書店員向け情報 HELP
世界経済の歴史[第2版]
グローバル経済史入門
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年8月31日
- 書店発売日
- 2020年8月17日
- 登録日
- 2020年7月3日
- 最終更新日
- 2020年8月18日
紹介
世界の経済はどのような軌跡をたどってきたのか。グローバル・ヒストリーなど最新の成果をもとに、欧米・アジアや世界各地域の発展プロセスをバランスよく解説、通史編とテーマ編の二部構成で学ぶ好評の経済史入門、大幅改訂による決定版。
目次
プロローグ なぜ経済史を学ぶのか
I 通史編
第1章 東西文明の興隆
――ローカル・ヒストリーの時代
1. 古代文明の農耕水準
2. 古代地域国家の経済制度
3. 民族移動と経済制度の変質
解説I-1 カール・ポランニーと経済人類学
第2章 東西世界の対決と交流
――ローカル・ヒストリーからインターリージョナル・ヒストリーへ
1. 隋唐王朝の「世界帝国」化
2. イスラームの誕生と拡大
3. ゲルマン人国家とキリスト教社会
4. 東アジア・西アジア・ヨーロッパ諸勢力の対決と交流
解説I-2 マルク・ブロックと社会史
解説I-3 アジア交易圏論
第3章 東西世界の融合
――インターリージョナル・ヒストリーの時代
1. 東の世界の商業発達
2. 西の世界の商業発達
3. アジア近世帝国の時代
4. ヨーロッパ近世王国の時代
解説I-4 フランクのアジアに対する眼差し
解説I-5 フェルナン・ブローデルと全体史
第4章 資本主義の生成と「近代」社会の登場
――ナショナル・ヒストリーの勃興
1. 前近代の市場経済と近代の市場経済
2. 近代国家と資本主義の歴史的前提の東西比較
3. 封建制の崩壊と資本主義の生成
4. 産業革命と「近代」社会の登場
解説I-6 ドッブ-スウィージー論争とプロト工業化論
解説I-7 マックス・ウェーバーと大塚史学
第5章 資本主義による世界の再編成
――ナショナル・ヒストリーからインターナショナル・ヒストリーへ
1. 海を基軸とした経済圏
2. ヨーロッパ・大西洋経済圏
3. 西アジア・インド洋経済圏
4. 東アジア・太平洋経済圏
5. 生産・流通面から見た近代資本主義
解説I-8 ロストウ/クズネッツの経済発展論
解説I-9 ガーシェンクロンとアジアの工業化
解説I-10 カール・マルクスと日本資本主義論争
第6章 資本主義世界経済体制の転回
――インターナショナル・ヒストリーの時代
1. 19世紀末ヨーロッパ大不況とアジアの産業化
2. 世界経済の不均衡と帝国主義
3. 第一次世界大戦後の世界経済
4. 資本主義世界の恐慌とソ連経済の推移
解説I-11 古典的帝国主義論と自由貿易帝国主義論
解説I-12 社会主義計画経済システムの諸特徴
第7章 第二次世界大戦後の経済社会の展開
――インターナショナル・ヒストリーからトランスナショナル・ヒストリーへ
1. 戦後経済体制の確立
2. 高度成長時代の展開と南北・南南格差の拡大
3. 低成長時代の到来と環境問題の表出
4. 21世紀への転換期の世界経済の実相
解説I-13 南北問題
解説I-14 ヨーロッパ統合
II テーマ編
第8章 市場経済の拡張とその限界
――経済・経営活動の世界化
はじめに
1. ヒトの移動と経済圏の拡大
2. モノの移動と交易圏の拡大
3. カネの移動と世界化の限界
おわりに
解説II-1 ジェントルマン資本主義とアジアの資本主義
第9章 信用システムの生成と展開
――経済活動と金融
はじめに
1. 信用貨幣の発展――貨幣取扱業者から銀行へ
2. 中央銀行の生成と金融政策の形成
3. 手形交換制度の生成――預金通貨と信用創造
