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琵琶湖はいつできた 里口 保文(著) - サンライズ出版
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琵琶湖はいつできた (ビワコハイツデキタ) 地層が伝える過去の環境 (チソウガツタエルカコノカンキョウ)

自然科学
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A5判
120ページ
並製
価格 1,500円+税
ISBN
978-4-88325-644-0   COPY
ISBN 13
9784883256440   COPY
ISBN 10h
4-88325-644-8   COPY
ISBN 10
4883256448   COPY
出版者記号
88325   COPY
Cコード
C0344  
0:一般 3:全集・双書 44:天文・地学
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2018年7月
書店発売日
登録日
2018年6月13日
最終更新日
2018年7月12日
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紹介

悠久の水を湛える琵琶湖は、いつ、どうやってできたのか? テーマは、気が遠くなるほどの「長い時間」。人類がアフリカに生まれるよりずっと昔、400万年前の琵琶湖の元型から現在に至るおいたちを、地層を手がかりに追究。判明した琵琶湖の地史を分かりやすく紹介。

目次

はじめに
01 琵琶湖はなぜここにあるか
02 湖の底をつくるもの
03 琵琶湖を支える岩盤
04 湖底の土砂は場所によって違う
05 広い湖はいつ頃から
06 細長い琵琶湖
07 湖底に残る火山噴火の証拠
08 現在位置での琵琶湖の年齢
09 湖底下にねむる地層
10 南の湖と北の山
11 現在の琵琶湖以前の環境情報をのこす 古琵琶湖層群
トピックス 火山灰の研究と野外調査
12 始まりは三重県にあり
13 現在とは異なる水系
14 小さい湖か広い湖か
15 滋賀と三重をまたぐ湖
16 沼になった湖
17 鈴鹿山脈が高くなった
18 火山灰が伝える岐阜から大阪までつながった水系
19 本当に川の時代だったか
20 湖が移動してきたと考えた理由
21 湖の移動は地面の上下動
22 地面を動かす力
23 いつからが琵琶湖
24 これからどうなる?
おわりに
参考文献等

前書きなど

はじめに
 近畿地方の人びとにとって、少なくとも京都、大阪の方は、琵琶湖を水源として重要と感じているだろう。これは、琵琶湖が「広い」ということだけに特化した側面に過ぎない。琵琶湖は、湖底に縄文時代の遺跡がみつかるなど、古くから人との関係が深く、日本の歴史をひもとけばその重要な舞台ともなり、滋賀で古くから伝わる郷土料理の一つであるフナズシは、琵琶湖にしか生息しないニゴロブナを使ってつくられる。このように水源としてだけではない、長い歴史に根ざしたさまざまな魅力を持っている。
 ニゴロブナは、地球上で琵琶湖にだけ生息する魚だ。このような特定の地域だけにいる生き物を、固有種という。固有種が生まれるためには、一般的には長い時間(10万年以上ともいわれる)他の地域と隔離されることが必要なのだそうだ。
 本書は、琵琶湖の魅力のうち、「長い時間」を一つのテーマにしている。といっても歴史の本ではない。琵琶湖がどうやってできたのか、を探るものである。こういった地盤の成り立ちや過去の環境の歴史のことを「地史」という。つまり、本書は琵琶湖の地史を探るものである。
 一般にいう「昔」とは、どれくらいの長さなのだろう。「十年一昔」という言葉があるが、年をとってくると10年くらいの昔は「最近」だと思うようになってしまう。琵琶湖のでき方を考えるのに必要な時間は、先に出てきたニゴロブナがヒントになる。
 ニゴロブナのような固有種が琵琶湖にいるということは、「長い時間」は必然的に数万年を超える。本書で扱う時間はもっと長く、数百万年という時間だ。現代のヒトという種が生まれてからでもまだ数十万年という時間である。琵琶湖の地史を考えるには、種としてのヒトの起源よりももっと長い時間が必要だ。
 琵琶湖のでき方を理解するには、その記録媒体である地層だけが頼りだ。過去の琵琶湖やその周辺の環境、おいたちは、琵琶湖の湖底下や周辺の地盤になっている地層を調べることで理解できる。私たちが暮らす足下にある地盤は、岩盤や地層である。それらが語る言葉をなんとかして聞き取りたい。私が行っている研究とはそういうものである。地球が語る言葉に耳を傾ける。ただ、その言葉とはどんな言語かわからない。単一の言語かどうかもわからない。その手がかりは、多くの先人たちが調べてきた研究成果だ。それをもとに、新たな手がかりを探す。方法は、野外を歩く、地層を観察する、離れた場所に点々とある崖の関係を考える、地域の地層の全体像を理解する、必要な試料を採取する、分析する、その結果をもとにまた野外調査をする、その繰り返しである。しかし、その繰り返しの中には、いくつもの新しい技術や考え方との出会いがある。つまり、同じ所をぐるぐる回っているのではなく、螺旋状に回りながら進んでいる。技術とは分析技術や、地層の調査技術のことである。新しい考え方とは、もっと別の視点に立ってみるということである。これらとの出会いは、今まで見えていなかったものが、見えるようになる瞬間でもある。新しい見方は、琵琶湖研究とはまったく違うところにもある。それはひょっとすると、世界のどこかで同じように悩んでいる研究者の小さな発見かもしれない。自然はいろんなものとつながりあって成り立っている。そのことを考えれば、世界中で行われているどの研究ともつながっている気がする。
 本書が、みなさんにとって、新たな見方との出会いになれば幸いである。

著者プロフィール

里口 保文  (サトグチ ヤスフミ)  (

滋賀県立琵琶湖博物館 総括学芸員
1970年大阪生まれ。専門は地質学。500万年前から現在までの地層を調べ、過去から現在までの環境や、地盤の成り立ちを研究している。主な著書に「人類紀自然学(共立出版)」、「日本地方地質誌5近畿地方(朝倉書店)」、「生命の湖 琵琶湖をさぐる(文一総合出版)」、「博物館でまなぶ(東海大学出版会)」(いずれも分担執筆)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。