書店員向け情報 HELP
世俗の時代 上
原書: A Secular Age
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年6月20日
- 書店発売日
- 2020年6月11日
- 登録日
- 2020年5月1日
- 最終更新日
- 2021年7月9日
受賞情報
第56回「日本翻訳出版文化賞」
書評掲載情報
2020-12-27 |
読売新聞
朝刊 評者: 苅部直(東京大学教授、政治学者) |
MORE | |
LESS |
重版情報
2刷 | 出来予定日: 2021-07-10 |
MORE | |
LESS |
紹介
近現代の特徴の一つとされる「世俗化」。しかし、人々はさまざまなかたちで信仰や霊性とともに生きている。では、西洋において神信仰はいかにして力を失い、個人の選択肢の一つとなったのか。壮大な歴史的展望のもとに宗教・思想・哲学の曲折に満ちた展開を描き出す記念碑的大著、ついに邦訳。
目次
はじめに
凡 例
序 章
第I部 改革の仕事
第1章 信仰の防波堤
第2章 規律訓練社会の出現
第3章 大いなる脱埋め込み
第4章 近代の社会的想像
第5章 観念論の亡霊
第II部 転換点
第6章 摂理に基づく理神論
第7章 非人格的秩序
第Ⅲ部 ノヴァ・エフェクト
第8章 近代の不安
第9章 時間の暗い深淵
第10章 広がる不信仰の宇宙
第11章 19世紀の軌跡
注
前書きなど
本書は、一九九九年春にエディンバラで行ったギフォード講義に端を発している。その時の演題は「世俗の時代に生きているのか」というものであった。それからかなりの時間が経過し、また著述の範囲が広がっていったのも事実である。一九九九年のこの連続講義は、基本的には本書の第I部から第III部までを網羅するものであった。第IV部と第V部では、その折りに議論したかったいくつかの事柄を扱っている。しかし当時は、それらを適切に扱うだけの時間と能力をもちあわせていなかった(その後の年月の経過はこの点で助けになったと考えている)。
一九九九年の時点から本書はかなりの広がりをみせることになり、その関心の範囲も増大した。しかしその範囲が急激に増大したために、本書の広がりをもってしてもそれに追いつけなかった。それゆえ、いま読者が手にしている本書よりもはるかに大きな著作が、本来は必要とされたはずであった。本書で語ろうとしているのは、近代西洋において通常、「世俗化」(secularization)と呼ばれている現象についての物語である。それによって筆者は、世俗化のプロセスによってしばしば呼び起こされてきた事柄、さらには依然としていまだに不分明ではあるが、このプロセスがやがて行き着くはずの結果を明確化しようと試みている。この課題を適切に成し遂げるためには、より濃密かつ継続的な物語を語らねばならなかったはずである。だが、そのための十分な時間と能力を、筆者はもちあわせていなかったように思う。
本書を手にとった読者には、この著作が一連の「物語と議論」の展開であると考えないようにとお願いしたい。むしろ本書は、相互に関連しあういくつかの論考の集合体であり、各章はそれぞれ個別の主題を扱いながらも相互に光を投じつつ、共通の有意な文脈を提示するものだと理解してほしい。私の願いは、こうした素描を通じて本書のテーゼの要点が立ち現れてくることである。同時にまたそのことを通じて、本書のテーゼのさらなる展開、適用、修正、転換を試みていく際に、読者に何らかの示唆が与えられることを希望している。
この研究課題に取り組むきっかけを与えてくれたエディンバラのギフォード講義委員会の皆様に謝意を表したい。筆者はまた、一九九六年から九八年にかけてアイザック・キラム・フェ……
[「はじめに」冒頭より]
上記内容は本書刊行時のものです。