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登校力
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2010年12月
- 書店発売日
- 2010年12月22日
- 登録日
- 2010年12月25日
- 最終更新日
- 2010年12月25日
目次
はじめに
I カウンセラーへの道
II 忘れられない少年
=家庭・ホームルーム担任・カウンセラーとの連携で再登校した紀男(仮名)=
1 事例の概要
2 親との面接
3 初期の診断と援助
4 中期の診断と援助
5 終末期の診断と援助
III この事例を振り返って
1 チーム支援体制を組む
2 親・子との連携
3 支援プログラムを作成
4 面接・生活記録
5 クラス・級友の協力
6 事例研究会の実施
7 外部機関との連携
IV 登校力=不登校の子どもが本来的な姿に戻る力を育てるために
登校力1……不登校になる要因を理解しておこう
登校力2……家庭に五楽園を創ろう
登校力3……親と子の関わり方を考えよう
登校力4……夫婦和合して一心同体であれ
登校力5……「学校へ行け」は避けよう
登校力6……よき想念を持って子どもを見よう
登校力7……登校力を育てるための父親の役割
登校力8……子どもの話を聴く技術(家庭カウンセリング)を身に付けよう
登校力9……勇気と自信を育む褒め方
登校力10……自ら行動を起こすための支援
コラム
運命は自ら拓くもの
創造の道は平凡着実の中に
おわりに
前書きなど
はじめに
私の好きなことばの一つに「砕啄同機」ということばがあります。
私は農家の四男として生まれました。八人家族、決して裕福な家庭ではありません。
小学校四年から高校三年までニワトリを飼って学費を稼いでいました。当時(昭和二十二年頃)、卵一個八円十銭~三十銭くらいで、卵買いのおばさんが日曜日に私を訪ねて買いに来てくれました。なぜなら、卵の隠し場所は私しか知らないからです。
当時、あんパンは十円でした。今、百円~百五十円はしているので、その計算からいくと卵一個八十円~百二十円していても不思議ではありません。日銭は母親より持っていました。お金を貸したことはありましたが、返してもらった記憶はありません。
しかし、お金で買えない愛情を一杯もらったこと、そのおかげで今の私があると感謝して
います。
私が小さいとき三十九~四十度の熱を出してうなっていると、母は井戸の底から冷たい水を汲み、手ぬぐいを濡らし額に当てて、直ぐ熱くなるのを夜通しかけて冷やしてくれました。私が目を覚ますと、私の斜め上に母親の顔があり、私の様子をじっと見ていました。六十年過ぎてもその情景は今も鮮明に残っており、そのおかげで脳がおかされることもなく健康に育ったと思っています。
私は雛を孵化させてニワトリを増やしていました。母鶏は二十数日餌も食べず卵を抱き続けます。雛が殻の中で産声を上げると、その声を聴き分けて母鶏が雛の口先の殻を砕きます。その時、長い時間温め育んできた雛が誕生します。砕く位置が違ったり、タイミングが早すぎても遅すぎても、生命の誕生はない。これが「砕啄同機」という意味であることを、ニワトリを例にして学生に説明してきました。「私が現在あるのはニワトリのおかげです。インフルエンザといって、側にいたニワトリまで殺されてしまう…忍びない」と冗談も交えながら「砕啄同機」の話をします。
まさに教育はタイミングであると思う。かけるべきときに抱きしめて愛を、無償の愛を、どんなに忙しくても心の中に無限の愛を、発達段階に応じて厳しさの中に温かみのある愛を、年と共に手を離しても遠くから見守る愛を、そんな親でありたい。
今、不登校の子どもと寄り添って生活しているお父さん、お母さん。時々学校を休んだり、行きたくないと言ったりする子どもと向き合っているお父さん、お母さん。この本を手にされたお父さん、お母さん、うちの子はもう遅かったとあきらめないでください。夫婦和合して、今までの子どもの教育はどうであったかを語り合い、そして、雛が殻の中から叫ぶ悲壮な声を母鶏が的確に聴き取るように、子どもの心の叫びに耳を傾けゆっくりと、焦らず聴いてあげることから始めてください。
接ぎ木のように、縄を綯なうように、不足していたところを的確に捉え補っていけば、必ず本来的な姿に戻ります。
上記内容は本書刊行時のものです。