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再分配のエスノグラフィ
経済・統治・社会的なもの
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年3月31日
- 書店発売日
- 2019年4月16日
- 登録日
- 2019年2月22日
- 最終更新日
- 2022年6月9日
紹介
グローバリゼーションの進展とともに拡大した社会的・経済的格差を是正するための方策としての再分配の、世界各地における実践の実態をリサーチすることを通して、それぞれの集団や民族、国家の特徴を明らかにする試み。
――なぜいま再分配の人類学なのか? 2010年代、経済政策としての富の再分配の重要性を指摘し、最低賃金 の上昇を旗印にした社会運動が国内外で注目され、支持を集めた。いっぽう、人類学における「再分配」は、市場とは異なるものであり、市場に対抗するための手段であるという見方が提示されてきた。所得再分配政策としての富の再分配と比較すると、国民国家を前提としているかどうかや、格差の是正を志向しているかどうかなど大きく異なる点もあるが、共通している部分もある。本書では、人類学で古典的に議論されてきた、より小規模の再分配的な実践だけではなく、所得再分配政策における富の再分配とその影響についても射程に収める。再分配的な実践の多様性を提示するとともに、個々の地域や集団、さらに国家における実践の特徴を抉り出し、人類学において再分配について議論する現代的な意味を明らかにする。第1章では、フィンランドの高齢者福祉における緊急通報システムの利用状況について分析し、高齢者がサービスを利用するかどうかの判断にサービスの提供者や他の利用者についての想像力が含みこまれ、個々の選択に倫理が介在しうる余地があることを指摘する。第2章では沖縄のある離島を舞台に、国を単位とする再分配制度のひとつである介護保険制度の導入が、どのように地域レベルでの人間関係を再編し、どのような集団を立ち上げてきたのかに注目する。第3章は、欧米の議論を参照しながらも、それとは異なる形で再分配と集団の関係や「社会的なもの」と「政治的なもの」の関係が展開されてきたインドの状況を解きほぐす。第4章は、メラネシアにおける儀礼的交換と再分配の関係について議論している。第5章では、ガーナでの共食という再分配的な実践と「世帯」という集団の関係を検討する。第6章では、ミクロネシア・ポーンペイ島を調査し、世帯よりも規模の大きい集団である(首長国内の)村における再分配的な実践について議論する。第7章では、ガーナ南部で小王主催の集金パーティーにおいてどのようなやり方で貨幣が集められているのかを検討することで、そこに立ち現れる様々なタイプの集団の多様性と複雑な関係性を明らかにする。
日本、インド、アフリカ、ヨーロッパ、ミクロネシア、メラネシアと、世界各地における再分配の諸相を具体的に描くことにより、貨幣経済の原理が世界中を貫徹する中で、それとは別の原理が、どのような形で機能しているか、また機能しうるのかを問い返す。
目次
序 論:再分配を通じた集団の生成――手続きと複数性に注目して/浜田明範(関西大学)
第一部:再分配をめぐる政治
第1章:誰がボタンを押すのか――フィンランドの緊急通報システムにみる要求/提供のダイナミクス/高橋絵里香(千葉大学)
第2章:再分配制度としての介護保険法とコミュニティの再編――沖縄・離島社会を事例に/加賀谷真梨(新潟大学)
第3章:再分配のアナロジー――インドにおける生モラルと国家制度の重なり合い/田口陽子(日本学術振興会特別研究員)
第二部:集団の生成
第4章:メラネシア人類学における再分配の境界――「集団」と「戦争」をめぐって/里見龍樹(早稲田大学)
第5章:執拗なる共食の実践――ガーナ北部の西ダゴンバ地域における穀物の不足と同居家族の経済関係/友松夕香(日本学術振興会特別研究員)
第6章:再分配を通じた村人のつながりと差異化――ミクロネシア・ポーンペイ島における首長制と住民の帰属意識/河野正治
日本学術振興会特別研究員)
第7章:12月のプランカシ――ガーナ南部において集める/集まるということ/浜田明範(関西大学)
上記内容は本書刊行時のものです。