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第4次情報革命と新しいネット社会 蒲生 猛(著) - コモンズ
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第4次情報革命と新しいネット社会 (ダイヨジジョウホウカクメイトアタラシイネットシャカイ) 現代情報ネットワークの歴史的展開 (ゲンダイジョウホウネットワークノレキシテキテンカイ)

コンピュータ
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発行:コモンズ
A5判
180ページ
並製
定価 2,100円+税
ISBN
978-4-86187-118-4   COPY
ISBN 13
9784861871184   COPY
ISBN 10h
4-86187-118-2   COPY
ISBN 10
4861871182   COPY
出版者記号
86187   COPY
Cコード
C1065  
1:教養 0:単行本 65:交通・通信
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2014年10月
書店発売日
登録日
2014年7月7日
最終更新日
2015年1月26日
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紹介

コンピュータの誕生、IT産業の劇的転換、インターネット革命……。
世界を席捲した情報革命の全容を現場での経験と深い分析から考察。
分権型社会は実現するのか、一望監視社会が到来するのか、日本企業は優位性を取り戻せるのか。

目次

現代の情報ネットワーク●その歴史的位置

◆コンピュータの誕生からコンピュータ化の本格展開〈1940年代~70年代〉

1 コンピュータ化の本格展開
2 コンピュータ第1 世代の形成

◆第1のパラダイムシフト●パソコンの登場〈1980年代~90年代前半〉

1 第1のパラダイムシフトは何をもたらしたか
2 新たなシステム展開

◆パソコン世代の台頭とIT 産業の劇的転換

1 コンピュータ第2 世代=パソコン世代の特性
2 IT 産業の劇的な構造転換

◆巨大集中型情報ネットワークシステムの限界と挫折

1 1970 年代後半における世界のコンピュータ化状況
2 ソ連による全国的自動化システム構築の試み●世界最大の
  巨大情報ネットワークシステム構築の限界と挫折

◆20世紀後半の情報革命とは何だったのか

1 新たな産業革命である
2 “管理社会から分権社会へ”誘導する役割を担う
3 “地層を重ねる”ように進行する
4 パソコン世代先駆者が技術・経済・社会システムを変革する
5 集権型の技術・経済・社会システムは主体を委縮させ、イノベーション能力を奪う
6 コンピュータ化は先進諸国に限られて進展
7 日本優位での情報システム化の進展

◆第2のパラダイムシフト=インターネット革命

1 インターネット革命の急進展
2 インターネットがもたらす新たな展開

◆知識資本主義経済システムの成立

1 IT 産業は経済システムでいかなる役割を担っているのか
2 インターネット革命で先行するアメリカ経済の新たな発展
3 「情報」「知識」の定義と経済システムにおける役割
4 知識資本主義経済システムの成立
5 知識資本主義経済システムは安定的か

◆情報ネットワーク社会の新たな展開

1 ネットワークの定義とネットワーク社会の史的推移
2 ネットワーク社会の基本特性と“光と影”
3 ネットワーク社会● 新しい論点の考察
4 ネットワーク世代の有無と政治システムの変容
5 インターネット革命は中国の社会システムを変革しうるのか
6 経済システムへの反作用と政策論的発想の必要性

◆インターネット革命が世界を変える● 新たなグローバル展開の構造

1 新興諸国におけるIT・情報ネットワーク革命の驚異的進展
2 新興諸国のIT・情報ネットワーク革命の共通性と独自性
3 2000 年代における情報ネットワーク革命の世界的広がり
4 2000 年代における先進諸国のIT・情報ネットワーク革命
5 グローバルな論点

