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スローでたのしい 有機農業コツの科学 西村 和雄(著) - 七つ森書館
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スローでたのしい 有機農業コツの科学 (スローデタノシイユウキノウギョウコツノカガク) 増補

自然科学
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発行:七つ森書館
四六判
334ページ
並製
定価 1,800円+税
ISBN
978-4-8228-1496-0   COPY
ISBN 13
9784822814960   COPY
ISBN 10h
4-8228-1496-3   COPY
ISBN 10
4822814963   COPY
出版者記号
8228   COPY
Cコード
C2061  
2:実用 0:単行本 61:農林業
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2014年2月
書店発売日
登録日
2014年1月8日
最終更新日
2017年1月16日
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重版情報

3刷 出来予定日: 2016-12-05
2刷 出来予定日: 2014-02-04
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紹介

育土・ボカシ肥・自然観察を大増補!
有機農業40年の経験を積んだ農学博士の集大成。うまくいくコツが解明されます。

目次

第1章 生きている土
  1 土とはなにか
       月には岩屑しかない
       土はどうしてできるか
       土は生きている
       土はつくられる
       肥沃な土とは
       究極は、不耕起をめざしましょう
  2 土の団粒構造をチェック
       団粒構造とは?
       農作業が楽になる
       誰でもできる団粒構造のみわけかた
  3 土を育てるには
       有機物を知ること
       どんな有機物がよいか
       有機物によって分解がちがう
  4 育土――わたしが実行した三つの方法
       はじめの経験
       有機の畑に転換
       景観
       わたしの育土計画
       育土に使うマメ科植物
       クロタラリアとセスバニア以降
       ヘアリーベッチ
       農地の成熟
       造成農地での有機育土(土つくり)
       造成農地での有機育土――その2
       造成農地での有機育土――その3
       育土の補足
       育土のまとめ
       要点としては
  5 有機農業にたいせつな二つの法則
       第1の法則――木は木にかえし、草は草にかえす
       有機物と好き嫌い
       第2の法則――生き物には存在する意味がある
  6 育土の具体策
       草を生かす
       草はなんども刈る
       刈敷きの下は
       草は新鮮な有機物
       牧草を利用する
       鋤きこんではダメ
       刈敷きは、いいことずくめ
       草マルチでやるのはは無理か?
       手のかからない草生栽培
       草生栽培について
       4つの気をつけること
       共栄作物を基本とした間作・混作について
       輪作をする上での工夫
       理想の土の条件は?
       保肥力を高めれば、理想の土にかえることができる
       腐植能力を生かす
       土を育てることは、土壌生物をふやすこと
       育土のための効果的な方法
  7 土が育つまで
       ある農家の例
       落ちこみと減収
       鶏、豚、牛、馬、マメ、イネ
       有機物はいちどに分解しない
       生物が有機物を分解
       遅れは取りもどせるか
       有機物は使いわける
       なによりも有機物
       日本の草
  8 緑肥植物
       マメ科
       イネ科
       緑肥作物の使いかた
       土壌生物の移植方法
  9 ボカシ肥のつくりかたと使いかた(農業者編)
       材料と注意
       つくりかた
       仕込みの方法
       ボカシ肥の使いかた
  10 ボカシ肥のつくりかた(家庭編)――生ごみを材料にする場合
  11 ボカシ肥のつくりかた(だれにでもできる方法)
       はじめに
       材料
       つくりかた
  12 ボカシ肥の補足と注意事項

第2章 植物の栄養
    1 栄養のバランス
       栄養の意味
       水耕栽培と養分
    2 植物の必須元素
      (1) 炭素・酸素・水素
      (2) 窒素
      (3) リン
      (4) カリウム
      (5) マグネシウム
      (6) カルシウム
      (7) イオウ
      (8) 塩素
      (9) 鉄・マンガン・亜鉛・銅・モリブデン
    3 必須元素の欠乏と過剰症状
       症状と診断の仕方
       作物と土壌によって欠乏や過剰の出方はちがう

