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八重山病院 データでムヌカンゲー 上原真人(著/文) - ボーダーインク
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八重山病院 データでムヌカンゲー (ヤエヤマビョウイン データデムヌカンゲー)

社会科学
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四六判
並製
定価 1,143円+税
ISBN
978-4-89982-222-6   COPY
ISBN 13
9784899822226   COPY
ISBN 10h
4-89982-222-7   COPY
ISBN 10
4899822227   COPY
出版者記号
89982   COPY
Cコード
C0047  
0:一般 0:単行本 47:医学・歯学・薬学
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2012年4月
書店発売日
登録日
2012年5月16日
最終更新日
2012年5月16日
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紹介

離島県・沖縄において県立病院はどんな役割を果たしているの?そんな疑問に、現役の八重山病院医師が数字とグラフを駆使してお答えします。病院の基礎的データから探る「第一章 人の話」。八重山の医療の現状を知る「第二章 医療の話」。離島医療特有の事情を分析する「第三章 離島ならではの話」まで、58+αのデータで詳しく解説。日本全体の「病院事情」も分かります。医療について、病院について、みんなで「ムヌカンゲー」してみませんか?
※ムヌカンゲーとは……沖縄の言葉で、意訳すると「いろんなものを見て、聞いて、感じて、次に生かすために考える」こと。

目次

はじめに
八重山病院の沿革と八重山地域医療の現状
「データでムヌカンゲー」に期待 八重山の医療を守る郡民の会 会長 宮平康弘
「データでムヌカンゲー」の出版にあたり 沖縄県病院事業局 病院事業管理者 伊江朝次

第一章 人の話
ムヌカンゲー1  医師ひとり当たりの救急患者診察数
ムヌカンゲー2  八重山病院の医師数
ムヌカンゲー3  八重山病院の看護師数
ムヌカンゲー4  八重山病院における4月異動の医師数
ムヌカンゲー5  沖縄県の麻酔科医師数
ムヌカンゲー6  内科医の当直回数
ムヌカンゲー7  八重山病院の心臓血管外科医師数
ムヌカンゲー8  八重山病院手術室看護師の当番回数
ムヌカンゲー9  職場体験をした高校生数

第二章 医療の話
ムヌカンゲー10  八重山病院の元日の出産数   
ムヌカンゲー11  八重山病院における未熟児率
ムヌカンゲー12  内科外来のひとり当たりの診察時間
ムヌカンゲー13  八重山病院の帝王切開数
ムヌカンゲー14  八重山病院の帝王切開率
ムヌカンゲー15  急性虫垂炎(盲腸)の年間手術症例数
ムヌカンゲー16  外科の年間手術症例数
ムヌカンゲー17  八重山病院の年間手術症例数
ムヌカンゲー18  八重山病院手術室の癌の手術数
ムヌカンゲー19  八重山病院の膝の人工関節手術数
ムヌカンゲー20  全手術中の緊急手術の割合
ムヌカンゲー21  県内主要病院の緊急手術の割合
ムヌカンゲー22  八重山で減圧症を発症しやすいのは?
ムヌカンゲー23  減圧症治療者数と治療回数
ムヌカンゲー24  八重山病院のベッド数が地域全体に占める割合
ムヌカンゲー25  二次医療圏八重山の県立病院割合
ムヌカンゲー26  医師数において県立病院が占める割合
ムヌカンゲー27  石垣島トライアスロンの医療班受診率
ムヌカンゲー28  石垣島トライアスロンの医療班人数
ムヌカンゲー29  八重山病院救急室の心肺停止の患者数
ムヌカンゲー30  救急室受診に交通事故の占める割合
ムヌカンゲー31  八重山病院救急室受診数
ムヌカンゲー32  救急室からの入院率
ムヌカンゲー33  小児科の準夜帯受診率
ムヌカンゲー34  周辺離島からのヘリ患者搬送件数
ムヌカンゲー35  他地域からの救急室搬送者数
ムヌカンゲー36  八重山病院救急室の受診後帰宅率
ムヌカンゲー37  石垣市消防の救急車出動回数
ムヌカンゲー38  石垣市の救急車の現場到着時間
ムヌカンゲー39  心肺停止患者の社会復帰者数


第三章 離島ならではの話
ムヌカンゲー40  八重山病院の血液製剤購入額
ムヌカンゲー41  八重山病院の血液製剤廃棄額
ムヌカンゲー42  八重山病院の生血使用量
ムヌカンゲー43  石垣市民の市内の病院への入院率
ムヌカンゲー44  石垣市民の市内の病院の利用率
ムヌカンゲー45  八重山病院のひと月の電気料金
ムヌカンゲー46  八重山病院のひと月の重油代
ムヌカンゲー47  八重山病院のひと月の水道料金
ムヌカンゲー48  医療廃棄物の一日平均重量
ムヌカンゲー49  八重山病院の年間ゴミ処分費用
ムヌカンゲー50  一手術あたりの麻酔器の値段
ムヌカンゲー51  八重山病院職員の宿舎数
ムヌカンゲー52  八重山病院の2009年度収益
ムヌカンゲー53  八重山病院の2009年度費用
ムヌカンゲー54  沖縄県立6病院の給与費
ムヌカンゲー55  八重山病院の医療費未払い年額
ムヌカンゲー56  病棟での患者さんと看護師の比
ムヌカンゲー57  10対1看護体制病院の入院基本料