◆第4次情報革命の現在と未来●情報ネットワーク社会の歴史的位置

1 現在の情報ネットワーク社会は20 世紀後半の情報革命の
  基本特性をどう変えてきたか
2 日本企業の競争力復活に必要な4つのポイント
3 分権型社会の構築

参考文献
あとがき

終章 第4次情報革命の現在、そして未来―現時点の情報ネットワーク社会の歴史的位置―

前書きなど

序章 現代の情報ネットワーク――その歴史的位置


どこからどこへ

 「われわれはどこから来たのか、われわれは何者か、われわれはどこへ行くのか」
 19世紀末に画家のポール・ゴーギャンは、最後の作品の表題でこう問いかけた。
 この問いかけを20世紀後半からスタートした現代で発すると、さまざまな意味で大きな転換の時代に生きるわれわれの姿が浮かび上がってくる。しかし、転換の時代から先の未来は、必ずしも明るい時代として楽観的に展望できなくなりつつある。
 温暖化の確実な進行に示されている地球環境破壊の進展、当面は石油や原子力に頼らざるをえないエネルギー面からの制約、先進諸国だけでなく中国や韓国でも予想される本格的高齢化社会の到来……。未来は、限りなく成長する可能性を秘めた時代というよりも、数々の制約条件のある閉塞感を帯びた時代として、多くの人びとの眼に写り始めているように思える。
 では、情報ネットワーク化の進展という視点から現代の社会を捉えると、どんな特性が浮き彫りにされてくるのだろうか。今後の情報ネットワーク化の進展によっては、新たな未来を切り拓く可能性を持ちうるのだろうか。本書は、この壮大なテーマへの本格的な挑戦を目的としている。
 そこでまず、その第一歩として、現代における情報革命の進展の構図を簡単にスケッチすることから始めたい。

現代における情報革命の進展

 20世紀後半からの“コンピュータ革命”の進展によって、日米欧の先進工業諸国では企業や公共機関の情報システム化が急速に実現した。そして、20世紀末からの“インターネット革命”は、インターネットを世界の隅々まで張りめぐらし、発展途上諸国まで含めて世界全体の情報ネットワーク化を、これまでにない密度で実現させつつある。
 2000年代末までに、全世界の人口の4分の1にあたる16億人以上がインターネットを利用し、半分以上の40億人がビジネスや日常生活のコミュニケーションツールとして、携帯電話やスマートフォン(多機能携帯電話)を利用している。いまや世界各地で、時空の制約を超えて、無数のオープンなネットワークが形成され、世界を覆いつくそうとしているのだ。
 その結果、世界全体がかつてないほど緊密につながり、情報ネットワーク社会化しつつある。メガトレンドとしては、先進諸国・新興諸国の情報化の範囲が拡大し、さらには情報化を超えた知識経済化が実現する一方で、情報処理や知識創造のツールであるパソコンやソフトウェアの生産は、中国やインドをはじめとする新興諸国での生産へと急速にシフトしつつある。
 また、自ら情報発信するという意味で、アクティブなコミュニケーション空間を成立させるインターネット革命は、既存の国家の枠組みを突破し、自律した個人からなる水平型のソーシャルネットワークに結実していく。中近東におけるジャスミン革命(2010~11年)に象徴的に示されたように、新たな関係性を持った民衆のパワーを結集させた。
 2010年代もなかばに入りつつある現在、生活空間においても、企業・NPO・公共機関さらにはパーソナルな組織や集団においても、情報ネットワーク化の本格的な進展は、政治・経済・文化それぞれの性格を変え、ひいては社会全体の性格をも根本的に変容させている。同時に、こうした社会全体の変容が、情報ネットワーク化を支えるITの技術革新の方向を規定していくのである(なお、ITは“インフォメーション・テクノロジー”の略で、和訳すると“情報技術”となる。以下、本書ではITに統一する)。

第4次情報革命は、いつスタートしたのか

 では、現代の情報ネットワーク化の眼を見張るような進展は、いつからスタートしたのだろうか。そして、現在進行中の情報ネットワーク化――その急速な進展度合いから“情報革命”と名付けることがふさわしい状況――は、そもそも長い人類の歴史において、初めてもたらされた状況なのだろうか。
 この二つの設問のうち前者に対しては、“アメリカのハーバード大学とIBMにより共同開発された世界最初のコンピュータMARK 1が登場した1944年からスタートした”というのが、妥当な答えと言えるだろう。
 後者の設問に対しては、複数の異なった答えが想定される。筆者には、ピーター・F・ドラッカーが提唱している“人類史における4回目の情報革命”という答えが情報化の推移の実態にもっともフィットしているように思える。
 仮に現在進行中の情報革命が4回目のそれであるとするならば、1回目から3回目までの情報革命は、どのような内容で進展していったのだろうか。この問いに答えるべく、長い人類史におけるそれぞれの情報革命を、ドラッカーの歴史認識をふまえ、筆者の見解も加味して、ごく大づかみに概観しておきたい。

