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a:9:{s:12:"shoshi_title";s:19:"メコンを下る ";s:11:"shoshi_isbn";s:17:"978-4-8396-0235-2";s:16:"shoshi_publisher";N;s:11:"description";s:299:"チベット、雲南、ラオス、カンボジア、ベトナム。11年をかけてメコン全流4909キロを下った東京農業大学探検部学生・OBたちの記録。源流発見、未知の急流への挑戦、危機、流域の人々との交流。これぞ本物の冒険記です。";s:6:"author";s:21:"北村昌之(著/文)";s:10:"publishers";s:9:"めこん";s:9:"publisher";N;s:9:"productor";s:9:"めこん";s:12:"release_date";i:1495378800;}

メコンを下る

社会一般 ラノベ

北村昌之(著)
発行:めこん

四六判   672頁  上製
定価 5,500円+税

ISBN 978-4-8396-0235-2   C0030
在庫あり(出版社情報)

奥付の初版発行年月 2017年5月
書店発売日 2017年5月22日
登録日 2017年4月21日

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書評掲載情報

2017-07-16 読売新聞  朝刊
評者:服部文祥(登山家、作家)

紹介

中国青海省、チベット自治区、雲南省、ラオス、カンボジア、ベトナム。11年をかけてメコン全流4909キロを下った東京農業大学探検部学生・OBたちの記録です。
源流発見、未知の急流への挑戦、沈没、山の民・川の民との交流、トラブル、友情。72ページのカラー写真。これぞ本物の冒険記です。

目次

第1章 メコン源頭へ 1994年 
第2章 メコン源流を下る 1999年 
第3章 雲南省、深い浸食の国を下る 2002年 
第4章 チベット自治区の挫折 2004年 
第5章 雲南省、少数民族地帯を下る 2005年 
第6章 ラオス、メコンの流れのような旅 2005年 
第7章 カンボジア、トンレ・トムを下る 2005年 
第8章 ベトナム、九龍を下る 2005年 
あとがき 
メコン・プロジェクトにご協力いただいた企業・団体・個人の方々 
引用文献 

