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移民と徳
日系ブラジル知識人の歴史民族誌
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年2月28日
- 書店発売日
- 2020年3月10日
- 登録日
- 2020年2月12日
- 最終更新日
- 2020年3月17日
紹介
ブラジルへの貢献と移民の成功をともに導いた徳=内面的資質と、それを体現する人々としての日系人は、いかにして生みだされたのか。移民知識人がはたした決定的役割から、日系コロニア構築の100年を超える歴史をとらえ、デカセギや世代交代とともに失われゆくその姿をも映し出す。
目次
凡例
はじめに
第1章 帰還、永住、再移住
――日本帝国主義とブラジル日本移民知識層
はじめに
1 サンパウロにおける初期日本移民
2 出稼ぎ根性と永住主義――移民ジャーナリズムの台頭
3 アリアンサ移住地と知識階級の挿入
4 2つのナショナリズムと帰還のジレンマ
5 再移住論――帝国移民の行為主体性
小括
第2章 移民的徳の誕生
――戦後移住政策と政治的主体としてのブラジル日系人の形成
はじめに
1 勝ち負け闘争から桜組挺身隊へ――「在外帝国臣民」の終焉
2 人口政策としての戦後移住政策
3 山本喜誉司と戦後移民政治の構築
4 ブラジル日本移民の主体構築をめぐる3つの形態
小括
第3章 移民知識人の有機性
――土曜会の知識実践と戦後移民社会の構造変容
はじめに
1 土曜会の形成と雑誌『時代』
2 「移民の体認」――コロニア実態調査
3 ブラジル日本移民史料館の建設
小括
第4章 拡散と凝集のプロジェクト
――日系旅行社と邦字新聞社
はじめに
1 1950~70年代の移民社会の構造変化
2 デカセギ移住と日系旅行社
3 邦字新聞社という社会的プロジェクト
4 「移民社会」の重層性
小括
第5章 徳、記憶、期待
――政治的祭典としての移民百周年祭
はじめに
1 エピタシス――政治的期待が高まるとき
2 記憶をめぐる齟齬
3 徳の祭典
4 届かぬ投げかけとしての行為主体性
小括
第6章 ブラジル日本移民の政治、知識、徳
はじめに
1 移民政治の2つの極
2 移民知識人と従属知
3 徳の主体としての移民
おわりに
補遺 本書の民族誌調査について
注
あとがき
参考文献
図表一覧
索引
前書きなど
衛星写真から見るブラジル・サンパウロ州サンパウロ市は、旧市街のセントロ(Centro)を中心とするコンクリートの高層ビルと赤い屋根の低層建築の広大な集積である。セントロから伸びるいくつかの幹線道路に沿って現在の中心商業地区であるパウリスタ通り(Avenida Paulista)のほうに視線を移すと、多数の灰色や黄色の高層建築と高速道路が都市域を埋め、多くの電波塔がたっているのがわかる。ブラジル第二の都市であるリオデジャネイロ(Rio de Janeiro)が、大西洋に面した砂浜、巨大な岩石、入江、湖、山並みなどが形作る自然の地形によって識別されるのと対称的に、南半球最大の都市である現代のサンパウロは広漠としたコンクリートのグリッドで創られた都市空間を特徴としている。
その旧市街のすぐ南側にリベルダーデ(Liberdade)と呼ばれる小さな区域がある。ここは、二〇世紀初頭に、日本からブラジルにわたった移民たちが商店や事務所を置きはじめた場所で、現在は、日系だけでなく、韓国系や中華系の移民たちのビジネスや文化的活動の中心地にもなっている。ここは「東洋人街」(Bairro Oriental)と呼ばれて……
[「はじめに」冒頭より]
上記内容は本書刊行時のものです。