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精神医療90号
少年法改悪に反対する
- 書店発売日
- 2018年4月10日
- 登録日
- 2018年4月3日
- 最終更新日
- 2018年4月3日
紹介
旧少年法(大正少年法)は、18歳未満を少年年齢の上限とし、刑事処分優先主義を前提としていました(検察官先議)。戦後、旧少年法の全面改正により成立した現行少年法は、少年年齢の上限を20歳未満に引き上げ、全件送致主義により検察官先議を家庭裁判所先議へと改めました。その後、1960年代から1970年代にかけて、法務省は旧少年法への回帰を目指す「改正」を試みましたが、多方面からの反対運動の中で、この時点では「改正」されないまま推移してきました。
ところが、いわゆる17歳の犯罪の散発を背景に行なわれた、刑事処分対象年齢の引下げ・重大事件を引き起こした16歳以上の少年の原則送致を含む2000年「改正」以降、2007、2008、2014年に相次いで少年法「改正」が行われました。そして2015年、自民党政調は「成年年齢に関する提言」を発表し、それを受けて法務省は「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」を発足させました。こうして、2017年2月9日、金田法務大臣(当時)は、少年法適用年齢の引き下げや、20歳前後を対象とする保護処分に準ずる新たな処分の導入等を含む「改正」を、法制審議会に諮問したのです。
このような「改正」がなされたならば、児童青年精神医療にも悪影響を及ぼすことは必至です。18~19歳の少年に少年法が適用されなくなれば、虐待・不適切養育や障害・疾患への対応が等閑視されたまま、単なる刑事罰が与えられるだけの結果に陥り、更正にはつながらないでしょう。そして、全件送致主義が崩壊すれば、権限は検察官へと移り、少年の発達という視点自体が顧みられなくなるでしょう。
本特集では、法・医療・社会を架橋する視点から、少年法「改正」の動きを批判的に検証します。
目次
[巻頭言]少年は守られなければならない(木村一優)
[鼎談]少年法適用年齢引下げをめぐって (川村百合+芹沢俊介+[司会]高岡健)
成年年齢引き下げと少年司法(岩本朗)
児童精神医学の観点から「18歳問題」を考える(富田拓)
少年刑法犯の動向と少年法の改正論議――少年法の改正はいま必要なのか?(土井隆義)
少年法適用年齢引き下げに関する一考察(山田麻紗子)
少年法適用年齢について考える――精神鑑定の経験から(木村一優)
少年法適用年齢をめぐる法的・刑事政策的問題 (武内謙治)
[コラム+連載+書評]
[視点―51]障害者の権利に関する条約の今(関口明彦)
[連載 異域の花咲くほとりに6]妄想について(2)(菊池孝)
[連載 神経症への一視角3]神経症から不安障害へ――神経症の軽症うつ病への取り込み(1)(上野豪志)
[連載2]精神現象論の展開(2)(森山公夫)
[コラム]「教える」ことのためらい(近田真美子)
[紹介]『ハイパーアクティブ:ADHDの歴史はどう動いたか』マシュー・スミス著/石坂好樹・花島綾子・村上晶郎訳[星和書店刊](高岡健)
[投稿] 発達障害における「グレーゾーン問題」に関する私見(石井卓)
[編集後記](高岡健)
上記内容は本書刊行時のものです。