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愛媛が生んだ進歩・革新の先覚者
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2023年1月11日
- 登録日
- 2023年1月11日
- 最終更新日
- 2023年1月11日
紹介
日本共産党の県議会議員として、長く政界で活躍した中川悦良は在野の歴史探究者でもあった。本書は彼の遺稿をまとめたもので、文学はいうに及ばず、絵画など芸術面、映画や演劇など大衆娯楽、学術・教育面から軍事畑に至るまで多彩な分野で活躍した愛媛県人たちを紹介している。そして忘れてならないのは、草創期の革命の士の掘り起こしまで試みていることである。本書に描かれた人びとの活動領域は幅ひろく、成しとげた事跡もさまざまであるが、その底に流れるのは、進歩と革新に向かおうとする姿勢だと説く。愛媛の戦後の革新の歴史を語る一冊である。
目次
はじめに ― 矢野達雄
1.愛媛が生んだ進歩・文化の先覚者
(1)水野広徳
(2)桜井忠温
(3)片上 伸
(4)井上正夫
(5)丸山定夫
(6)柳瀬正夢
2.渡辺満三の足跡を追って
(1)ルーツを求め佐川梅太郎に聞く
(2)時計工として上京、労働運動に
(3)日本共産党創立大会に参加
3.『楽天』の先輩たち―重松鶴之助 伊丹万作 中村草田男 伊藤大輔
4.松中詩人・片上伸 ―早稲田大学文学部長・「プロレタリア文学」評論家へ―
5.宮本顕治さんと松山
6.松山の文学的風土
7.二宮敬作のこと―「開明藩主」のもとで農民出身蘭学者
解説 中川悦良の歩みと歴史論考 ― 冨長泰行
初出一覧
前書きなど
誰しも自分の生まれ育った土地には、愛着のあるものだ。他から自分の郷土がほめられるのを聞くと、悪い気はしない。松山の場合は、文学と温泉などがとりあげられることが多い。子規と俳句、道後温泉と松山城は定番だ。しかし愛媛は、政治的には保守がつよいと言われて久しい土地柄だ。
この両側面は、まったくあい対峙する二つの顔なのだろうか、それとも同じ人物を別の角度から見た顔なのだろうか。それとも、この両側面は次元のちがう話だから、両者の関係を問うなどということは野暮な話なのだろうか。なかなかなか結論は出ない。
本書の著者中川悦良さんは日本共産党の県議会議員として、長く政界で活躍された方だ。中川さんが遺された文章をまとめて、この書は出来上がった。本書は、さきの問題にたいする中川さんによるひとつの回答になっていると私は思う。
中川さんはこの中で、文学はいうに及ばず、絵画など芸術面、映画や演劇など大衆娯楽、学術・教育面から軍事畑に至るまで多彩な分野で活躍した愛媛県人たちを紹介している。そして忘れてならないのは、草創期の革命の士の掘り起こしまで試みていることである。本書に描かれた人びとの活動領域は幅ひろく、成しとげた事跡もさまざまであるが、その底に流れるのは、進歩と革新に向かおうとする姿勢だと中川さんは捉えている。
これらの人びとの姿勢に共通し彼らを支えたのは、何なのであろうか。中川さんは、伊予人のもつ共通の気質である「よもだ」精神により所を求めている。では「よもだ」とは何だろうか、これを明解にのべるのはむつかしい。私も小さい頃このことばを耳にしたことはあるが、あまりいいニュアンスでは使われていなかったような記憶がある。これに対し、中川さんの場合は、権力者のゴリ押しに真っ向から反対するのではなく、「ほうよほうよ」とユーモラスに受け流しつつ、しかし反骨の信念を貫く気質であると、積極的にとらえている。
中川さんは、すぐれた政治家であったことはもちろんであるが、在野の歴史探究者でもあった。県内に残る党史ゆかりの場所を、中川さんの案内でめぐり歩いてお話を聞くツアーを企画したこともあった。その時はユーモアも交えつつ、実に楽しそうにお話くださった。
「よもだ」という形容詞は、ありし日の中川さんにこそふさわしいという思いが去来してならない。中川さんの遺稿を一冊の本にするという今回の企画は、近代史文庫代表 冨長泰行氏によって提起された。共産党創立の百年目に、この本がまとめられたのは、ひとつの壮挙であると思う。 (矢野達雄)
上記内容は本書刊行時のものです。