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行動する「自利利他円満」の仏教 服部 進治(著/文) - 同時代社
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行動する「自利利他円満」の仏教 (コウドウスルジリリタエンマンノブッキョウ) 宮沢賢治・親鸞・道徳論をめぐる断章 (ミヤザワケンジシンランドウトクロンヲメグルダンショウ)

哲学・宗教
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発行:同時代社
四六判
価格 1,600円+税
ISBN
978-4-88683-897-1   COPY
ISBN 13
9784886838971   COPY
ISBN 10h
4-88683-897-9   COPY
ISBN 10
4886838979   COPY
出版者記号
88683   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2021年4月5日
書店発売日
登録日
2021年2月12日
最終更新日
2021年4月16日
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紹介

仏教は現実社会にどう関わるべきか。自己犠牲の精神とは何か。
助け合う思想、他者と共に生きる哲学とは――。
仏教における「自利」と「利他」の教義に焦点をあて、
現代社会を生きる「私たち」一人ひとりの「倫理」を問う。

目次

第1章 本書の問題意識
1.他者とつながって生きる「私」 
2.政治課題を忌避しがちな仏教界
3.仏教の社会倫理を問う

第2章 大乗仏教の興起
1.釈迦入滅から部派仏教の成立まで 
2.大乗仏教の起源
3.大乗仏教の柱

第3章 日本人にとっての利他行
1,捨身(しやしん)飼虎(しこ)とジャータカ(本生譚)
2.市場原理主義と利他主義 
(1)「善因善果・悪因悪果」論の危うさ
(2)「等価交換モデル」の人間関係
 
第4章 宮沢賢治と自己犠牲の精神
 1.なぜ宮沢賢治なのか
(1)『法華経』に帰依した賢治
(2)賢治と国柱会
 ①「我日本の柱とならん」
 ②八紘一宇
(3)賢治作品とジャータカ(本生譚)
2.賢治作品の自己犠牲精神
(1)「よだかの星」
(2)自力救済への絶望
(3)自己犠牲精神の多様な諸相 
(4)賢治作品の菩薩たち
3.自律心を欠いた自己犠牲精神と利他主義の危うさ
(1)「よだか」の最後は利他主義か 
(2)全体のための個は危ない
(3)大乗仏教は、あくまでも「自利利他円満」
4.手塚治虫マンガの非戦平和への希望
(1)「荒野の七ひき」 
(2)「アトム今昔物語 ベトナムの天使」

第5章 歴史の中の宮沢賢治
 1.賢治にとっての利他主義
(1)井上ひさしの評伝劇
(2)「イーハトーヴ」
(3)井上ひさし「イーハトーボの劇列車」-「花巻署伊藤儀一郎刑事」の「爆発」
(4)お坊ちゃんの「善意」?
(5)ユートピアを宗教と芸術に昇華する賢治の非イデオロギー性 
(6)ノブレス・オブリージュ? 
(7)仏法以前の根源的ヒューマニズム
2.賢治の政治姿勢-国柱会との関わり
(1)賢治は田中智学を信じ続けていたのか?
(2)宗教や芸術活動に支えられた賢治の「国際主義」
(3)絶望から自己犠牲主義へ  
 ①見つからない時代の出口
 ②賢治の置かれた立場
③死と向かい合う
(4)文芸による仏教教化活動への特化
(5)国柱会との訣別?
 ①国柱会と田中智学から離れた賢治の心 
 ②ジョバンニの緑色の切符

第6章 大乗仏教の利他主義と「贈与」のパスワーク 
 1.他者への「贈与」のパスワーク
(1)自己犠牲主義ではない利他主義
(2)宮沢賢治の遺言
(3)「思い残し切符」
(4)利他と文学・思想哲学との違い
 2.利他とは「贈与」のパスワーク
(1)見返りの報酬を前提としない
 ①誰かに借りたら、誰かに返す
 ②パスワークされる対象
 ③パスワークを支える「本当の人間らしい関係」
 3.利他主義を支える「行(ぎよう)」と「信(しん)」
(1)利他=善、自利=利己主義=悪ではない 
(2)「行信一(いち)如(によ)」
(3)親鸞における行と信の一元論
 ①称名念仏という「行」
 ②親鸞の「信心」 
 ③「仏に成るべき身に成る」

第7章 宮沢賢治と『法華経』そして浄土真宗
 1.賢治を取りまく宗教環境
 2.賢治にとっての『法華経』
 3.浄土真宗は死後の宗教ではない
(1)賢治の浄土真宗への通念 
(2)「古き自己との決別」-今、ここでの利益(りやく)
 4.阿弥陀仏と浄土は、釈迦のさとりの象徴表現

