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青木川伝奇
原書: 青木川
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2016年10月
- 書店発売日
- 2016年10月28日
- 登録日
- 2016年9月30日
- 最終更新日
- 2016年10月31日
紹介
地方匪賊として生きた男と彼が愛した女たち
1952年の土地改革を背景に,悪逆無道な匪賊として政府によって処刑された魏富堂。
ところが五十数年後,かつて土地改革を指導した解放軍幹部馮明が訪れたその根拠地・青木川鎮では,魏富堂は伝説上の人物となっていた──。
共産党・国民党・匪賊が三つ巴になって戦っていた時代,陝西省南部の山奥で発生した実話をもとに,壮大・奇抜で人間味に溢れた物語が展開される。
史実をもとにした現代中国文学の代表的作品
2007年刊行後、ベストセラーとなって連続テレビドラマ化され、“青木川鎮ツアー”が大ブームとなる。
現代中国を代表する作家の一人、葉広芩の代表作。
【本書のあらすじ】
一九四九年、中華人民共和国は建国したが、まだ蔣介石の部隊が残存、秦嶺山中には匪賊が跋扈し、情勢は不安定だった。
陝西省の西南の隅にある青木川鎮は、四川省・甘粛省と境を接する山間の鎮(まち)で中央政府の支配も届かない。匪賊の魏富堂はアヘン栽培で財をなし、武器を購入し、自衛団の司令として君臨し、鎮の平和を守っていた。
ところが一九五二年、解放軍がやって来ると情勢は一変する。魏富堂は生命財産は保証すると言われて投降するが、大衆裁判にかけられて処刑される。
それから五十数年経った二十一世紀初頭、土地改革を指導した馮明が退官して青木川を訪ねる。彼が処刑した魏富堂は、未だに鎮の人の話題に上っていた。
今や鎮を挙げての関心事は観光開発であった。ここは九寨溝にも近く風光明媚で、古い木造建築が残り、パンダも生息している。
馮明の娘で作家の馮小羽は、古い新聞記事を読んで、青木川の近くで拉致され行方不明だという女性に興味を持っていた。父に同行して青木川に来るが杳(よう)として消息がつかめない。しかし、現地で調べているうちに、魏富堂に関係ある六人の女たちの数奇な運命を知る──。
前書きなど
《青木川》日本語版発行に寄せて
小説『青木川伝奇』[原題《青木川》]は、日本と中国の友人、福地桂子さん・奥脇みち子さん・田葳さんの足掛け二年にわたるご努力によって、日本の読者のみなさんにお届けできる運びとなりました。これは、中国の文学界、陝西省の出版界にとって大変喜ばしいことであり、私個人にとりましてはさらに大きな喜びです。私の作品が日本の読者に、中国の陝西省南部の山奥で発生した、波乱万丈の史実に近い物語として読んでいただけたら、中国の伝統的文化をもっと理解することができ、百年来の中国近代史に触れることができると信じております。それは翻訳者が心血を注がれた賜物です。
『青木川伝奇』は中国で出版されると、読者の好評を博し、陝西省「優秀文芸賞」、「柳青文学賞」、「長編小説賞」などを受賞し、これまでに十四回増刷を重ねました。
そして二〇一三年、『一代の梟雄』[原題《一代梟雄》]と題する連続テレビドラマに脚色され、全国で放映されると、小説を読み、青木川を訪ねるという二回目のブームを巻き起こしました。清明節の大型連休を利用して青木川鎮を訪れた観光客は、なんと十五万人に上り、鎮に入るため十数キロの車の列ができ、未曽有の活況を呈しました。
人々は鎮に入ると、作中人物の原型を探し、往時の屋敷や歴史的遺構を探訪しました。小説が愛読されるのは、物語が真実であり、筋立てが奇抜だからです。そして、生命への理解と尊重及び人間の個性の宣揚を具体的に表しているからでもあると思います。
作中の、楊貴妃が日本に渡ったことについての調査や考証は、本筋とは関係ありませんが、中日交流を促し、歴史的解釈に新しい視角を提供することも有益なことと考えて取り入れました。
小説は日本で書き上げました。二〇〇二~〇三年にかけての青木川での取材が終わると、日本で仕事をする夫のもとへ行きました。その間に山口県久津半島油谷町へ行き、「楊貴妃が日本へ渡った」という伝説についての調査をしたとき、楊貴妃が儻駱道[西安と成都を結ぶ蜀道の一ルート。周至から洋県を経て漢中に到る古道]を必死に逃亡する情景が目に浮かんだので、小説の中に入れようと考えました。
中国にいると雑用が多く、落ち着いて小説創作に専念できませんので、日本にいる間に、名古屋で一気に書き上げました。
青木川という陝西省の古い鎮の名は、活力に満ちあふれ、人々の想像をかきたて、重々しく、深い歴史を感じさせる地名なので、小説の題名としてこれに過ぎるものはないと考えました。日本でも名古屋を出て間もなく「青木川」や「青木湖」などという地名を見掛けますので、親近感を覚えます。日本の読者が『青木川伝奇』を読まれても、親しみを感じられるのではないでしょうか。
日本の青木川のほとりに立って、遙かに中国の青木川を思うと、世界が小さく、すべてが身近に感じられます。私たちの発想、文化に対する尊崇と受け入れ方、生命に対する理解と認識を含めて。
日本語版発行に際しまして、改めて福地桂子さん・奥脇みち子さん・田葳さんのご苦労に感謝し、中日文化交流への貢献に感謝いたします。
二〇一六年七月 留壩にて
葉 広 芩
上記内容は本書刊行時のものです。