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自由貿易は私たちを幸せにするのか? 上村 雄彦(著) - コモンズ
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自由貿易は私たちを幸せにするのか?

発行:コモンズ
四六判
172ページ
並製
価格 1,500円+税
ISBN
978-4-86187-139-9
Cコード
C0033
一般 単行本 経済・財政・統計

出版社在庫情報
在庫あり
初版年月
2017年2月
書店発売日
登録日
2016年11月11日
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書評掲載情報

2017-03-12 朝日新聞  朝刊
評者: 諸富徹(京都大学教授・経済学)

重版情報

2刷 出来予定日: 2017-03-27
朝日新聞3/12(日)書評 大反響につき

紹介

いま世界中で自由貿易に対する疑問の声が湧き上がっている。
トランプのアメリカ、EU離脱のイギリス……。
自由貿易を推進していくと普通の人びとの暮らしはどうなるのか、そもそも貿易をどう考えたらよいのか。
内外の研究者・NGOリーダーがわかりやすく論じる。

目次

序 章 公正な貿易のルールを創りだす  内田 聖子

1 メガ経済連携協定時代の終わりの始まり?
2 矛盾を生み出し続ける貿易と日本の課題
3 本書の構成

第1章 人びとを幸せにする貿易協定を求めて 首藤 信彦
    ――世界「貿易」の変容とメガ経済連携協定の脅威にどう立ち向かうか

1 メガ経済連携協定の時代
2 貿易の変容と消滅
3 貿易思想の変遷――自由から正義へ
4 経済大国の横暴へ盛り上がる批判
5 貿易における正義の視点
6 グローバル経済における貿易協定に必要な価値
7 人びとを幸せにする貿易協定をもとめて

第2章 自由貿易にNO!と言う欧米の市民社会
メリンダ・セント・ルイス × ローラ・ブルュッヘ × 内田聖子

  大企業がつくる民主主義に反した秘密協定
  アメリカでも期待されていないTPPの経済効果
  グローバルに進む規制緩和
  投資家の利益を守るためのISDS
  多様な人びとの参加

第3章 途上国にとってのメガ経済連携協定 内田 聖子
    ――貧困・開発・人権と貿易はどのように調和できるのか

1 もうひとつの「秘密」交渉
2 日本でまったく注目されないRCEP
3 命をつなぐ医薬品アクセスの危機
4 農民の種子に関する権利が脅かされる
5 高まるISDSへの批判
6 達成できなかった国連ミレニアム開発目標
7 貿易や投資に貧困削減や格差の是正などを埋め込む