第8章 大乗仏教の社会性-宗教と政治
 1.利他と「還相(げんそう)回(え)向(こう)」
 2.「他者の自覚」
 3.「他力」の仏道
(1)親鸞の時代認識
(2)「私」の歩んでいく仏道
 4.仏法と世俗
(1)世俗の価値の相対化 
(2)「真俗二諦(しんぞくにたい)」論
(3)人間は業縁的存在
 ①人権の根拠
 ②業縁と個人の固有性

第9章 「自利利他円満」と道徳的価値
1.「自利利他円満」の本質
2.学校教育の中の道徳的価値
(1)「特別の教科 道徳」
 ①教科設置までの経緯
②道徳科教科書の構成
3.権利か義務か、の是非論
(1)教材「選手に選ばれて」
(2)権利か義務かの二項対立
(3)第三の選択肢
(4)同調圧力
 ①主君源義経を裏切った海尊-秋元松代『常陸坊海尊』
 ②共同体(集団組織)の同調圧力
4.手段化されている道徳
(1)「時代制約的」な道徳
(2)宗教と道徳を峻別した親鸞
5.宗教と道徳の区別
(1)「一種の道徳律」としての宗教
(2)生き方としての、「自利利他円満」と親鸞の「非僧非俗」
 ①宗教や道徳は個人の「心の問題」か?
②「自利利他円満」・「非僧非俗」
(3)宮沢賢治・宗教・道徳-補論として

あとがき-政治状況への批判の作法について

前書きなど

〈本書は、仏教の「社会倫理」を問うものである。仏教の思想は、人びとが暮らす現実の社会とどのように関わって、展開されるべきなのであろうか。世俗の現実問題に一切関わり合うことをせず、無関心に徹する遁世主義であったり、はたまたもっぱら現世利益とりわけ金銭的利益に関心を傾注する関わり方でよいのだろうか。 
 倫理は、世俗の人間と人間の関係を内面的に規制する規範(ルール)である。他方で倫理は、多数の個人が関与する公の領域においても問われることになる。この時、仏教は具体的な人間の公領域において、どのように関わり合うのだろうか。これが仏教の社会倫理を問う、ということの意味である。
 上述してきた人間を内面的に規定する「倫理」と、他方で人間の行動を規定する「道徳」とを橋渡しするものを、私は拙著『葛藤を組織する授業-アナログな知性へのこだわり』で、「生き方」としての「認識と行動を媒介する価値意識」としてまとめた。
 非戦平和、民主主義、貧困や格差の根絶といった価値を支える意識は、「○○主義」といった「イデオロギー」ではない、ということをさしあたり、ここでは確認しておきたい。
 「認識と行動を媒介する価値意識」について、私はベトナム戦争下で焼身自殺を遂げた、ベトナムの僧侶たちを思い浮かべる。たとえば一九六三年六月、当時の南ベトナムの首都サイゴンで、ガソリンをかぶり、炎の中で端然と坐禅をしたまま絶命した、七三歳のティック・クアン・ドック師である。南ベトナム政府大統領であったゴ・ディエン・ディムは「人間バーベギュー」と言い放った。
 ベトナム民衆の痛みは、我が身の痛み、であるという価値意識こそが、師をして「焼身供養」という行動に駆り立てたのであった。師にとって、戦争という現実社会のもとでは、民衆の「苦」の原因は、決して個人の内面に巣くう欲望とか無知といった「心」の問題ではなかったのである。
 小著では、仏教の「社会倫理」を、大乗仏教の要である「自利利他円満」に焦点を当てて論じてみたいのである。大乗仏教の宗教者の端くれに身を置く私は、自らの救い(真理のめざめ)という「自利」のみに止まることはできない。他者へ思いをいたし、他者へ関わろうとする「利他」は、政治や経済に沈黙をして、静観を託つ態度とは真逆のあり方を示すことになる。
 社会における仏教のあり方を「行動する『自利利他円満』の仏教」というコンセプトのもとで、整理したものが小著なのである〉(「第1章 本書の問題意識」より)

著者プロフィール

服部 進治  (ハットリ シンジ)  (著/文

1947年生まれ。東京教育大学文学部哲学科卒業。都立高校で、「倫理」「政治・経済」「現代社会」を担当。その間、東京大学非常勤講師などを兼任し、退職後、聖心女子大学非常勤講師を経て、現在東京経済大学非常勤講師、浄土真宗本願寺派衆徒、全国民主主義教育研究会(全民研)副会長。編著共著に『現代教育の思想水脈』『18歳からの選挙Q&A』『主権者教育のすすめ―未来をひらく社会科の授業』『迷走する〈ディベート授業〉』(ともに同時代社刊)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。