第3章 作物づくりのコツ
   1 作物をうまく育てるには?
       作物は人となり
       サボテンはしゃべる
       作物は故郷が恋しい
   2 ナス科
       ナ ス
         ふるさと/水やりと施肥/仕立てかたのコツ/切りもどし/季節感
       トマト
         ふるさと/湿気はきらい――水分はひかえめに、養分は薄めに
         育てかたのコツ/養分のカリウムは窒素の二倍必要
       トウガラシ(ピーマン)
         ふるさと/育てかたのコツ
       ジャガイモ
         ふるさと/生育の特徴/芋のできかた/育てかたのコツ
         病気とpH養分はカリウムを肥大期に
   3 ネギ類(ユリ科)
       ネ ギ
         ふるさと/生育の特徴/施肥のコツ/ネギの品種/抽苔(ネギ坊主)
       タマネギ
         ふるさと/生育の特徴/施肥の注意点/タマネギ選びのコツ
       ニ ラ
       ラッキョウ
       ニンニク
   4 アブラナ科
       ダイコン
         ふるさと/間引きのコツ/根の障害の対策
       カ ブ
         ふるさと/生育の特徴/根の障害の対策
       キャベツ
         ふるさと/生育の特徴/じょうずに結球をさせるコツ
         外葉がたいせつ/種のまきどきもだいじ/効能と良品をみわけるコツ
       ハクサイ
         ふるさと/生育の特徴――ハクサイがまくわけ/結球のコツ
         育てやすい土つくりのコツ
       ツケナ類
         ふるさと/生育の特徴/ツケナの種類
   5 ウリ科
       キュウリ
         ふるさと/育て方のコツ/キュウリは疲れやすい
         栄養生長と生殖生長/芽摘みをじょうずにするのがコツ
       カボチャ
         ふるさと/生育の特徴
   6 その他の野菜3種
       ホウレンソウ
         ふるさと/生育の特徴/品種と特性/じょうずな石灰のやりかた
       ニンジン
         ふるさと/育てかたのコツ/根の障害の対策
       イチゴ
         ふるさと/苗の仕立てかた/生育の特徴――受粉
         露地栽培と実のとりかた/完熟イチゴの見わけかた
   7 マメ科
       窒素固定/生育の特徴
       マメと草との競争に打ち勝つには?/マメの分類
       多収と良品をえるコツ
   8 本ものの野菜
       対称性からわかること/調理のしやすさ
       栄養価と味
   9 種の保存方法
       農家から教えてもらった方法/炭酸ガスの効果を利用する
       種の保存方法/注意すること
   10 自然観察が役に立つ
       自然のなかの情報を読む/寒試し

第4章 病気、虫について
   (1) はじめに
   (2) 朝の散歩でまなぶこと
   (3) 病虫害を避けるには
   (4) 耕種法とは
   (5) 虫
       天敵を利用する方法
       フェロモンの利用
       植物を使う方法
       その他
   (6) 病 気
   (7) まとめ

第5章 ぐうたらの独り言
   (1) 有機農業は異端
   (2) ぐうたら百姓のきっかけ
   (3) 自然は有限なのだ
   (4) 現代農業がみすごしているもの
   (5) 土は生きている
   (6) 土がくたびれたら?
   (7) 害虫の見えないミカン園
   (8) 環境保全型農業について
   (9) 「土」の地平
   (10) おわりに

