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現代の〈漂海民〉  - めこん
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現代の〈漂海民〉 (ゲンダイノヒョウカイミン) 津波後を生きる海民モーケンの民族誌 (ツナミゴヲイキルカイミンモーケンノミンゾクシ)

社会科学
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発行:めこん
A5判
縦215mm 横153mm 厚さ23mm
重さ 568g
348ページ
上製
定価 5,500円+税
ISBN
978-4-8396-0295-6   COPY
ISBN 13
9784839602956   COPY
ISBN 10h
4-8396-0295-6   COPY
ISBN 10
4839602956   COPY
出版者記号
8396   COPY
Cコード
C3039  
3:専門 0:単行本 39:民族・風習
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2016年2月
書店発売日
登録日
2016年8月26日
最終更新日
2016年8月26日
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紹介

海の民はどのように暮らしているのか

タイ南部のアンダマン海に住む漂海民モーケンの暮らしは、2004年のスマトラ沖地震による津波被災後、どのように変わったのか。
2003年以降、長期にわたって彼らと生活を共にしながらまとめあげた貴重なな民族誌。

目次

序論

第1章 災害の人類学 

  第1節 災害とは何か-自然と文化の複合的現象 
  第2節 災害をめぐる人類学者 
  第3節 災害の人類学の課題と本書の目的-長期的、帰納的、実践的視野 

第2章 漂海民再考 

  第1節 漂海民とは誰か 
  第2節 漂海民研究の展開 
  第3節 海に生きる人びと-海人と海民 


第1部 モーケンの概況

第3章 モーケンが暮らす海域世界 

  第1節 東南アジア大陸部における海洋性  
  第2節 海域世界という枠組み 
  第3節 地域/空間の捉え方 
  第4節 アンダマン海域について 

第4章 モーケンと隣接集団-民族名称の変遷に着目して
 
  第1節 海民の「発見」-ビルマ領域  
  第2節 海民の「再発見」-タイ領域 
  第3節 タイ人による海民研究  
  第4節 海民名称の設定    
  第5節 モーケンの社会集団の編成 


第2部 津波被災前の生活世界


第5章 移動小史-1825年から1970年代までを中心として
 
  第1節 植民地期  
  第2節 第2次世界大戦期-日英軍の戦闘の影響 
  第3節 戦後期  

第6章 定住化するモーケン――スリン諸島を事例に 

  第1節 タイにおける観光開発 
  第2節 アンダマン海域の観光資源化 
  第3節 スリン諸島への陸地定着化 

第7章 国立公園化前後における漁撈状況
 
  第1節 漁撈時期の反転  
  第2節 特殊海産物の採捕内容の変化  
  第3節 過去と現在の比較検討  


第3部 津波をめぐる出来事


第8章 〈災害〉の経験 

  第1節 2004年インド洋津波によるタイの被害 
  第2節 津波と洪水神話ラブーン 
  第3節〈津波〉概念の構築 
  第4節〈津波〉情報の共有  
  第5節 洪水神話から出来事としての〈津波〉へ 

第9章 「悪い家屋」に住む 

  第1節 家船での暮らし 
  第2節 津波被災以前の家屋  
  第3節 津波被災後の家屋と村落 
  第4節 人びとの対応 

第10章 2004年インド洋津波後の潜水漁 

  第1節 モーケンが認識する自然環境 
  第2節 ナマコ漁の実態 
  第3節 フアトーン船 
  第4節 監視の死角と間隙 
  第5節 新しい道具の導入 


第4部 国家との対峙

第11章 国立公園事務所との緊張関係

  第1節 ロボング引き抜き事件
  第2節 国立公園事務所との軋轢   
  第3節 高まる緊張関係 

第12章 境域で生きる 

  第1節 タイ―ビルマ間の越境移動 
  第2節 タイ―インド間の越境移動 

第13章 国民化への階梯 

  第1節 タイ国籍の取得   
  第2節 王女による村落視察    
  第3節 津波を契機とした国家への接近 


結論

第14章 現代を生きる海民-被災社会とのかかわりを考える

  第1節 変化の諸相 
  第2節 国籍を与えられなかった人びと、与えられた人びと   
  第3節 災害の人類学/地域研究へ向けて――津波から10年が過ぎて 

前書きなど

 
【はじめに】から


従来の漂海民に関する人類学的研究では、彼らの船上における生活のあり方に焦点が当てられてきた。あるいは、海上から陸地に定着する過程について論じられることが多かった。その際に人類学者の多くが関心を払っていたのは、漂海民研究に着手した時のわたしのように、陸地を拠点に暮らすわれわれと生活環境が大きく異なる人びととして、あるいは遠く離れた存在としての少数民族であったように思われる。しかし、本書でこれから徐々に明らかにするように、現代社会を生きる漂海民は、陸地に暮らす大規模集団や国家とのかかわりが強くなっており、われわれが生きる場とそう遠くないところで彼らなりの「現在(イマ)」を生きている。本書は、「同時代的」な視座を据えた、2004年インド洋津波に被災したモーケンの、生活の変化についての記録と考察である。とはいえ、津波後の「生活の変化」を明らかにするためには、津波に被災する前の生活が把握されなければならない。そのため本書は、「津波後」という言葉がタイトルにつけられているが、「津波前」のモーケンの生活状況についても詳しく論じることになる。その点が、災害に被災した社会を長期的視点でみようとする、本書の最大の特色となっている。なお、本書で用いられる「津波前」と「津波後」という言葉は、ことわりのない限り、モーケン社会が2004年インド洋津波に被災する前と後のことをあらわしている。「被災前」と「被災後」、「2004年インド洋津波前」と「2004年インド洋津波後」についても同様の意味で使用している。
本書が依拠するデータは、2005年から2012年にかけて断続的に実施した調査に基づいている。これまでに、スリン諸島のモーケンの人びとは数多の外部者と接触し、急激な生活スタイルの変容を経験してきた。ある時は、不均衡な力関係のもとに構造化された制度や秩序に妥協を示し、またある時には、そのような構造下に発現される一方的な圧力に対して交渉や抵抗を試みていた。拘束的な力が働く国民国家の周縁世界において、モーケンがどのように主体的に自らの生活をより良いものにしようとしてきたのか、あるいは被災後の社会を再建してきたのかについて、詳細なデータをもとに論じたい。また本書では、フィールドで得たデータだけでなく文献資料の情報も多く活用することで、海域で暮らしてきたモーケンの船上生活をも具体的に描き、海と対峙する生活で培われてきた彼らの社会文化的な特徴が、観光開発・2004年インド洋津波・国民化という、次々と押し寄せる変化の荒波のなかで、どのようにかたちを変えてきたのか、あるいは維持されてきたのかを考察したいと考えている。

上記内容は本書刊行時のものです。