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原発スキャンダル 木原 省治(著) - 七つ森書館
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原発スキャンダル (ゲンパツスキャンダル)

社会科学
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発行:七つ森書館
四六判
256ページ
上製
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-8228-1010-8   COPY
ISBN 13
9784822810108   COPY
ISBN 10h
4-8228-1010-0   COPY
ISBN 10
4822810100   COPY
出版者記号
8228   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2010年5月
書店発売日
登録日
2010年4月23日
最終更新日
2010年8月3日
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紹介

佐高信氏推薦!「竹下登と桜内義雄が大ゲンカ、原子力発電をめぐる深い闇を告発したこのドキュメントは恐ろしいまでにおもしろい」。電力会社が原子力発電所を建設するとき、「暗くて陰湿な部分」がつきまとうのだが、豊富な運動経験と緻密な取材で、スキャンダラスな全貌を描き出す。

目次

はじめに

序 章 暗闘の記録を書き留める

第1章 原発誘致で竹下登と桜内義雄が大バトル
    野望に満ちた御三家さん
    竹下登と桜内義雄の誘致合戦
    これが、元祖企業ぐるみ選挙だ!
    原発は「おぞいもんじゃ」
    「鹿島天皇」と呼ばれた人物の暗闘
    「政治力発電所」着工
    闇から闇の原発労働者たち

第2章 お国自慢は大物政治家と天下り
    大物政治家と県庁幹部の天下り
    島根から豊北へと暗躍が続く
    電力会社の社員も原発に反対しています

第3章 無闇やたらにしかける原発立地
    強敵、気高郡連合婦人会
    がむしゃら、手当たり次第の立地工作
    
第4章 陰謀ウズ巻く、上関原発着工
    「上関方式」といわれる原発立地工作⁉
    愛する郷土のために心は一つ
    そして、人間関係の亀裂だけが残った
    陰謀ウズ巻く、上関現地

終 章 豊かな海といのちを売るまい

前書きなど

はじめに

 電力会社が原子力発電所を建設する時、「暗くて陰湿な部分」がつきまとう。
 まず、秘密裏に物事を進める。地域に住む人たちにきちんとした説明をせずに土地のボーリングなどの調査を行い、事が表面化した時は、関係自治体などに建設を申し入れる寸前だったりする。また、土地を購入する時、「原子力発電所を建設しますから」などと説明することはない。観光開発などのダミー会社を使って土地を買い、電力会社に転売する作戦を行う場合が多い。しかし、こういった古典的なやり方は、いずれ住民のわかるところとなり、噂が広まり大きな反対運動が起こる。
 そして、次には地域のボスたちを使って、金をばらまき買収する工作を行う。中国電力が原発建設を策動している地域のボスといわれた人が、原発推進の雑誌インタビューに、「わしに最初に話をしてくりゃあ、きちんと賛成してやったのに。話をもてこんかったから、ヘソを曲げたんじゃ」と答えていた。
 あるいは、住民の、親子、兄弟、親戚関係などの人間関係を十分につかんで事を進める。「飲ませ、食わせ」は、日常的である。そして、原子力発電所建設にむらがって金を儲けようとする政治家や地域のボスが、電力会社の飼い犬のように働く。
 原子力発電がなかったら電気が不足して困るだろう、と言う人がいるが、原子力発電というものは電気を作るのではない。本当の役割は金を生み出し、その金によって政治家たちが自身の政治生命と名声を上げる欲求を満たすものにしか見えないのである。原発予定地域に住む金欲の強い者たちにとっては、この考えは間違いないだろう。
 原子力発電所が建設される町には、突如として「○○山を登る会」とか「○○生け花サークル」といったものが作られる。その運営の金はどこから出ているかは不明だが、会費を徴収するということはない。
 やがて原発建設の手続きが進み、土地買収や漁業補償金が支払われるが、「金の切れ目が縁の切れ目」になったら困るので、電力会社は町に多額の寄付を繰り返す。最後まで「協力」してもらわないと困るからである。こういったお金を考えると、原子力発電所ほど金のかかるものはない。
 一方、原子力発電所が建設されたら、税金を払う必要がなくなるとか、学校の授業料が無料になるという噂が、まことしやかに伝わってくる。逆に、反対したら学校に入学できない、就職ができないといった噂も広がる。人間の弱みにつけ込んだ、巧妙なやり方と言えよう。
 こういったことは、原子力発電所が誘致される全国各地に共通して起こっていることなのである。
 