前書きなど

増補版のためのまえがき

 一九九五年(平成七年)一月一七日五時四六分に兵庫県南部と淡路島北端を中心に兵庫県南部地震が発生して大災厄を惹き起こし多くの犠牲者をだしました。また二〇一一年(平成二三年) 三月一一日(金)一四時四六分に、太平洋三陸沖を震源として発生した巨大地震、東北地方太平洋沖地震は東日本大震災を引き起こし、東北から関東にかけての東日本一帯に甚大な被害をもたらしました。
 この二つの大地震はあきらかに、これまで比較的おだやかだった日本列島が、ふたたび大地動乱の時代に入ったことを意味します。これからわが国はさらなる大地震・噴火といった災厄を必ずや受けなければなりません。なのに、この二つの大災厄からわれわれはどれだけの教訓を学んだのでしょうか。多くの犠牲者と家屋・財産の損害が出たにもかかわらず、大部分の人たちは大災厄が自分の身に直接ふりかからなければ、それほどの痛痒を感じていないのかもしれません。
 しかし、二つの地震だけでなく、大災厄は常にわたしたちの傍にひそんでいて、いつふりかかってくるともわからないのですが、まだ大災厄にたいする備え、とくに心の備えができていないように思えてなりません。いま日本中が東京オリンピックの開催に浮かれていますが、どうやら原発事故で汚染された福島の復興は忘れられようとしていますし、福島だけでなく東日本大震災の被害そのものが忘れさられて行きそうな雰囲気です。こうした震災の傷跡を差し置いてオリンピックはないだろう、と思います。むしろ復興はこれからが本腰を入れなければならないときです。
 阪神大震災についてはわたしがまだ大学に勤めていたころに学生諸君に警告したことだったのです。人口が密集する都会の規模は、三〇万人程度が限度であり、大都会に集中することをやめて地方に分散し、発電所や電気・ガス・水道・通信(電話・メール)などの公共財産は、会社経営として営利目的に資するものではない、ということでした。
 先の大戦中にドイツから米国に亡命したシューマッハーは、その著(『スモール・イズ・ビューティフル』講談社学術文庫)におなじことを書いています。「発電所などは大規模な設備をつくらずに、小ぶりにして国土全体に分散することで、リスクを最小限にとどめられる」と述べています。
 こうした「リスク分散型の社会が望ましい」と、思っていたのですが、残念ながらリスクは最大になって原子力発電所の破壊(破損どころではありません)により、恐ろしい放射線をだす放射性元素が野放しになってしまいました。安倍総理がオリンピック委員会で発言した、「福島の事故はコントロールされている」という言葉は、だれもが信用しない、虚偽の言葉として世界中にまかり通ったのです。
 原子核を破壊することで得られたエネルギーはたしかに有用ではありますが、破壊されるときに有害な放射線をだす元素を生成せずに、無害な元素だけにしてエネルギーをとりだすことは、まだできません。また、生成した危険な放射性元素を無害な元素に変換することもできません。たんに原子エネルギーをとりだすというだけの、稚拙な技術にとどまっているだけなのです。その意味ではヒトが生みだした科学技術はまだ幼稚な段階にあるといえます。ましてや危険な放射性元素を一〇万年もの長きにわたって安全に保管する技術があるはずがないのです。「安全・安心」という言葉を聞くたびに感じる虚構、いや空々しさで胸がつまります。
 おなじことは土木技術にもいえます。列島強靭化計画とはいっても、襲いかかる津波の巨大なエネルギーを有効利用することもできないのに、たんに大きな防波堤をつくるだけで食い止めようというのです。こうしてつくられた防波堤は、陸から海に流れ込む表面水を、うまく流れさせるだけにとどまっていて、地下を流れて海に入る伏流水の流れをかんがえてはいません。地下水の流れはみることすらできません。表面水流(河川水)だけをみているに過ぎず、陸から海に流れ込む水量の七割以上が伏流水であり、それらに含まれている養分が海を肥やしているのだということすらわからないままに、たんに地表だけをみて工事をしているだけなのです。もし伏流水を止めてしまうと、それが沿岸部で土砂崩れや、ひいては大きな山体の崩壊をも引き起こす恐れもあるのです。それが地震に伴うとなれば結果はすぐにわかることでしょう。
 わたしたちは上辺をみているに過ぎず、自然を克服したかのような錯覚を起こしているだけで、現在の自然科学技術がもたらした成果が優れたものだと思っていても、それが巨大な自然エネルギーの奔流を食い止めることはできないのだということを謙虚に・率直にみとめなければなりません。

