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中世叡尊教団の全国的展開 松尾 剛次(著/文) - 法藏館
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中世叡尊教団の全国的展開 (チュウセイエイゾンキョウダンノゼンコクテキテンカイ)

歴史・地理
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発行:法藏館
A5判
厚さ35mm
重さ 894g
558ページ
定価 12,000円+税
ISBN
978-4-8318-6059-0   COPY
ISBN 13
9784831860590   COPY
ISBN 10h
4-8318-6059-X   COPY
ISBN 10
483186059X   COPY
出版者記号
8318   COPY
Cコード
C3021  
3:専門 0:単行本 21:日本歴史
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2017年2月28日
書店発売日
登録日
2016年12月26日
最終更新日
2017年2月22日
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紹介

本書は、日本中世仏教における戒律の重要性に光を当て、もう一つの鎌倉仏教教団としての叡尊教団の繁栄ぶりから、「中世仏教とは何か」を見直す手がかりとなる。

●概要

3部構成で、奈良西大寺叡尊(1201~90)をいわば開祖とする中世叡尊教団の全国的な展開などを明らかにする。

【第1部】

叡尊・忍性(1217~1303)ら律僧の社会活動に注目して中世仏教を見直し、叡尊教団が、13~14世紀に日本全国で非人救済活動、寺社修造、港湾・河川・道路の維持管理などの社会活動を行っていたことを論じる。

第1部第2章では、日本において病気がいかに考えられてきたのかを、古代から近世まで通じて論じた。とりわけ、癩病と叡尊らとの関わりに注目する。


【第2部】

第1部で論じた活動に関して、史料に即して河内、紀伊、美濃、尾張、越前など本州に所在した末寺に注目する。

河内国は、叡尊教団の拠点である大和国に近く、末寺数が多いこともあり、2章に亘って論じる。とりわけ、真福寺末寺化を通じて鋳物師集団と叡尊教団との関係に光を当てる。

紀伊国における叡尊教団の展開を、従来ほとんど活用されてこなかった西大寺様式の巨大五輪塔などにも注目しつつ論じ、多くの末寺の現地比定を行う。

美濃国に関しては、ベルギー国の新ルーバン大学で著者が新たに見出した小松寺旧蔵大般若経の奥書などを使って美濃国における叡尊教団の展開を論じる。


【第3部】

九州各地に所在した末寺の展開と活動など具体的に明らかにしている。

九州地域の叡尊教団の展開において、宝治2年(1248)年春に忍性らが九州へやってきたのが第1の画期となったと推測される。

第2の画期は、蒙古襲来で、13世紀末に中興された律寺は蒙古襲来退散の祈祷のためと考える。

また、叡尊教団寺院の立地を見ると、港、河口、川の側に所在したものが多い。その地理的位置からも博多大乗寺、筑後浄土寺、日向宝満寺、薩摩泰平寺、豊前宝光明寺といった寺院は、港・川を管理していたと考えられる。ことに、豊前宝光明寺は駅館川の河口に位置し、殺生禁断権を梃子に、駅館川を支配していたことなどを史料的に裏付けている。

本書では、従来使用されてきた明徳2(1391)年の「西大寺末寺帳」のみならず、著者が新たに見いだした15世紀半の「西大寺末寺帳」などの末寺帳も使用した。

15世紀半の「西大寺末寺帳」や、現地調査などを通じて見いだした仏像の胎内銘、五輪塔などの石造遺物などの資料によって、15世紀半ばまで叡尊教団が全国的な展開をしていたことを明らかにする。

目次


凡例

第一部 叡尊教団の社会救済活動

第一章 仏教者の社会救済活動――律僧に注目して
  はじめに  
第一節 死者の救済 
第二節 非人救済 
第三節 全国的な港湾の管理と川・海の支配  
第四節 橋・道路の建設・管理  
第五節 寺社の修造 
おわりに 

第二章 「病」観の変遷――律僧に注目しつつ
  はじめに 
第一節 癩病をめぐる古代の思想  
第二節 癩病をめぐる中世の思想  
第三節 近世における癩病観  
おわりに  