第4章 自由貿易で誰が得をし、誰が損をするのか ジョモ・K・スンダラム
    ――「経済効果の」真実

1 アメリカ政府による経済効果の誇大宣伝
2 貿易による経済効果の真実
3 日本とマレーシアの試算
4 誰のためのルールなのか

第5章 多国籍企業をどのように規制するか 上村 雄彦
    ――パナマ文書とグローバル・タックス

1 危機的な地球環境とグローバル格差社会
2 国を凌駕する多国籍企業
3 タックス・ヘイブン――パナマ文書が明らかにしたこと
4 グローバル・タックスの仕組み

あとがき 内田 聖子

前書きなど

    あとがき

 2016年は、貿易や投資のあり方の転換点として歴史に大きく刻まれるかもしれない。
 過去30年間にわたって推進されてきた自由貿易の矛盾と無理が露呈し、メガ経済連携協定は世界各国の人びとからノーを突き付けられた。
 1%の強者によるTPPに強く反対した、アメリカ大統領選挙での国民の政治的意思。環大西洋貿易・投資パートナーシップ協定(TTIP)やカナダEU包括的経済貿易協定(CETA)など地域主権を脅かす協定への、ヨーロッパ市民社会の猛烈な反対運動。また、オーストラリアやカナダなどISDSによって提訴されてきた国は、その経験から投資家優先の自由貿易協定に懐疑的だ。アジア各国でも、医薬品アクセスや貧困削減・格差是正を妨げる自由貿易への批判が高まっている。中南米の小農民の粘り強い反グローバリゼーションの闘いもある。
 こうして、一時は世界中を飲み込む勢いだったメガ経済連携協定は、人びとの抵抗によって破綻の危機を迎えている。では、次に何が起こるのか? 誰もが予測できない現在、私たちは大きな転換点に直面している。
 貿易や投資を完全に否定することはできない。同時に、貿易も経済も、大企業や投資家のためではなく、人びとを幸せにするための営みだ。では、ここまで歪んだ形で、貧困や格差、環境破壊の元凶になっている貿易を、どのように変えていけばいいのだろうか。
 私自身はこうした問題意識でこの数年間、さまざまな活動を行ってきた。 本書の編集者であるコモンズの大江正章さんとともに共同代表を務めるアジア太平洋資料センター(PARC)が設立以来掲げる「日本と世界のつながりを捉え直し、オルタナティブな(もうひとつの)社会を創る」という理念が、その根底にある。
 そうした取り組みのひとつとして2016年6月、PARCは国際シンポジウム「自由貿易は私たちを“幸せ”にするのか?――TPP・TTIP・TiSAが脅かす民主主義・環境・暮らし」を開催した。それは、世界各地で進むメガ経済連携協定を分析し、環境や人権の保護、ジェンダーの平等、貧困・格差の是正などを追求する市民社会からの対案を提示するための、横断的・学際的な取り組みの一歩である。本書はこのシンポジウムにおける国内外の専門家の報告がきっかけとなっている。
 その後の半年間、世界の状況はめまぐるしく変化し続けてきた。本書では、一過性の課題を扱うだけに終わらないように、そして貿易や投資を考える視座を大きく転換するための提言をできるように、努めたつもりである。
 日本ではいまだに「自由貿易イコール農業・工業の関税問題」と認識されている。だが、それは国際市民社会が立ち向かっている問題の本質ではない。本質は、ルールづくりの不正義であり、誰もが当たり前に生きていける地域や国を強者から取り戻すということだ。言い換えれば、自国の狭い利害の保護が、より脆弱な立場に置かれた他国の人びとの健康や人権、環境を破壊していないかという想像力と責任を持つことである。世界中でいま、自由貿易にもっとも従順であり、変革を恐れ、現状維持を求めている国の代表格は、日本だろう。その意味で、私たち自身が変わり、説得力のある対案を提示することが求められている。
 なお、この国際シンポジウムは財団法人庭野平和財団のご支援をいただき、実現することができた。また、大江さんは半年がかりで編集に取り組んでくださった。改めてお礼を申し上げたい。最後に、本書に登場する執筆者はもちろん、巨大貿易協定を草の根の立場からウォッチし、日々情報収集して果敢に批判してきた海外の仲間たち、国内で一緒に活動してきた方々のすべてに感謝を申し上げたい。

  2016年12月27日
内田聖子 

版元から一言

「朝日新聞」書評(2017年3月12日)評者:諸富徹氏(京都大学教授・経済学) 

「政府は、TPPが貿易自由化により国民に成長と雇用増加をもたらすと喧伝してきた。負の影響は農業に限定されるとし、どう保護/解放すべきかにもっぱら焦点が当てられてきた。
 しかし実のところ、農業をはじめとする「モノの貿易」は、TPP協定のほんの一部にすぎない。本書は、全編を通じてTPPの本質が、多国籍企業の投資自由化にあると鋭く指摘する。多国籍企業の投資を妨げる障壁、それは貿易相手国の税制であり、国民の健康、安全、環境を守る規制であり、あるいは独自のビジネス慣行だったりする。これらを除去し、多国籍企業の収益最大化への道を敷き詰めることこそ、TPPの最大の眼目である。
 多国籍企業の権益はTPPを通じて強化される。経済の主戦場は、すでにモノからサービスへ、さらには知的財産などの無形資産に移行している。例えば、医薬品に関する知的所有権保護の強化で多国籍企業の収益は底上げされる一方、それによるコスト増加は、国民の医療費に転嫁される。極めつきは、「ISDS(国家と投資家の間の紛争解決)条項」だ。これは、自国民の健康・安全、あるいは環境保護のため多国籍企業を規制した場合、彼らが「損失を被った」として該当国政府を訴えられる制度だ。本書は、日本ではほとんど報道されてこなかったTPPのこうした本質に、私たちの目を向けさせてくれる。
 本書が採用するタフツ大学経済モデルの示す試算結果は衝撃的だ。日米両国とも、TPPによってマイナス成長、雇用減、そして労働分配率の低下が生じるというのだ。これは、「TPPは多国籍企業のためであって国民のためにならない」と警告する米国のノ―ベル経済学者スティグリッツ氏の主張とも筋道が合う。TPPは経済好影響どころか、負の影響をもたらすのだ。我々は少なくとも、こうした論点を知悉した上でTPPを論じるべきではないだろうか。」
                         

