中村楽天】西瓜に対する怒りと和み○186
【門人たち1】門人たちを食べものに例えると○188
【門人たち2】門人たちから毎年送られてくる柿○190
【門人たち3】温州みかんを中国産と勘違いした子規○192
【門人たち4】石巻から送られてきた鯛の顚末○194
 [コラム・文明開化はじめて物語]牛肉が入手できるようになるまで○196
 [コラム・文明開化はじめて物語]七度目の正直となった氷製造○197
 [コラム・文明開化はじめて物語]明治の初めは紅茶不毛の時代○198
 [コラム・文明開化はじめて物語]コーヒー人気は開花の風潮○199

子規年表○200
子規人脈○202
参考資料○205

著者プロフィール

土井中照  (ドイナカアキラ)  (著/文

フリーライター。1954年、愛媛県今治市生まれ。同志社大学文学部中退。2014年『焼き鳥王国』で、愛媛出版文化賞を受賞。歴史、民俗、方言、県民性、郷土料理と、愛媛県に関する造詣が深く、「愛媛の雑学王」の異名をもつ。
全国やきとり連絡協議会 やきとり文化研究所所長。

上記内容は本書刊行時のものです。