ムヌカンゲー58 むすびにムヌカンゲー
1、25年で4倍に! 年々増加中、石垣島の医療施設
2、ピーク時から3割も減少! 八重山病院の患者数
3、専門性の高い医療の提供 本来の役割を果たせる存在へ
4、人材を簡単に増やせない! 課題多き県立病院の今後

おわりに

前書きなど

2010年11月に八重山毎日新聞紙に第1回の「データでムヌカンゲー」のコラムを掲載させていただいてから1年あまりが経ちます。この本はそのコラムに加筆・修正して新たにまとめたものです。
「ムヌカンゲー」とは、沖縄の方言で「ものごと(ムヌ)」と「考え(カンゲー)」を合わせた言葉です。一言で共通語にするのは難しいですが、意訳すれば、「いろんなものを見て、聞いて、感じて、次に活かすための思考」のことです。
八重山病院をはじめ六つの沖縄県の県立病院は2009年から経営改革を行っています。 スペースの都合上、具体的な経営改革の内容は書けませんが、各県立病院の経常収支の黒字化を目標に改革を行っている最中です。2009~2011年度の3 年間の県立病院の経営改革の状況次第で、場合によっては県立病院の「独立行政法人化」も止むを得ない、という沖縄県の方針の中で改革を継続しています。改革の成果でなんとか2012年度からの「独立行政法人化」は回避できましたが、県立病院の経営はその中で働いている医療従事者だけでは良くならない、というのが私の考えです。つまり、県民の皆さんの協力も必要だということです。
それでは「県民としてどんな協力ができるのか?」という疑問につながるかと思いますが、その答えは「こうすればいい」と一言で表せるほど単純なものではありません。県民ひとり一人が「どんなことができるか」を考えて、それを実践してもらうしかありません。そして「どんなことができるか」を考えるためには、その前に県立病院を知らなくてはいけません。その上で「県立病院を守らなければいけないのか」「県立病院を今後も存続させる意味があるのか」を考えてほしいのです。
マスコミの記事には県立病院の話題が紹介されますが、県民の皆さんはあまりその中身を理解されていないのではないのでしょうか。八重山でもそんな感じがします。私は八重山病院で働く麻酔科医師ですが、八重山病院の中身を少しでも八重山の住民の皆さんに知っていただこうとこのコラムを書き始めたのです。
コラムの内容は八重山病院のデータが中心ですが、中には沖縄県全体の、あるいは日本全体のデータもあります。また八重山病院のデータを通して沖縄県の県立病院全体、あるいは日本の病院全体の状況を知ることができるものと私は考えています。
2007年4月に、兵庫県丹波市に「子どもを守ろう、お医者さんを守ろう」をスローガンに活動しているグループが発足しました。その名は「県立柏原病院の小児科を守る会」。 このグループは兵庫県立柏原病院の小児科の存続の危機を救った地域のお母さんたちのグループで、結局小児科だけでなく柏原病院そのものを存続させてしまいました。その地域のお母さんたちにとって柏原病院はなくてはならない病院だったからです。
私は八重山地域の医療を良くしたいと思って八重山病院で働いています。それが八重山の住民のためにもなると思うからです。そして八重山病院が八重山地域の住民になくてはならない病院であってほしいからです。
しかし、私一人では病院を良くすることはできません。私にできることは、八重山病院がその機能を果たせなくなったらどんな状況になるのかを予測し住民の皆さんに伝えることです。この本はその「伝える」という作業をしているつもりです。「八重山病院が頑張っていること」、「八重山病院はこんなに大変なんだということ」を伝えているつもりです。そしてそれは八重山病院だけではなく、沖縄県のそのほかの病院、日本全国の病院にもあてはまることだと思います。
この本を読んで、「県立病院は守る必要があるのか」、あるならば「誰が守るのか」「どうやって守るのか」などの答えを県民の皆さんがムヌカンゲーする材料に少しでもなっていただければ幸いです。
なお、本書中の文章表現、特に意見や感想の部分はあくまで私個人の私見であり、八重山病院とは無関係であることをこの場でお断りさせていただきます。

版元から一言

離島県・沖縄における大きな課題に、安定的な医療環境の保持がある。しかし、県立病院の財政難や独立法人化、医師不足、モンスターペイシェントの増加など、抱える問題は大きいうえに、その現状を知っている一般市民はほとんどいない。本書が提起しているものは、まずは病院をめぐる現状をひとびとに知ってもらうこと。その上で、すべての人が当事者意識を持ってこの問題に向き合っていくことである。沖縄に観光に行くあなたが、もしかすると病院のお世話になるかもしれない(実際、観光客のダイビング事故は急増している)。あなたの地元の病院にも同じような問題があるかもしれない。小さな島の病院の話は、けっして人ごとではないのだ。

著者プロフィール

上原真人  (ウエハラマサト)  (著/文

1967年5月生まれ
中学校まで沖縄県読谷村でウミンチュ(海人)として過ごす
1986年3月沖縄尚学高等学校卒業
1995年3月琉球大学医学部医学科卒業
1995年5月琉球大学医学部麻酔科学教室入局
その後沖縄県立宮古病院、沖縄赤十字病院、小倉記念病院、浦添総合病院などに勤務
2001年11月現職の沖縄県立八重山病院勤務
2010年11月八重山毎日新聞にて「八重山病院データでムヌカンゲー」を連載スタート
本職は麻酔科医師。日本麻酔科学会専門医・指導医
座右の銘は「幸せはいつも自分の心が決める」(相田みつを)

上記内容は本書刊行時のものです。