人類史における4つの情報革命

 ①第1次情報革命
 最初の情報革命は、紀元前6000~5000年にメソポタミア地方(現在のイラク)で実現した“文字の発明”を起源としていた。文字が発明され、文章がつくられることで、まったく同じ情報の時空間を超えた伝達が可能となる。その結果、社会の組織化の範囲が拡大し、大規模な社会組織の編成が可能となり、古代王国の形成へとつながっていった。

 ②第2次情報革命
 第2の情報革命は、紀元前1300年ごろにギリシャにおいて実現した“本の発明”からスタートした。その後、本は多くの分野で作成されるようになり、すでに紀元前300年ごろには、エジプトのアレキサンドリアの図書館が世界中の本を収集し、70万巻もの蔵書を保有していたと言われている。
 日本においては、712年に最初の本である『古事記』が完成した。759年には、天皇から民衆まであらゆる階層の人びとが詠んだ約4500首の和歌を集めた『万葉集』が完成する。平安時代には、世界最古の長編小説『源氏物語』が紫式部によって著された。その後、中世に至ると本の種類は増え、戦国時代の足利学校では1万7000冊の蔵書を持つまでに至ったという。
 しかし、本の作成は基本的に手作業による写本であったため、数量の拡大については決定的に制約があった。

 ③第3次情報革命
 写本であるがゆえの数の制約は、15世紀中葉のヨーロッパにおけるグーテンベルクの印刷技術の発明によって突破される。印刷革命とも言うべきこの第3次情報革命により、本の大量出版と流通が可能になった。その結果、本の価格は急激に低下し、広範な民衆が買えるようになる。
 この価格革命がもたらした社会への影響は、実に多岐にわたる。その代表例が、多くの民衆が聖書を購入できるようになったことで実現したマルティン・ルターによる宗教改革である。ドイツ語訳聖書をはじめとするルターの本は、ドイツの人口の約1割にあたる100万人に読まれていたと言われている。また、大学や高等教育機関の設立、さらには小説の大量流通によって、民衆の知的水準は急速に向上し、第3次情報革命以前に生きた古い世代には想像できないほど、社会はその様相を根本的に変えていったのである。
 一方、日本における第3次情報革命は、17世紀の江戸時代に京都・江戸・大阪の三大都市で本屋の数が急増することで、本格展開した。
 この第3次情報革命までの歴史において押さえておくべき基本的流れは、以下の2点である。まず、第1次情報革命の主役である“文字”自体が、ブロードキャスト(=同時通報)の機能を備えていたことであり、次に、それを土台に、第2次情報革命の“本の発明”、第3次情報革命の“本の大量流通”により、ブロードキャストの機能が段階的に拡充されていったことである。こうした基本的流れの延長上に、近代以降の新聞・ラジオ・テレビといったマスメディアによるマスコミュニケーションの発達が位置付けられる。

 ④第4次情報革命
 こうして、一方向での膨大な数の不特定多数の受け手に向けて同時に情報伝達がなされるマスメディアが20世紀に至って先進諸国で急速に発展し、いわゆる“大衆社会”が成立する。そして、20世紀を通じて先進社会の基本特性となった大衆社会化状況を根本から変える可能性を秘めているのが、1944年にコンピュータの発明によってスタートした20世紀後半以降の第4次情報革命である。

 以上、図1にもまとめたように、人類の情報化の歴史を俯瞰することで、「1944年にコンピュータの発明で始まる現代の情報革命が、人類史における4回目の情報革命だった」ことが明らかになった。
 それでは、第4次情報革命と言えるほどに画期的な現代の情報ネットワーク化の進展は、どのような方法論で分析し、その全体像を捉え、評価すべきなのだろうか。

