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自然災害と共に生きるー近世種子島の気候変動と地域社会 佐藤 宏之(著) - 北斗書房
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自然災害と共に生きるー近世種子島の気候変動と地域社会 (シゼンサイガイトトモニイキル)

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発行:北斗書房
A5判
92ページ
並製
価格 900円+税
ISBN
978-4-89290-042-6   COPY
ISBN 13
9784892900426   COPY
ISBN 10h
4-89290-042-7   COPY
ISBN 10
4892900427   COPY
出版者記号
89290   COPY
Cコード
C0040  
0:一般 0:単行本 40:自然科学総記
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2017年3月
書店発売日
登録日
2017年3月8日
最終更新日
2017年5月12日
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目次

Ⅰ はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅱ 近世種子島の地形・歴史・土地・人口・生業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅲ 『種子島家譜』の魅力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅳ 文理融合にみる古気候復元と地域性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅴ 『種子島家譜』にみる近世種子島の災害史年表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅵ 災害への対応力、災害からの復元力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅶ おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅷ 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

前書きなど

Ⅰ はじめに

 二〇〇〇年代に入り、これまで想定されていたレベルをはるかに上回る豪雨や台風、噴火、地震、津波などによる大規模な自然災害が日本各地で立て続けに発生しています。わたしたちにとって、いまや防災・減災は常に意識して生活しなければならないことになってきているといえるでしょう。
 わたしたちは、自然災害の発生自体を止めることはできませんが、それによる被害を最小限に食い止めることは可能です。いまを生きるわたしたちに求められている力は、災害を単に恐れるだけではなく、それを科学的に見る目を養い、そこから得た知識や情報を自分の生活に生かし、防災・減災に役立てるような対応力であり、行動力ではないでしょうか。
 なかでも鹿児島県は、桜島や新燃岳などの火山噴火に対する防災のほか、多くの島嶼地域を抱えているため、台風や集中豪雨などに対する防災にむけての社会システムの構築が課題となっています。特に、広大な海域に点在する無数の島々からなる島嶼地域は、これまでも毎年のように集中豪雨や台風、旱魃、疫病に見舞われてきました。とりわけ、台風と旱魃による被害が顕著に発生し、農業生産基盤の脆弱な島々では大きな被害を出してきたのです。また、いつ発生するか分からない日向灘や南海トラフ地震などは、揺れや津波による大きな被害が予測され、島嶼地域では特に注意が必要です。
 こうした島々は、周りを海に囲まれ、独自の自然、文化、社会経済システムが存在している一方で、地球温暖化や経済のグローバル化・気候変動など、さまざまな環境変動の影響を強く、しかも迅速に受ける地域でもあるといえます。したがって、さまざまな環境変動に対する影響を考え、その適応策を提言する場所として、島嶼地域は最適な地域ということができるでしょう。
 そこで本書では、江戸時代の種子島において、どのような気候変動や災害が発生し、それにいかに社会が対応していたのか、論じていくことにしたいと思います。
 ところで、将来的な防災・減災に役立てるような対応力や行動力を養うために、なぜ江戸時代の、しかも種子島を素材としなければならないのか?。そう思われる読者の方もいるのではないでしょうか。
 近年、気象観測が行われていなかった歴史時代のさまざまな気候変動を、樹木やサンゴの年輪、鍾乳石(石灰洞(鍾乳洞)の天井にたれ下がる、白色に近いつらら状の石灰岩)、年縞堆積物(氷河や湖底などで、一年ごとの縞模様(年縞)が見られる堆積物)、アイスコア(氷床から取り出された筒状の氷の柱で、気温、海水量、蒸発量、化学物質や低層大気の成分、火山活動、太陽活動、海洋の生物生産量などさまざまな気候に関する指標が含まれる)、古文書などの多様な気候の代替指標を用いる「古気候学」の発展によって、年~月単位で詳細に復元できるようになってきました。東アジアにおける樹木年輪幅の広域データベースから、西暦八〇〇年以降の「夏の気温」が年単位で復元され(Cook et al.2013)、その東アジアの夏季平均気温の変動と日本のそれとがある程度一致していることが確認できています。
 また、江戸時代は世界史上稀にみる文書社会といわれており、この種子島にも種子島家によって江戸時代から明治時代にかけて編纂された同家の歴代系譜、年譜である『種子島家譜』が現存しています。そのため、江戸時代を通じた気候変動に対する村・藩・幕府等の意志決定のあり方を分析することができるのです。江戸時代の人びとは、気候変動に対して、ただ手をこまねいて運命を享受していただけではありません。危機に直面して、あるいは危機を予見して、人びとはさまざまな短期的・長期的な対策を試みています。したがって、『種子島家譜』を用いれば、気候と歴史の関係について、より正確な因果関係をあきらかにすることができるはずです。しかも、これらの史料は、なにも偶然そこに残っていたわけではありません。『種子島家譜』がさまざまな政治的変動や災害(戦災・自然災害)、歴史書の編纂事業、他文書の流入といった、いくつもの史料滅失の危機から免れ、大切に保管されてきた史料であるということも重要です。
 本書では、こうした史料を用いて、気候変動に起因する社会の崩壊を避けるための先人たちの知恵や努力に歴史の教訓を学んでみたいと思います。

著者プロフィール

佐藤 宏之  (サトウヒロユキ)  (

1975年生まれ。
2005年一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員(PD)、法政大学・一橋大学大学院非常勤講師を経て、2010年10月より鹿児島大学教育学部にて教育・研究を担当。
鹿児島大学学術研究院法文教育学域教育学系准教授・博士(社会学)。

[主要著書]
『近世大名の権力編成と家意識』吉川弘文館、2010年(単著)
『現代語訳徳川実紀 家康公伝』1~5、吉川弘文館、2010~2012年(大石学・小宮山敏和・野口朋隆との共編著)

上記内容は本書刊行時のものです。