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食卓から覗く中華世界とイスラーム 砂井紫里(著) - めこん
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食卓から覗く中華世界とイスラーム (ショクタクカラノゾクチュウカセカイトイスラーム) 福建のフィールドノートから (フッケンノフィールドノートカラ)

社会科学
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発行:めこん
A5判
縦210mm 横148mm 厚さ8mm
重さ 203g
112ページ
並製
定価 2,500円+税
ISBN
978-4-8396-0271-0   COPY
ISBN 13
9784839602710   COPY
ISBN 10h
4-8396-0271-9   COPY
ISBN 10
4839602719   COPY
出版者記号
8396   COPY
Cコード
C3036  
3:専門 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2013年3月
書店発売日
登録日
2013年5月16日
最終更新日
2013年5月16日
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紹介

家庭、料理店、モスク、市場……イスラーム教徒の中国人は何を食べているのか。
中国福建省での15年にわたるフィールドワークの集大成です。

目次

第1章 食事を考える枠組み
     ある食卓の風景から
     食事を考える枠組み
第2章 食事の背景
     「熱い食べ物」と「冷たい食べ物」
     イスラームと食
     食材: 菜市場を歩く
     調味料・道具: 台所の風景
第3章 食の風景
     1. 家での食事
       家族の食卓
       朝食
       昼食
       夕食
       間食(零食)
       茶を飲む
誕生日
普渡
婚約と結婚
      2. 信仰の場所での食事
 観音廟
 清真寺: 金曜礼拝
         清真寺: ラマダーン: 毎日の日没後の食事
 清真寺: ラマダーン開けの祭日
         祠堂_ラマダーン開けの祭日
       3.料理店での食事
 誕生日
         清真料理
         ハラール外国料理

前書きなど

【あとがき】から 
 はじめて陳埭を訪れたのは1997年の夏だった。清真寺は無人だった。清真寺にはたどり着けたものの、道に迷って帰れなくなっていた。通りかかった地元の女性が、「バイクで泉州までおくってあげる、とりあえず暑いから涼もうか」と家に連れて行ってくれた。石造りの2階建ての家は夏の蒸し暑さにもかかわらず、ひんやりとしていた。ビーフンをご馳走になって泉州まで送り届けてもらったのだった。
 翌春、2度目に訪れた清真寺で、本書に登場してもらった地元のムスリム青年たちに出逢い、以来10数年のつきあいになる。
 当時は、教長楼に寝泊まりさせてもらった。「明日の朝に食べてね」と友人が教長楼での夕食に残った白ゴハンで、サツマイモの粥をコトコトと煮てくれた。その後ろ姿が今も目に浮かぶ。
 日中は中庭に机と椅子を出してお茶を楽しんだ。誰かの家にお邪魔をしてお茶をしながらテレビを見たり、ごはんを食べたり。夜涼しくなってからは中庭でバドミントンをして汗をかき、観音誕生日には村の舞台で地方劇を見に行き、道端の牛肉煮込みを買って夜食を食べた。
 ちょうど内蒙古や雲南、河南など他省のアラビア語学校や清真寺でのアラビア語学習班に参加した青年たちが、故郷に帰ってきた頃だった。中学を卒業してから働き始めるまでの時間のある時期だったこともあるだろう。1日一緒に遊んだり、話をきかせてもらったり、運がよかったのだと思う。
 当時10代半ばから20代前半だった友人たちも、今は結婚して父となり、母となっている。お世話になった高齢の方の中には既に鬼籍にはいられた方もある。出会った当初の清真寺は、アホンは招聘されておらず、青年たちが自分たちで礼拝をし、食事を作っていた。2000年頃からは、何人か入れ替わったが内陸出身のアホンが常駐するようになり、地元のムスリム青年に加えて、国内の内陸出身の回族やウイグルなどの少数民族のムスリムや外国人ムスリム集まる場へとなっている。
 本書のもとになったのは、1997年から2011年までに断続的に行ってきた陳埭でのフィールドワークである。中華料理に関する膨大な研究蓄積や本、地方や少数民族の「伝統食品」についての本はたくさんあっても、実際に、人びとが日常生活の中で、どんなリズムで具体的に何をどのように食べているのかについては、なかなか知ることができなかった。
 本書では、食卓の場面を1つ1つ切り取って、食事の場ごとに記述してきた。食事の場を構成する要素として、食べ物の内容とともに時間帯や所要時間、人物の背景、セッティングなどを含めるように、できるだけ努力したつもりである。そこで食べる食べ物、交わされることばやふるまいを含めたやりとり。場に注目してみると、1度として同じ食事、同じ味はないのだ。本書は、こうした1回限りの食事行動をいかに描くかの試みでもある。もちろん、本書でとりあげたのは一部の事例であって、網羅的でも、総括的でもない。また情報のばらつきや不十分さがあるのは、ひとえに私が足りなかったからである。ぜひご意見いただけたらと思います。
 食卓をとおして、人であれモノであれ世界とつながっている。加速する人とモノ、そして情報の移動と広がりの中で、ともすれば異なる価値観の対立が注目されるが、地域での暮らしでは、宗教ひとつをとっても仏教、道教、民俗信仰とキリスト教、イスラームといくつもの信仰体系が溶け合い、共存している。
 異なる価値観が、併存したり、混ざり合ったり、すり合わせたり、対立したり、そのやりくりが、食事というごくごく日常的な当たり前の行為からも立ち上がってくる。たとえ断片的であっても、地域や宗教、民族、国籍など背景の異なる人びとがともに食べ(ときに食べない)、ともに暮らす地域のあり方の一端を垣間見てもらえたら嬉しい。

著者プロフィール

砂井紫里  (サイユカリ)  (

早稲田大学イスラーム地域研究機構研究助手。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。文化人類学専攻。1997年から中国福建を中心にアジアの食事と食べ物についてのフィールドワークを行なっている。論文に、「アジアのイスラームへのアプローチ:食文化研究のフィールドから」(村井吉敬編『アジア学のすすめ 第2巻-アジア社会・文化論』弘文堂、2010)、「日常食事とラオス料理」(ラオス地域人類学研究所編『ラオス南部:文化的景観と記憶の探求』雄山閣、2007)など。

上記内容は本書刊行時のものです。