前書きなど

あとがき


 これまでは恐ろしくて計算できなかったが、メコン遠征にかけた費用を合計すると、田舎であれば家が一軒、ベンツなら一台は買えそうだ。大金をはたき、危険を冒し、仕事を投げ捨てて、海外に川下りをしに行く私のことをクレージーな川下り愛好家とイメージした方も多いと思う。 
私自身、「人並みの出世コースには見向きもせずに、いい歳こいてよく遊んだな」とつくづく思う。だからクレージーというところは当たっているのだが、私は川下り好きというより、むしろ探検好きである。
振りかえれば、一九九四年には「二〇世紀最後の地理的発見」と呼ばれるメコンの地理的源頭の発見に成功した。一九九九年にはメコン源流を初降下し、メコン最上流の滝や瀾滄江最大の瀑布を発見した。二〇〇二年には雲南省北部のメコンを初降下し、五〇〇立方メートル/秒を超える水が川幅一一メートルを渦巻いて流れるメコンで最も狭隘な渓谷を発見した。二〇〇四年は、結果的には途中敗退したが、アメリカ、オーストラリア、中国のカヤッカー、ラフターと共にメコンの最難関とも言われるチベット自治区エリアに初挑戦し、未知な急流群の存在を知った。どの遠征も未踏のフィールドであったため、その探検的意義には少なからず満足してきた。
しかし、本書で最もスペースを割いた二〇〇五年の遠征は、二〇〇四年に世界初降下を成し遂げたオーストラリア人カヤッカー、ミック・オーシャの航跡を追っただけだ。一度誰かが下ったという川は、難しさが残っていても、気分的に楽であった。お陰で純粋にウォータースポーツとしての川下りと川旅を楽しむことができた。しかし、この川下りは私がこれまでこだわってきた「探検とは未知なるものを実地に探り調べること。または、危険を冒して実地を探ること」とはかけ離れているし、自分自身が決めたルールである「探検道」なる美学からも外れていた。
私の「探検道」とは「時に互いの命までを分かち合う仲間と、互いに技術や経験などを磨き、学び合いながら、だれもが全く期待しないような、とんでもないものを発見するために、日々鍛錬すること」であった。二番煎じであろうが、三番煎じであろうがこの前段に該当する行為は存在するが、この川下りでは後段の「誰もが全く期待しないような、とんでもない発見」をする可能性は少ない。ミックのように全流「初降下」というタイトルがかかっていればまだしも、いまさら全流降下して何の意味があるのか。自分自身で決めたルールを破ってしまうことに計画段階で苦悩した時期もあった。
しかし、自分のルールを曲げてでも、ここまでのメコン遠征にケジメをつける必要があると思った。この川下りはその先の自分の方向を見据えていく上で、必要な結果が得られるように思えた。
 ラオス北部で竹筏漂流中は「こんな馬鹿らしいこと、もうこんなこと二度とやるもんか。次回はイラワジ川水源探検、ボルネオの野人探索、モンゴル新洞探査、ニューギニアの未開民族との接触、チベット・サルウィン川初降下、マダガスカルの未利用植物資源探索、南極の氷河洞窟探査、ミャンマーの未踏峰山岳探検などやることまだ沢山あるな」と思う毎日であったが、今にしてみればその馬鹿馬鹿しい竹筏生活が妙に懐かしい。
ラオス南部の木舟での川旅はサラリーマンが毎朝、同じ時間に同じ電車に乗って会社に行くように、毎日、同じ時間に、同じ舟に乗って、ただひたすらインドシナ海を目指すという行為に「生活のマンネリ化」と嘆いたこともあった。しかし、その分、流域の人々の生活に触れ、質素な生活ではあるが、珍客をもてなそうとする暖かい家族に出合い、心温まる時を過ごした日々でもあった。
カンボジアは多くの闇が見え隠れし、明日はいったいどうなっているのかと、先の見えない不安を感じながら急いだ川旅であったが、今にして思えばもう少し時間をかけて親しみ、知るべき地域でもあったと反省している。
そして、ゴールとなる南シナ海までを指折り数えながらひたすら向かい風を漕いだベトナム。メコンデルタには農大探検部創部者の一人である向後元彦先輩らのグループが植林したマングローブ林がある。私にとってオヤジのような存在の大先輩であり、尊敬するパイオニアワーカーの一人である向後先輩と縁のある地がゴールとは、またとない区切りになりそうであった。それらのことを含め、一一年間の決算となる南シナ海はさぞかし感動するだろうと思っていた。ゴールしたら舟から海に飛び込み、顔だけ水面に出して青空を見あげながら一服しようと考えていたが、風が強く、その気も失せてしまった。予想外に冷静だった。それでも亀田が撮影した写真には私は満面の笑みで写っている。いかにも満足げである。悩みに悩み抜いて自分のルールを曲げた二〇〇五年の計画であったが後悔はない。むしろ満足している。
今後もこれまで通り探検は続けていくだろうし、メコンに関してもまだまだ興味は尽きない。一言で言えば視野が広がったということだろうか。そして、一一年間にわたり多くの仲間と出会い、多くのことを学ばせてもらったメコンに感謝の気持ちで一杯だ。………

著者プロフィール

北村昌之(キタムラマサユキ)

1969年横浜生まれ。東京農業大学大学院修士課程修了。探検部監督。1990年、インドネシア・イリアンジャヤの洞窟探検を皮切りに、モンゴル、ボルネオ(マレーシア)など、海外の洞窟、大河の源流を探検。1994年よりメコン・プロジェクトに本格的に取り組み、2004年までに日中合同隊、日中米豪合同隊を率いて中国国内のメコン川全流をカヌー・ラフトボートで降下。2005年には中国国境からラオス・カンボジア・ベトナム領のメコン川全流を竹いかだや現地の舟で下った。

上記内容は本書刊行時のものです。