第二部 叡尊教団の本州における展開
 
第一章河内における展開(一)
  はじめに 
第一節 西琳寺  
第一項 惣持の死亡年はいつか  
第二項 西琳寺第二代長老生恵  
第二節 真福寺  
第一項 叡尊による真福寺復興  
第二項 西大寺直末寺としての真福寺  
第三節 中世の泉福寺 
第一項 鎌倉幕府将軍家祈祷所泉福寺  
第二項 西大寺末寺泉福寺 
第四節 そのほかの律寺 
  おわりに  

第二章 河内における展開(二)
  はじめに 
第一節 河内教興寺  
第一項 西大寺末寺内における教興寺の位置  
第二項 教興寺復興と教興寺洪鐘  
第三項 教興寺と垣内墓地  
第二節 河内寛弘寺  
第一項 西大寺直末寺としての寛弘寺  
第二項 寛弘寺墓地五輪塔について 
  おわりに  

第三章 紀伊国における展開
  はじめに 
第一節 金剛寺・利生護国寺・妙楽寺  
第二節 福琳寺・岡輪寺・宝光寺・遍照光院・西福寺ほか
おわりに  

第四章 美濃国における展開
  はじめに  
第一節 山田松蔵寺・大井長康寺・牛藪報恩寺  
第二節 小松寺  
おわりに  

第五章 尾張国における展開
  はじめに  
第一節 釈迦寺  
第二節 円光寺  
第三節 円満寺、安国寺、金勝寺、阿弥陀寺、国分寺  
おわりに  

第六章 越中国における展開
  はじめに  
第一節 放生津禅興寺  
第二節 弘正院(寺)、宝薗寺、聖林寺、大慈院(長徳寺)、円満寺、国分寺  
おわりに  

第三部 叡尊教団の九州における展開
 
第一章 筑前国における展開
  はじめに 
第一節 大乗寺  
第二節 最福寺 
第三節 神宮寺  
第四節 安養院  
おわりに  

第二章 筑後国における展開
  はじめに 
第一節 西大寺末寺としての筑後国浄土寺  
第二節 筑後国浄土寺の役割  
第三節 もう一つの中世「西大寺末寺帳」  
おわりに  

第三章 豊後・豊前国における展開
  はじめに 
第一節 豊後国  
第一項 金剛宝戒寺  
第二項 日田永興寺  
第三項 最勝寺・潮音寺・国分寺・神宮寺  
第二節 豊前国  
第一項 大興善寺  
第二項 大楽寺  
第三項 宝光明寺  
   おわりに  

第四章 肥前・肥後両国における展開
  はじめに  
第一節 肥前国 
第一項 東妙寺  
第二項 宝生寺と法泉寺  
第二節 肥後国  
おわりに  

第五章 南九州における展開
  はじめに 
第一節 薩摩泰平寺  
第一項 西大寺末寺としての泰平寺  
第二項 利生塔寺院泰平寺と五輪塔  
第二節 日向志布志宝満寺  
第一項 西大寺末寺志布志宝満寺の再興と展開  
第二項 宝満寺を支えた人々  
第三項 安東蓮聖・志布志津・宝満寺  
第三節 大隅国正国寺  
第一項 律寺としての正国寺  
第二項 開山円秀とその後の住持  
第三項 元徳二年の創建とは  
  おわりに 

おわりに
あとがき
索引

著者プロフィール

松尾 剛次  (マツオ ケンジ)  (著/文

1954年、長崎県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程を経て、現在、山形大学人文学部教授。東京大学文学博士。専攻は日本宗教史、日本中世史。
主な著書:『鎌倉新仏教の成立』『勧進と破戒の中世史』『日本中世の禅と律』『中世律宗と死の文化』(以上、吉川弘文館)、『中世の都市と非人』『山をおりた親鸞 都をすてた道元』(共に法藏館)、『中世都市鎌倉を歩く』(中公新書)、『忍性』(ミネルヴァ日本評伝選)、『破戒と男色の仏教史』(平凡社新書)、『親鸞再考』(NHK出版)など多数。

上記内容は本書刊行時のものです。