4. 国際通貨制度の展開
おわりに――変動相場制下の金融肥大化
解説II-2 スーザン・ストレンジのカジノ資本主義論
第10章 市場の発達とその応用
――経営活動の組織化
はじめに
1. 上下関係の強い経営組織
2. 比較的平等な経営組織
3. 経営組織間のネットワーク
おわりに
解説II-3 チャンドラーとシュンペーター
第11章 市場の失敗とその克服
――経済活動の秩序化
はじめに
1. 生産面での経済活動の制約
2. 流通面での経済活動の制約
3. 大量消費と現代社会の環境問題
おわりに
解説II-4 ノースとウィリアムソン
第12章 近現代市場経済の諸問題と国家介入
――経済活動と国家
はじめに
1. 自由主義経済秩序と国家
2. 市場の調整(コーディネーション)と国家
おわりに――規制と規制緩和
解説II-5 ケインズとハイエク
第13章 福祉のコーディネーションと社会経済
――経済活動と福祉社会
はじめに
1. 社会保障の諸領域と諸原則
2. 近代的経済社会の生成と社会福祉――自由主義的経済秩序観と社会福祉
おわりに――社会的共同性と福祉社会の展望
解説II-6 イギリス福祉史研究の諸潮流
解説II-7 アジア社会福祉研究の諸潮流
第14章 経済史認識の展開と現代
はじめに
1. 経済学の歴史への応用と経営史学の誕生
2. アナール派社会経済史から世界システム論へ
3. 現代の社会経済史学界の諸潮流
おわりに――21世紀に入ってからの論点
解説II-8 世界システム論からグローバル・ヒストリーへ
主要参考文献リスト
あとがき
索 引
前書きなど
経済史を学ぶ意義は多数あるが、それらの具体的列挙は控えておこう。本書を学び終えた時、どんな意義があったのかを自分自身で考えてほしい。もっとも、学び始めるにあたり、数々の意義をすべて包み込む究極的な目的は提起しておきたい。私たちが経済史を学ぶのは、現代を理解し、未来について考える力を養うためである。その力を経済史は、自己を相対的に捉える視点の提供によって与えてくれるだろう。いま身の回りにあることはいつでもどこでもそのようにあり続けてきた当然のこと、と思っていては自己を相対化できない。そして、自己相対化ができなければ、現代の理解も、未来の構想もできないのである。経済史は、自分が生きる社会が時間的にも空間的にも当たり前ではないことを気づかせ、何事も正確に深く考える力を涵養するであろう。
私たちは自己の社会を無意識のうちに絶対視しがちである。例えば、「働く」ということが「雇用されて給与を得る」という形態をとっていることを、通常は特殊だとか異様だとは思わない。また例えば、農民が自己の私的所有地で農業を営んでいることを驚異の眼でみることはない。要するに私たちは、自分が慣れ親しんでいる制度や形態とそこから生まれた法意識や価値観に安住している。しかし、そうした態度で現代社会を正確に認識できるだろうか。未来社会について深く考えられるだろうか。仮に、穀物生産の問題点を把握して増産を図るという単純な事例ひとつをとってみても、穀物を作っているのは奴隷主に所有された奴隷か、封建領主の直営地で賦役を果たす農奴か、農業資本家に雇用された賃金労働者か、地主に土地を借りた小作農か、私的所有地を耕作する自作農かによって、問題点も増産計画もすべて異なってくるはずである。
発展途上国支援に赴いた誠実で優秀な農業技師が、サトウキビを栽培するある村で農民の貧困を見かねて収穫増加技術の研究と指導に力を尽くした結果、増収は見事には成功したが、それは地主の収入増加をもたらし、従来以上の収入を得た地主がエビ養殖事業に乗り出したため、サトウキビ栽培の小作農は失業者にな……
[「プロローグ」冒頭より]
上記内容は本書刊行時のものです。