現代の情報ネットワーク分析のための3つの方法論

 そのためには、3つの方法論を意識的に取り入れた分析が重要となる。

 方法論1●時間軸に沿った歴史分析
 時間軸に沿って分析し、全体像を歴史的に捉えていく方法論である。この方法論は、ITのイノベーションの激しさに眼を奪われ、不連続性を強調するあまり、過去を全否定するような間違った分析に陥らない点で、きわめて有効だ。
 ITのパラダイムシフトとも言えるイノベーションの直後には、「何もかも変わり、従来のITも情報ネットワークシステムも存在価値がなくなった」かのごとき一面的なドグマが、一部の専門家やメディアによって主張され、猛威をふるう時期がある。こうした間違ったドグマに振り回されないためにも、ITも情報ネットワークシステムも、歴史的に分析することが不可欠となる。なぜなら、それによって、何が不連続で、何が連続しているか、明確にできるからである。

 方法論2●技術システム・経済システム・社会システムの相互作用という視点
 ITの“技術システム”と“経済システム”、さらには政治や文化のシステムをも包摂した“社会システム”という“3つのシステムの相互作用”の視点から分析する方法である。
 20世紀後半からの第4次情報革命におけるITのイノベーションには、眼を見張るものがある。筆者自身も、ITの目くるめくようなイノベーションの凄まじさに眼を奪われすぎ、どうしても「ITの“技術システム”が、“経済システム”“社会システム”を規定する」という、一方向の視点に偏りすぎた単線的な分析に陥りがちになっていた。
 こうした自分自身の反省もふまえ、「“経済システム”“社会システム”が変わることにより、ITの“技術システム”のイノベーション自体の方向を規定する」といった、逆方向に作用する力学にも目配りし、「3つのシステムは常に相互に作用し合う相即的な関係にある」という視点を取り入れて分析していく必要がある。

方法論3●主体(個人・集団)と技術・経済・社会システムの相互作用という視点 一言で表現するならば、個人や集団の主体的働きかけと、技術・経済・社会システムが及ぼす個人や集団への影響との相互作用を分析する方法論である。それは、情報ネットワーク化を推進かつ利用する主体である個人や集団を重視することにより導き出される。
 この相互作用を主体の側に引き寄せて、より深く洞察するならば、複数の選択肢があった場合に、主体がどれを選択するかによって、その後の技術・経済・社会システムは、その内容をがらりと変えていくことになり、当然その後の歴史を異なったものにしていく、という因果律が明らかとなる。安易に歴史にifを使うべきではないが、こうした主体の側の複数の選択肢という視点を持てば、その時々の主体の側の選択した意思決定を、選択しえなかった意思決定をも射程において比較検討し、選択した意思決定のより深い歴史的評価を導き出すことができるように思える。
 さらに世代論の視点を重ね合わせることで、「各世代が、いかにして情報ネットワーク化を推進し、そこで構築された情報ネットワークシステムが、その後の世代にどのような影響を及ぼしていったか」を分析し、この方法論を重層化していきたい。

 以上、人類の情報化の歴史を俯瞰して、コンピュータの発明からスタートした情報化の急進展を第4次情報革命と歴史的に位置付け、その全体像を分析するために、3つの方法論を提示した。次章からは、こうした歴史認識と3つの方法論を駆使して、読者の皆さんとともに、『現代の情報ネットワーク』をテーマとした知的冒険の旅を本格的に始めたい。

版元から一言

情報ネットワークの歴史がグローバルに網羅された、ビジネスパーソン&学生必読の書!

著者プロフィール

蒲生 猛  (ガモウ タケシ)  (

1952年 東京都生まれ。
1975年 早稲田大学理工学部卒業。大手IT企業入社。
以後、営業・企画・マーケティング部門に勤務する。並行して、経済分析研究会のメンバーとなり、情報経済論・情報化社会論を担当し、研究を継続してきた。
共 著=『産業空洞化はどこまで進むか』(日本評論社、2003年)。
主論文=「80年代情報革命の社会的意味」『経済評論』1982年3月号、「情報化の進展とコンピュータ産業」『産業年報1997年版』、「情報革命がもたらす新しい社会」『現代の理論』2011年秋号など。

上記内容は本書刊行時のものです。