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地べたの戦争 記者に託された体験者の言葉
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年8月11日
- 書店発売日
- 2021年8月20日
- 登録日
- 2021年7月8日
- 最終更新日
- 2021年8月6日
紹介
「今でも赤くうれたグミの木を見ると心が痛みます」
国と国との戦争は、地方に住む人たちを翻弄した。彼らの生活は隅々まで戦争で埋め尽くされ、それぞれの思いも埋もれていった。
家族や恋人への言葉、死を覚悟したものの思い、戦地での壮絶な体験、消せない記憶…。悲しみだけではない。その中にたたずむ一筋の喜びもあった。
戦争が風化する中、今までとは違った伝え方が必要ではないか? そんな思いから、新聞記者たちが紙面や取材ノートをめくり直し、後世に残したい体験者の言葉を掘り起こした。
西日本新聞が地方紙8紙(岩手日報、山形新聞、福井新聞、京都新聞、山陰中央新報、徳島新聞、高知新聞、琉球新報)と連携した企画「言葉を刻む」(2020年度『平和・協同ジャーナリスト基金賞』奨励賞)の書籍化。画家、野見山暁治さんが、装画、巻末の書き下ろしエッセーを担当した。
西日本新聞絵画課に勤務していた長谷川町子さんによる「軍需工場ルポ」を収録。近年、西日本新聞戦時版に掲載されていたことが確認された連載で、戦後に生まれる「サザエさん」を彷彿とさせる挿絵とともに、長谷川さんが見た戦下の日常をつづる。ほかにも、五木寛之さん、松本零士さん、益川敏英さん、土門拳さんら、著名人が記者に語った言葉も掲載している。
目次
2P はじめに
8P 一 生活ー戦争
34P 二 特攻
60P 三 空襲
86P 四 沖縄
105P 記者の思い
114P 五 九州日報、西日本新聞戦時版
116P 長谷川町子 軍需工場ルポ
142P 六 外地
190P 七 原爆
212P 八 生活ー最後
259P 九 野見山暁治
前書きなど
はじめに
風化していく戦争を、どうやって伝えていけばいいのか。
戦後75年の夏を前に、記者たちの葛藤から生まれたのが、戦争体験者の生々しい言葉をコンパクトな形で伝えるアイデアでした。
本書に収めた言葉は2020年、「戦後75年 言葉を刻む」のタイトルで西日本新聞に連載したものが主です。5月末から10月はじめまで計100回。各地で戦争の記憶を報じてきた地方紙にも連携を呼び掛けたところ、岩手日報、山形新聞、福井新聞、京都新聞、山陰中央新報、徳島新聞、高知新聞、琉球新報の8紙が同じスタイルで記事を展開し、お互いに記事交換もしました。
毎夏、私たちは戦争体験者や家族、戦死者の遺族の悲しみ、嘆き、怒り、次の世代に伝えておきたいことを取材し、報じてきました。戦後50年や60年の節目には特集も展開しています。今回、30~40代の記者を中心とした取材班は議論を重ねました。戦争体験者に直接会い、生々しい話を聞く努力をこれからも愚直に続けていくのは当然だが、これまでと同じやり方では「夏だからまた戦争の話か」「気が重いからもういい」と敬遠する人も増えてくるかもしれない。
そこで、本紙の過去記事(アーカイブ)や、戦後70年の時に戦争体験を募った際に届いた読者からの手紙、過去の取材ノートから、印象に残る「言葉」を丁寧に選び抜き、イラストを添え、連載しました。
この本を手にしてくれた若い人や子どもたちへ伝えたいことがあります。
戦場、空襲、特攻、原爆、引き揚げ……。その背景にある出来事について、この本ではあえて説明を加えていません。いつ、どこで、何が起きて、どんな被害があったのか。大人や先生に聞いたり、図書館やインターネットで調べたり、戦争にまつわる資料館や祈念館を訪ねたりして、学びを深めてもらえるとうれしいです。
いまが、これからが戦後であり続け、いつか戦争のない世界を実現するには、何よりもあなたたちの力が必要です。
これまで私たちの取材に応じ、戦争の記憶を語っていただいた方々、書籍化に当たり挿画とエッセーを寄せていただいた画家の野見山暁治さん、本企画に「平和・協同ジャーナリスト基金賞」奨励賞をくださった選考委員の方々、そして志を同じくし、それぞれの土地で戦争を記録し続けてきた8つの地方紙にお礼を申し上げます。ありがとうございました
上記内容は本書刊行時のものです。