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何日君再来物語 中薗 英助(著) - 七つ森書館
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何日君再来物語 (ホーリイチュンツァイライモノガタリ) 歌い継がれる歌 禁じられた時代 (ウタイツガレルウタキンジラレタジダイ)

文芸
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発行:七つ森書館
四六判
372ページ
並製
定価 2,400円+税
ISBN
978-4-8228-7005-8   COPY
ISBN 13
9784822870058   COPY
ISBN 10h
4-8228-7005-7   COPY
ISBN 10
4822870057   COPY
出版者記号
8228   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2012年2月
書店発売日
登録日
2012年1月20日
最終更新日
2013年2月22日
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書評掲載情報

2012-02-26 毎日新聞
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紹介

李香蘭(山口淑子)が唄い、テレサ・テンの甘く切ない声で大ヒットした「何日君再来」。アジアで愛される不滅の大衆歌曲は戦争と中国文化大革命の下、抗日/愛国の歌から黄色歌曲へと蔑まれ、唄うことが禁止されたのであった。歌に隠された謎、背負い続ける悲劇の運命を追うミステリー。

目次

プロローグ  一九七九年 横浜中華街

第1章  帰ってきた「亡国の歌」

第2章  戦争とともに歩んだ歌手

第3章  上海 誰と見る青い月

第4章  我家は東北 夢の国際スター

第5章  よき運命常には有らじ

第6章  謎を解く第一報来る

第7章  孤児・小紅から歌姫・周?3

第8章  風雲渦巻く上海映画界

第9章  明星歌手の運命の岐路

第10章  左派対芸術派の谷間

第11章  愛国的作曲家・劉雪庵の回答

第12章  流行の全盛期襲う苦難

第13章  上海の空に永遠なれ金の笛

第14章  三たび甦る銀河の旅路

エピローグ  一九八七年 上海・北京

初版のあとがき

参考文献
本シリーズのあとがきにかえて「何日君再来」のミステリー
解説 佐高 信

前書きなど

解説 佐高 信

 二〇〇二年春に中薗が亡くなって、届かなかった本がある。中薗が書いた『小説円投機』の取材で会って以来、私は中薗と著書を交換していた。
 しかし、中薗の『過ぎ去らぬ時代 忘れ得ぬ友』(岩波書店)は「届かなかった本」だけに余韻が残る。
 中薗はまさに「余韻の人」だった。
 その「遠人近交録」に中薗は「自らを丸山眞男先生の死後の門人のように自覚する」と書いている。
 中薗は丸山眞男の弟の邦男と同い年で親しかった。邦男は『天皇観の戦後史』等を書いたルポ・ライターである。そんな縁で、吉祥寺の丸山眞男宅へたびたび招かれたが、「なぜか私は出向こうとはせず、岩波書店の会の流れや同じ吉祥寺の埴谷雄高邸で会うという偶然にまかせていて、いま思うと何とも残念」だという。
 そんな中薗のこの本について私は『現代を読む一〇〇冊のノンフィクション』(岩波新書)にこう書いた。
 『密航定期便』や『無国籍者』等の小説で知られる中薗英助は、一九八七年の十一月末に大韓航空機事件が起こった時、一カ月半ほどの間に新聞、テレビ、週刊誌で十五回ものインタビューを受けた。そのときにつけられた肩書が多種多様で、作家、推理作家、スパイ小説家といったものから、香港事情通の作家というものまであった。たしかに若き日に中国に渡って新聞記者となった中薗は、多くの国際スパイ小説を書いている。
 『何日君再来(いつのひきみまたかえる=ホーリーチュンツァイライ)物語』(河出書房新社)は、その中薗が、いまなお日中両国の国民に愛唱される「何日君再来」の歌い手と作詞家、作曲家を求めて八年間も続けた探索の旅のドキュメントである。
 表紙カバーには、チョウシュアン、黎莉莉、山口淑子(李香蘭)、渡辺はま子、そして、テレサ・テン(?麗君)と、この歌を歌った五人の歌姫の写真を並べてあるが、八〇年に中薗が、中国でなぜか日本の戦前の歌が流行しているという新聞記事を見た時には、この歌が日本の歌なのか、それとも中国の歌なのかもわからなかった。
 辛抱強い探索の果てに中国人が作った歌であることがわかったが、作り手と歌い手の消息を求めて旅はなお続く。
 インタビューしようと思った人がすでに亡くなっていたり、中国で、この歌の評価が「亡国の歌」と変わったりして、追跡行はなかなか容易ではなかった。
 よき花常には咲かず
 よき運命常には有らず
 愁い重なれど面に笑浮かべ
 涙溢れてひかれる想い濡らす
 今宵別れてのち
 いつの日君また帰る
 乾しませこの杯を
 召しませこの小皿
 人生幾度酔う日有らんや
 ためろうことなく歓つくさん
 今宵別れてのち
 いつの日君また帰る
 これがテレサ・テンの歌う「何日君再来」の一番である。
 この「君」とはだれのことなのか? 「亡国の歌」と「愛国の歌」を揺れ動く過程で、「君」も変転した。
 ある中国人は中薗にこんな情報も伝える。この歌は音楽映画にそえられたダンス曲のタンゴにすぎなかったけれども、抗日映画の挿入曲に採用されてから、抗日歌の役割を果たした、と。
 しかし、ついに中薗は、この歌がどのようにして作られ、作曲家や歌い手はどのような運命をたどったかを探り当てる。
 これは、ひとつの歌物語に託した波乱の日中関係史である。
 ……

著者プロフィール

中薗 英助  (ナカゾノ エイスケ)  (

福岡県生まれ。北京・邦字紙『東亜新報』の記者などを経て作家に。著作に『夜よシンバルをうち鳴らせ』(福武文庫)、『闇のカーニバル─スパイ・ミステリィへの招待』(日本推理作家協会賞、双葉文庫)、『北京飯店旧館にて』(読売文学賞、講談社現代文庫)他多数。『拉致─知られざる金大中事件』(新潮文庫)は映画「KT」の原作。2012年春、神奈川近代文学館で「中薗英助展」開催。

上記内容は本書刊行時のものです。