著者プロフィール

上村 雄彦  (ウエムラ タケヒコ)  (

上村 雄彦
横浜市立大学学術院国際総合科学群教授。
大阪大学大学院法学研究科修士課程、カールトン大学大学院国際関係研究科修士課程修了。博士(学術、千葉大学)。
国連食糧農業機関住民参加・環境担当官、千葉大学地球福祉研究センター准教授などを歴任。
グローバル連帯税推進協議会委員、グローバル連帯税フォーラム理事なども務める。
著書に『グローバル・タックスの可能性――持続可能な福祉社会のガヴァナンスをめざして』(ミネルヴァ書房、2009年)『世界の富を再分配する30の方法』(編著、合同出版、2016年)、『不平等をめぐる戦争――グローバル税制は可能か?』(集英社新書、2016年)など。

首藤 信彦  (ストウ ノブヒコ)  (

首藤 信彦
国際政治学者。
伊藤忠商事勤務後、ジョンズホプキンス大学SAIS客員研究員、INSEAD客員教授、東海大学教授、衆議院議員(民主党、3期)などを歴任。
専門は危機管理、予防外交、テロリズム研究。民主党内ではいち早くTPPへの安易な加盟に対して反対を表明し、TPP交渉のウォッチと情報分析、発信を積極的に行ってきた。
著書に『現代のテロリズム』(岩波ブックレット、2001年)、『政治参加で未来を守ろう』(岩波ジュニア新書、2006年、『TPPで自滅する日本型産業社会』(集英社イミダス(ネット版)、2016年)など。

内田 聖子  (ウチダ ショウコ)  (

内田 聖子
NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表。
慶應義塾大学文学部卒業。
出版社勤務などを経て2001年より同センター事務局スタッフ。
自由貿易・投資協定のウォッチと調査、政府や国際機関への提言活動、市民キャンペーンなどを行う。
TPPウォッチの国際NGOネットワークにも所属し、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、マレーシアなどの市民社会とともに活動。
共著に『徹底解剖国家戦略特区――私たちの暮らしはどうなる?』(コモンズ、2014年)など。
※PARCのウェブサイト http://parc-jp.org/index.html
ブログ http://uchidashoko.blogspot.jp/

メリンダ・セント・ルイス  (メリンダ セント ルイス)  (

メリンダ・セント・ルイス
アメリカ・ワシントンに拠点を置く市民団体パブリック・シチズンの「Global Trade Watch」(貿易・投資問題の担当部署)国際キャンペーン責任者。途上国の債務帳消しを求める国際キャンぺーンの「ジュビリーアメリカネットワーク」に所属し、アフリカ・アジア、中南米の債務問題解決の主要人物。
TPPやTTIPに関しても、精力的に情報収集と発信を行ってきた。
パブリック・シチズンは1971年にラルフ・ネーダー氏が設立した消費者団体で、貿易、投資、環境、人権など幅広い分野で国会議員や政府へのロビイ活動やキャンペーン、情報発信を行う。
※パブリック・シチズンのウェブサイト:www.citizen.org/

ローラ・ブリュッヘ  (ローラ リュッヘ)  (

ローラ・ブリュッヘ
ベルギー・ブリュッセルに拠点を置き、EU全域をカヴァーする調査・キャンペーン団体「Corporate Europe Observatory(CEO)」で調査研究とキャンペーンを担当。
専門は貿易問題で、とくにTTIPに関するEUにおける活動のトップランナー。
CEOは自由貿易とそれを牽引する大企業とロビイストたちの動きを日常的にウォッチし、社会正義や環境、貧困削減、人権、民主主義などの観点から批判を行うほか、EU議会や各国の議員への政策提言やロビイ活動も積極的に行っている。
※CEOのウェブサイト:http://corporateeurope.org/

ジョモ・K・スンダラム  (ジョモ ケイ スンダラム)  (

ジョモ・K・スンダラム
経済学者。
マレーシア生まれ、イェール大学、ハーバード大学卒業。
2005~12年に国連経済社会局経済開発部事務局次長を務めたのち、国連食糧農業機関(FAO)経済・社会開発局の事務局次長兼コーディネーターとなる。
2007年に、経済学のフロンティアを切り開いた若手に贈られるワシリー・レオンチェフ賞を受賞。
2008~09年には、第63代国連総会議長を務めたニカラグアのミゲル・デスコト・ブロックマン氏のアドバイザーとしても活躍。
ブロックマン氏は、IMF体制の改革に関する国連専門家で構成する委員会のメンバーでもあった。

上記内容は本書刊行時のものです。