 僕は、広島に住んでいることから、広島市内に本店を持つ中国電力の動きを、約三二年間にわたって、とくに原子力発電所の建設に潜むスキャンダルを視てきた。
 一言で、中国電力の体質を表現すると、難しいこと、面倒なことは後回し、他人任せとする性格が強い。要するに、無責任体質である。ついでに付け加えると、自らにとって忘れたいこと、伝えたくないことは、若い職員たちに、引き継がないという体質を持っている。当然だろうが、会社は決して一枚岩ではないことを知らされた。もし一枚岩であったなら、僕はこの本は書けなかったと思っている。
 この国に初めて電燈が灯った明治時代から、これまでの電力事業の動きを見ると、国策に翻弄されながら動いてきた。戦後、電力会社は民営化されたが、本質的には国策に大きく影響されながら動いている。
 この本では、僕の住む中国電力に焦点を当てて、主に原発をめぐる暗闘を書いた。
 では、本書の舞台となる中国電力について説明しておこう。
 中国電力株式会社は、中国地方五県と四国の一部(香川県小豆島)に電力を供給しているのが主な仕事の電力会社である。
 全国九電力(沖縄電力を除く)の中では、東京電力や関西電力、中部電力などの大規模電力会社に比べると、資本金にしても発電電力量にしても第六位に位置する、「松竹梅」でいえば「竹」クラスの電力会社といえよう。
 二〇〇九年六月に行われた株主総会に提出された報告書によると、中国電力は本来の電気事業での売上高が一兆七六〇億円、その他の事業などを含めた売上高を含めれば、合計で一兆二八三三億円である。
 グループ企業は、二〇〇九年一月時点では四七社であったが、この年七月にJパワーと中国電力が半分ずつ資本出資した、大崎クールジェン株式会社を設立し四八社となった。中国電力グループとしての事業としては、光インターネット、ケーブルテレビ、不動産、住宅、介護、ガス供給など幅広い分野で仕事をしている。
 資本金は、一八五三億二七六二万円。株主数は一五万一八二九人。しかし、なぜか株式価格はいつも最下位か、そのあたりを低迷している。大株主は、全株式の一三・六パーセントを保有する財団法人山口県振興財団である。参考までに、関西電力は同期の電気事業における売上高は二兆四八七四億円、その他の売上高を含めれば二兆八二三〇億円である。
 中国電力本体の従業員は約一万人であったが、人員削減を進め二〇〇九年一月末には一万人を割り込んだ。しかし、グループ企業を含めると約一万四〇〇〇人。現在の社長である山下隆は、戦後中国電力と名前を変更してからは、八代目の社長になる。
 会社のキーコンセプトは「ENERGIA(エネルギア)」で、「エネルギーがもたらす、あたらしく、あかるく、あたたかい活力のある社会」を意味するのだそうだ。
 ちなみに、原子力発電が占める電源設備構成比は八パーセントで、島根県松江市にある島根原発一号機が四六万キロワット、二号機が八二万キロワットで、現在島根原発三号機一三七万三〇〇〇キロワットを建設中である。二〇一一年一二月の運転開始に向けて工事を進めている。そして、山口県上関では、新規立地をめぐって、暗闘を繰りひろげている。

著者プロフィール

木原 省治  (キハラ ショウジ)  (

1949年広島生まれ。原発はごめんだヒロシマ市民の会代表。広島県原水禁常任理事。中国地方反原発反火電等住民運動市民運動連絡会議事務局長。上関原発止めよう!広島ネットワーク共同代表。

上記内容は本書刊行時のものです。