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パリに吹くBoboの風
「豊かな左派」のフランス政治
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2010年6月
- 書店発売日
- 2010年6月21日
- 登録日
- 2010年5月27日
- 最終更新日
- 2012年6月18日
紹介
2009年まで毎日新聞パリ支局長を務めた著者が、フランスの現代的な政治風土を「ボボ」と呼ばれる“豊かな左派”の視点から読み解く。
目次
まえがき 1
第一章 フランス社会と移民系
郊外暴動勃発 11
「移民系」とは 16
左右政権で貧富の差 21
「宗教・民族問わず」の理念 26
グループ歩行禁止令 28
アラブ側からみたフランス社会 32
不法移民問題 36
ドーバー・エクスプレス 39
第二章 エリート主義
大学生のデモ 47
中流層の反乱 50
仏版「格差社会」 55
平等幻想の矛盾 65
労働倫理の違い 68
助手との契約 72
CPE撤回 75
第三章 大統領選挙
ロワイヤル旋風 79
豪腕サルコジ氏 84
ロワイヤル氏指名 87
「バイル氏触媒役」の構図 91
右傾化鮮明に 97
左派の退潮 99
サルコジ社会党分断策 104
企業家とのコネ 106
大統領の離婚・再婚劇 110
ブリング・ブリング大統領 116
ロワイヤル氏も別離 117
第四章 ボボたち
ドラノエ再選とボボ 121
ボボの実像 125
ボボたちのパリ 131
パリの住宅事情 138
「偽善的」との批判 144
ドラノエ人気衰退 149
第五章 権力集中の構図
国家への厚い信頼 155
大きな政府 162
公務員天国 165
なぜ左派が強いのか 169
原発依存 175
原発事故 179
核実験被爆者 186
仏政府一括認定拒否 188
サルコジ氏のメディア支配 192
ルモンド財政攻防 195
レゼコー売却問題 201
仏政治家のプライバシー 208
プライバシー保護法 210
仏メディアの再生策 213
記者志望者の苦境 222
第六章 多様性への配慮
判決まで被疑者は無罪 227
時効停止 231
欧州最高の出生率 234
仏独共通教科書 236
フランス人と中国人 241
「金正日を治療した」医師 244
GM作物への抵抗 247
ピレネーヒグマ論争 255
ブライユ生誕二百年 263
第七章 フランスと日本
日本ブーム 271
ミシュランガイド 278
シラク氏秘密口座疑惑 281
サルコジ政権の対日観 288
「日本はなぜ核武装しないのか?」 292
「日本は核武装できない」 298
あとがき 302
前書きなど
2007年春の統一地方選でパリのドラノエ市長が再選された時、支持層の中に「ボボ」(ブルジョワ・ボエーム=Bourgeois Boheme=の略称)と呼ばれる人々がいると話題になった。00年ごろからパリやリヨンやボルドーなど都市部に現れた「豊かな左派支持者」だった。豊かだが従来の中産層住宅地でなく、パリなら東部バスチーユ広場周辺や北部モンマルトルなど労働者層が多く、古くからの商店街の続く下町に住み、ボヘミアン的生活を楽しみ、選挙では左派に投じる。文化や環境に強い関心を示し、海外にも目を向ける。ただし、(ここがポイントなのだが)彼らは安定した生活を享受した上で(フランス社会はかなりの就職難のため、高給取りのブルジョワでなくとも、公務員や教師ら職に就いた人はボボとなり得る)環境問題や平等意識を論じ、市場主義経済を批判する。そして誰も自身が(ブルジョワだと認めたくなく)ボボだと言わない。
市場経済の恩恵を受けつつ市場経済を批判する文化人は東京にもいる。吉祥寺や下北沢はさしずめ東京のボボのメッカだろう。ただ、フランス、中でもパリは左派支持層の比率が高く、彼らの好む古い街並みが数多く残っている。都市住民は一定収入を得なければ暮らして行けず、ボボたちの抱える矛盾はある意味で自然ともいえ、彼らの生息地域は予想以上に広いのかも知れない。ボボたちの実態や考えを追うことがパリという街を読み解く鍵にも思われた。本書ではボボを生みだして来たパリやフランス社会の現在を探ってみたい。
版元から一言
直訳すると「金持ちのボヘミアン(自由人)」との意味になる「ボボ」の視点からパリ、そしてフランスを読み解いた書。著者の福井さんは、毎日新聞の記者として中欧、アフリカを渡り歩いた経験をもつだけに、その筆致は理性的かつ鋭い。
上記内容は本書刊行時のものです。