 アダム・スミス(『諸国民の富』)は経済学をまとめました。が、その著書の終章にアダム・スミスは「やがてわが国の繁栄を支えている鉄鉱石と石炭は尽きるだろう。それらの資源が尽きる前にわれわれの子孫に残すべき資源について、いまからかんがえなくてはならない」、そう言い残したのです。こうした資源についての話は一九七二年にローマクラブ(資源・人口・軍備拡張・経済・環境破壊などの全地球的な問題に対処するために設立したシンクタンク)が刊行した「成長の限界」にも受け継がれています。
 しかしこうした将来への危惧は、いつも反対勢力にかき消されてしまいます。それは経済成長を続けることこそが国の隆盛を決めるのだというかんがえかたが、姿形を変えては頭角を現しているからです。マネタリズム、拝金主義、それをどのように呼ぼうとも、彼らのかんがえかたの根底にあるのは「永遠のいま」でしかありません。「永遠のいま」、それを一秒ごとに続けることだけが繁栄への道なのだ。それしかないのです。経済的な繁栄だけが豊かな国をつくってゆくのだという幻想。わが国ではアベノミクスの掛け声に呼応して、紙幣をジャブジャブ増刷しバブル期の姿を彷彿させようとしています。しかし足元をみてみれば中産階級と呼べる家庭が姿を消し、富めるものとそうでない人たちとの格差がどんどん開いてゆき、いつのまにか終身雇用制度が姿を消して、派遣労働が常態化してきた様子をみると、陰に潜むどこかの国の画策が浮かんでくるように思えてなりません。
 こうした動きはいま、国をあげての巨大なうねりとなって襲いかかり、わが国を飲み込もうとしています。それはTPPとグローバリズムという醜悪な黒船。米国は基本的に巨大な農業国です。その農産物を安く売り込むことで相手国の農業生産基盤を破壊し、津波が引くときには自国の農産物価格を引き上げて高く売りつけようとしているみえみえの魂胆です。何食わぬ顔で独善的にグローバリズムを世界中に押し付けてゆく顔の裏に見え隠れする陰惨な姿には、まだJAも気がついてはいません。それどころか高い石油の裏で、シェールガス・シェールオイルを売りつけ、手も足も出ないがんじがらめにしようという魂胆がみえているはずなのですが。
 石油に陰りがみえはじめたころ(ピークオイル:二〇三〇年問題)に、シェールガス・シェールオイルがにわかに脚光を浴びだしたことすら、戦略なのかもしれません。これが脚光を浴びるほどに、資源(採掘可能な地下資源)の枯渇に加速度がつくのでは、と思うのですが。

 わたしが京都市を離れて田舎に住み着いたのが一五年ほど前、それから日本中で過疎化が進み、限界集落がどんどん増えてきました。有機農業を基軸にして、なんとか地域の再生をと思ってはいたのですが、思うようには捗りませんでした。それが京都という風土なのかもしれません。他県ではみられない特異な状況です。
 それはいいとして、いろんなところで、生活基盤としての農産物を自分の手でつくって食べよう。そうおもっている若い方々が一五年の間にずいぶん増えてきました。このかたたちが本来あるべき地方分散型の社会をつくる原動力になってくれると、期待しています。
 本書を改めて読み直してみて、大幅に書き換えなければならないことはさほどありませんでした。むしろ新たに“これだけは書きたい”と思う箇所がありましたので、つぎのように付け加えておきました。
 「第一章 生きている土」には以下の三節を加えました。「4 育土―わたしが実行した三つの方法」「6 育土の具体策」「11 ボカシ肥のつくりかた」。また、「第三章 作物づくりのコツ」では「10 自然観察が役に立つ」を加えました。
 本書が有機農業を実行あるいは新たに実行しようとされているかたがたの参考になれば幸いです。

   二〇一四年一月七日   西村和雄

著者プロフィール

西村 和雄  (ニシムラ カズオ)  (

 1945年、京都市生まれ。京都大学農学部修士課程修了。同大学フィールド科学教育研究センター講師を経て、2007年退職。
 専攻は、植物栄養学、植物地球化学。京都大学農学博士。
 2011年にNPO法人有機農業技術会議理事長職を退任したのをきっかけに、断捨離を決意し、すべての理事長職や役職を退任。著述に専念する。金を蓄積する植物で金鉱脈を探索(NHKテレビ放映)。
 著書に『【新装版】おいしく育てる 菜園づくりコツの科学』『おいしいほんもの 野菜を見分けるコツ百科』(以上、七つ森書館)他。

上記内容は本書刊行時のものです。