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現金の呪いーー紙幣をいつ廃止するか
- 書店発売日
- 2017年4月7日
- 登録日
- 2017年3月22日
- 最終更新日
- 2017年3月22日
書評掲載情報
2017-12-30 | 日本経済新聞 朝刊 |
2017-05-21 |
読売新聞
朝刊 評者: 柳川範之(東京大学教授、経済学者) |
2017-05-20 |
日本経済新聞
朝刊 評者: 奥村洋彦(学習院大学名誉教授) |
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紹介
世界的なベストセラー『国家は破綻する 金融危機の800年』(原題:TIME IS DIFFERENT) の共著者であるケネス・ロゴフ・ハーバード大学教授の最新作。原題は、CURSE OF CASH。
直訳すると、「現金の呪い」となるが、その深い意味については、齊藤誠一橋大学大学院教授の解説が詳しい。
ロゴフ教授は「キャッシュレス」社会ではなく、「レスキャッシュ」、つまり現金の少ない社会への移行を説く。ビットコインなどの暗号通貨への移行を想定しているかといえばそうではない。
現行の高額紙幣の廃止による「レスキャッシュ」社会こそ、あまたある経済社会の問題を解消するカギとなる、という。もちろん、ゼロ金利制約をもたらす現金の壁を取り払い、
マイナス金利を大胆に実施できることも大きなプラスとみる。
以下は、ロゴフ教授の日本語版への序文から一部抜粋した。
「現代の先進国でも、現金はいまなお重要な役割を果たしている。
とくに小口の取引をするときやプライバシーを守りたいとき、そして大規模な災害が発生したときには現金
が欠かせない。だが現金は、大規模な脱税や犯罪など、本来の目的以外の用途でも暗躍している。
本書では多くのデータと歴史的事実を引きながら、政策当局は現金の光の部分だけでなく闇の部分にももっと目配りすべきであると説く。
ここでお断りしておきたいのは、筆者が提案するのはあくまで「レスキャッシュ社会」(現金の少ない社会)への移行であって、
けっして「キャッシュレス社会」(現金のない社会)を主張しているわけではないことだ。本文中でも、遠い将来にわたって、仮に中央銀行がデジタル通貨の導入に踏み切っても
なお、物理的な通貨を維持することは必要だと繰り返し主張している。ただし政府は、まっとうな市民に現金の利便性を確保しつつ、地下経済に関与する企業や個人が
大口の現金取引をおいそれとはできないようなシステムを設計する必要がある。
(中略)
言うまでもなく、金融政策は万能ではない。日本の人口問題も、硬直的な移民政策も、金融政策ではいかんともしがたい。
だが日本が長年にわたってデフレに悩まされていること、この問題の解決には徴税効率を高める必要があること、かつIT化が進んでいることを考え合わせれば、
地下経済への現金供給を抑制し税逃れを防止する策を講じるのに、日本はまさに理想的な国と言えよう。レスキャッシュ社会へ移行する方法は一つではないが、
おそらく最もシンプルで、最も非干渉的なやり方は、高額紙幣の段階的廃止であろう。なお段階的とは五~七年かけてゆっくり進めるという意味であり、
まずは一万円札から始めるのがよいだろう。一万円札は、日本の通貨流通高のじつに九〇%以上を占めている。」
目次
日本語版への序文
第1章 本書のテーマと構成
第1部 現金の闇
第2章 貨幣の歴史
第3章 増え続ける現金
第4章 合法的な経済と現金
第5章 地下経済と現金
第6章 通貨発行益(シニョリッジ)
第7章 紙幣の段階的廃止に向けての試案
第2部 マイナス金利
第8章 ゼロ金利制約、量的緩和、フォワード・ガイダンス
第9種 ゼロ金利制約下でほかに打つ手はあるか?
第10章 紙幣廃止以外の方法でマイナス金利は可能か?
第11章 マイナス金利政策は金融の安定を脅かすか?
第12章 信頼、裏切り、ルール・ベースの政策運営からの逸脱
第3部 グローバルな視点、デジタル通貨
第13章 紙幣の廃止に国際協調は必要か?
第14章 デジタル通貨、金
終わりに
解説
紙幣の哲学書を読んで 齊藤誠(一橋大学大学院教授)
上記内容は本書刊行時のものです。