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保育の心理学
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年4月15日
- 書店発売日
- 2019年4月15日
- 登録日
- 2019年3月13日
- 最終更新日
- 2021年9月30日
紹介
2019年度入学生から適用される新保育士養成課程に対応したテキスト。改定保育所保育指針等、保育を取り巻く社会情勢が変化する中において、より実践力のある保育士の養成に向けて、それぞれの科目における関連性が見直され整理された。これを受けて本書では,子どもの学びの過程や特性についての基礎的な知識を習得する部分では、人との相互的関わりや「体験」、「環境」の意義を学ぶために,「事例から読み始め理論に導く」という実践スタイルの編集を取り入れている。
目次
第1章 発達を捉える視点
1 子どもの発達を理解することの意義
1 保育実践の評価と心理学
1 保育とは 2 保育実践の評価
3 子どもに対する評価 4 評価の方法
2 子どもの発達を理解することとは
1 生涯発達する人間 2 乳幼児の発達の理解
3 発達理解の実際
3 生涯発達と発達援助
1 人生周期(ライフサイクル)と漸成
2 発達援助
2 子どもの発達と環境
1 子どもと環境
1 環境の中で 2 エコロジカル・システム
3 子どもにとっての環境問題
4 環境を通しての保育
2 子どもの欲求
1 基本的欲求
2 自己実現の欲求と自己超越の欲求
3 欲求不満と欲求不満耐性
4 防衛機制
3 環境との相互作用
1 社会化と個性化 2 敏感期・臨界期
3 発達の最近接領域の教育
4 アフォーダンス
4 子どもの気付きと理解
1 自然の事象や変化への気付き
2 生命の仕組みや大切さへの気付き
3 他者の気持ちや地域への関心
4 自分の気持ちや考えへの気付き
5 文字や数量の意味や役割の理解
5 環境としての母親・保育者
1 母親・保育者は最大の環境である
2 環境調整
3 不適切な養育(マルトリートメント)
3 発達理論と発達観・子ども観・保育観
1 発達理論
1 フロイトの理論 2 エリクソンの理論
3 ピアジェの理論 4 スキャモンの理論
2 発達観
1 遺伝優位説 2 環境優位説
3 相互作用説
3 子ども観
1 「子どもは白紙で生まれてくる」という考え方
2 「子どもは白紙で生まれてくるのではない」という考え方
3 「子どもは勝手で欲求のままに生きている存在である」
という性悪説
4 「子どもは生まれつき能動的で自ら成長しようとする存在である」
という性善説
5 「子どもは神さまからの預かりもの」という考え方
4 保育観
1 積極的な保育観(教え込むこと)
2 消極的な保育観(育むこと・引き出すこと)
第2章 子どもの発達過程
1 社会情動的発達
1 社会情動的コンピテンス/スキル
1 認知能力と非認知能力
2 基本的情動と社会的情動
3 情動の機能
4 社会情動的コンピテンス/スキル
2 人間の発達過程
1 乳児期 〈基本的信頼〉-〈不信〉:〈希望〉
2 幼児前期 〈自律性〉-〈羞恥・疑惑〉:〈意志〉
3 幼児後期 〈自発性(積極性)〉-〈罪悪感〉:〈目的〉
4 児童期 〈勤勉性〉-〈劣等感〉:〈有能感〉
5 青年期 〈自我同一性〉-〈同一性の拡散〉:〈忠誠〉
6 成人前期 〈親密性〉〈孤独〉:〈愛〉
7 成人中期 〈生殖性〉-〈停滞〉:〈世話〉
8 成人後期 〈自我の統合性〉-〈拡散〉:〈知恵〉
3 養育者との関わりと発達
1 人への選好・他者の表情の理解
2 共同注意(ジョイント・アテンション- 二項関係から三項関係へ
3 社会的参照 4 愛着の発達
4 仲間関係
1 幼児期の仲間関係
2 社会的参加 - 幼児期の遊び,仲間関係の広がり
5 情動調整能力
1 情動調節 2 情動の調整
3 情動表出の発達 4 心の理論
5 自己主張・自己抑制 6 社会的観点の取得
6 道徳性と向社会的行動の発達
1 道徳性の芽生え
2 向社会的行動 - 思いやりや協調性
3 攻撃行動 - 関係性攻撃
4 子どものうそ 5 ルールの理解
6 道徳性の発達
7 子どもの学び - 生活・遊びを通した学習と動機づけ
1 学 習 2 動機づけ - 子どものやる気
2 身体的機能と運動機能の発達
1 身体的機能の発達
1 身長・体重 2 脳神経系
3 循環機能と呼吸機能 4 免疫機能
5 生殖機能
2 運動機能の発達
1 反射運動の段階 2 基礎的運動の段階(0~2歳)
3 基本的運動の段階(2~7歳)
4 運動能力の発達
3 感覚・知覚と認知の発達
1 感覚・知覚の発達
1 視覚 2 聴覚
3 嗅覚 4 味覚
5 皮膚感覚
2 思考の発達
1 ピアジェによる思考の発達段階説
3 記憶の発達
1 記憶のメカニズムと分類 2 ワーキングメモリ
4 ことばの発達 - 話して伝える,考える
