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評伝フィリップ・ジョンソン
20世紀建築の黒幕
原書: The Man in the GLASS HOUSE; Philip Johnson, Architect of the Modern Century
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年10月30日
- 書店発売日
- 2020年10月30日
- 登録日
- 2020年9月29日
- 最終更新日
- 2020年11月5日
書評掲載情報
2021-01-09 |
毎日新聞
朝刊 評者: 飯島洋一(多摩美術大学教授・建築評論) |
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紹介
今日の建築の姿を決定づけた知られざる黒幕の生涯を描き出す傑作評伝
MoMAの初代キュレーターに就任、世界的な潮流となった建築展を仕掛けた男。
アメリカのヒトラーにならんとした男。
現代美術と建築の世界で知性とカネの力をふるった男。
建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞をはじめて受賞した男。
ミースへの憧れとコンプレックスに引き裂かれていた男。
ドナルド・トランプと協働しアメリカの都市風景を変えた男。
いまだ見学者の途絶えないモダニズム建築のアイコン〈ガラスの家〉の設計者であるフィリップ・ジョンソン。数えきれない称賛の一方で、非難も多い。いわく、建築をデザインの遊びに貶めた、権力に心酔するファシスト、気まぐれな金持ち仲間のお遊び……。
アメリカで最も憎まれ、最も愛された男の規格外で行方しらずの情熱を描く一冊!
目次
日本語版への序文
プロローグ
第一章 先生のお気に入り
第二章 回心
第三章 スタイルの男
第四章 ショー・タイム
第五章 マエストロ
第六章 砂金の二人組
第七章 アメリカの総統
第八章 オヤジ
第九章 二度目の再出発
第十章 信仰と背信
第十一章 杖
第十二章 テラスでカクテルを
第十三章 第三の都市
第十四章 タワーとパワー
第十五章 サークルの長
第十六章 すべては崩れゆき
第十七章 空想の抗えぬ魅力
エピローグ/謝辞/訳者解説
人名索引/註
前書きなど
わたしたちはいま、世界中で、経済危機と不平等、市民の不安、高まる権威主義を経験している。ジョンソンも一九三〇年代、ちょうど同じような時局を生きていた。彼は裕福な若者で、美術館の学芸員としてのキャリアも前途有望なものだった。しかしジョンソンはそのキャリアを捨て、ファシストの政治工作員となる。その後になってようやく建築の専門家へと転向したのである。(略)
ジョンソン自身の建築作品──並外れたものもあればひどい出来のものもある──には、拠り所となっている哲学がほとんどないようにみえる。教条的なモダニストとしてキャリアをスタートさせ、続いてモダニズムを拒否してポストモダニズムを支持し、さらには「デコンストラクティヴィズム」と自ら呼ぶものへ向きを変えたのだった。近代建築が純粋な形態の実践だとすれば、スタイルの変更に何の問題があるだろう?
ニューヨーク近代美術館建築部門のディレクターにして主要な後援者として、ジョンソンは自らの建築ビジョンを公衆や専門家たちに喧伝し、そのような作品を創造する建築家に白羽の矢を立てることができた。そして「スター建築家」なる概念を発明しただけでなく、飛行機で世界を飛び回るスター建築家の支えとなるような制度の形成にも一役買ったのだった。(略)
ジョンソンの最後の大口クライアントは、ニューヨークの不動産開発事業者にしてゴシップ誌の御用達、しかも雑多な建物遍歴を併せ持つ男、ドナルド・トランプだった。お互いがお互いの望むものを持つ二人である。トランプにとってジョンソンは高い社会的価値を得るための手段だった。ジョンソンにとってトランプは注目度の高い仕事の提供者だった。二人は自然に引き寄せられたが、その関係には始まりからして暗雲が垂れ込めていた。トランプはジョンソンの建築的要求に対してほとんど我慢ならなかったし──欲しかったのはジョンソンというブランド・ネームだけなのだ──、ジョンソンはトランプなど俗物だと思っていた。金の話はさておき、彼らのパートナーシップは、ジョンソンが近代建築をその起源からどれほど離れたところへ押しやったかを伝えている。二人が一緒につくった建物群はその薄っぺらさという点で度肝を抜かれる。(「日本語版への序文」より)
上記内容は本書刊行時のものです。