1 初めてのことば
2 語彙のひろがり
3 伝えるためのことば・考えるためのことば
4 母語の体系の獲得
5 音韻意識とかな文字への興味
5 児童期から青年期の発達
1 児童期(学童期)
1 知的面の発達 2 社会性の発達
2 青年期
1 心理的特徴 2 からだの発達の特徴
3 不登校,いじめ,ひきこもり - 思春期の問題行動
第3章 子どもの学びと保育
1 乳幼児期の学びに関わる理論
1 乳幼児期の学びと保育
2 レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)
3 オペラント条件づけ(道具的条件づけ)
3 乳幼児期の学びの過程と特性
1 適応的行動の形成
2 アニミズム的思考の揺れ
3 乳幼児の学びを支える保育
事例1 「奏ちゃんのお弁当」 【自己体験による学習】
事例2 「尚果ちゃんのヒゲ」 【感情の発達と自我】
事例3 「4歳のこころ」 【自己主張(自己発揮)・自己抑制】
事例4 「スイカの種」 【自分の保育実践で,保育者の子どもを見る目】
事例5 「みなみちゃんのお迎え」 【母親という環境】
事例6 「自分がいる,自分でない人がいる」 【発達援助】
事例7 「さっちゃんのひとり言」 【考えるための言葉】
事例8 「だれのか覚えているよ」 【記憶の発達】
事例9 「葉っぱのお皿」 【象徴機能の獲得】
前書きなど
本書は,保育士や幼稚園教諭になることを目指して学ぶみなさんに向け,人間のこころ,特に子どものこころの発達についていっそう興味を深め,確かな知識を身につけていただくことを願ってまとめられたテキストです。保育者には,どんなときも子どもの傍らに寄り添う温かさや伸びゆく子どもの可能性を信じる強さ,それを裏打ちする心理発達の道筋についての的確な理解や正しい知識が求められます。
本書は,『保育の心理を学ぶ』(2011 年発行)を改訂・増補して発行するものですが,3つの章から構成されています。第1 章~第3 章2は,2019 年度から実施される新保育士養成カリキュラム「保育の心理学」に添った章立てをして,保育に関わる心理学の基本的知見を整理し,人間のこころの生涯発達を概観しています。養成課程のテキストとして,授業によって説明を加えていただくこと,さらに関連事項や深い内容を補っていただくことを前提に,基本的事項のみをできる限りコンパクトに,平易に概説することを心がけました。第3 章3は実践事例とその解説からなっています。第3 章2までに概説した知見
や心理学的なもののとらえ方が,事例に登場する子どもたちから立ちのぼる息吹と,自ずと結びついて感得していただけるように工夫しました。自学自習される際には,まず第3 章3から読み進んでいただき,実践場面でのリアルな子どもの姿に重ね合わせて,心理学を身近に感じながら,子どもたちを理解していただけると幸いです。また,各章の随所に,保育を志すみなさんに紹介したいトピックをコラムとして配しました。
わが国では少子化が進み,合計特殊出生率は低下したままです。私たちが経験したことのない人口急減社会で,子どもの数も減っているにもかかわらず,不適切な養育(マルトリートメント),小中学生の不登校・若者のうつ病の増加,社会的ひきこもり,ニートなど深刻な問題が山積しています。生きづらい世の中です。私たちのこころに負担をかけているものは一体,何なのでしょうか?一人ひとりが尊重されるべき独自な存在として,自律性をもつ存在として,いきいきと生きることのできる社会,そして同時に他者とともに豊かに生きることのできる社会は,どのようにしたら実現できるのでしょうか。そうしたことについて,最も大切で再考すべきは,乳幼児の保育に始まる人間の発達と生涯学習にあるのではないかと考えます。乳幼児期の重要性は今や,全世界で認識され,乳幼児についてはいろいろな研究がなされ,さまざまな政策もとられています。
みなさんに興味・関心をもって学んでいただくことが本書の意図するところです。保育学や心理学のみならず,脳科学,進化学,遊具や環境デザインなどさまざまな分野の専門家が,子どもたちに熱いこころを寄せていることも含め,全章を通して少しでも,読みやすくわかりやすくと心がけました。あちこちにくり返し書かれていることがらがありますが,それらは,みなさんに,どうしても理解していただきたい,そして保育に役立てていただきたいと思っていることがらです。しかし,まだ改善すべき点も多く,今後,ご意見やご講評を賜りながら,養成教育の心理学テキストとしてより適した内容に改めて参りたいと願っています。
ななみ書房・長渡晃氏には,教育的な配慮に満ちた企画や編集はもとより,折りに触れて,懇切なるご助言と熱意に支えていただきました。心より深く感謝申し上げます。また,本文中のカットにつきましては,小川和子さんと峠奈保美さんが前書に描いて下さったものを一部,色をさして使わせて頂きました。ここに記して,心から感謝いたします。
上記内容は本書刊行時のものです。