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Emprise(エンプリズ) 後藤 英(著) - スタイルノート
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Emprise(エンプリズ) 現代音楽の系譜から、コンピューター・ミュージック、エレクトロニック・ミュージック、ニュー・メディア・アート、新たなパフォーマンスへの進化

B5判
432ページ
並製
価格 6,000円+税
ISBN
978-4-7998-0148-2
Cコード
C3073
専門 単行本 音楽・舞踊
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月
2016年3月
書店発売日
登録日
2016年2月19日
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書評掲載情報

2016-08-01 サウンド&レコーディング・マガジン  8月号
評者: 編集部

紹介

現代のエレクトリック・ミュージックが、どのような歴史をたどり、どのような技術を使って作られてきたのか。本書では、現代音楽の系譜からはじまり、エレクトリック・ミュージックの歴史や楽器、電子機器などの経緯を総合的に解説する。コンピュータ・ミュージック時代に入ってからの流れ、現場の様子も紹介している。また、コンピュータ・ミュージックの歴史では避けて通れないプログラミング言語、Csoundについての詳細な解説もなされている。著者は、世界的な現代音楽研究所である、フランスのイルカムで教鞭をとりつつ、国際的に制作活動を続けているアーティストであり、その現場の様子などは興味深い。現代アートにおける音楽について詳細に述べられた大著。

目次

Ⅰ 序章
Ⅱ 現代音楽から初期のエレクトロニック・ミュージックへの変遷
Ⅲ 初期エレクトロニック・ミュージックの楽器と歴史
Ⅳ 60 年代以降の現代音楽
Ⅴ エレクトロニック・ミュージックからコンピューター・ミュージックへの変遷とその楽器
Ⅵ コンピューターミュージックについて
Ⅶ 最近の動向―「インターフェースやセンサーによる作曲と演奏、そしてニューメディアによる拡張」
ⅴ 5章補足
ⅵ 6章補足

前書きなど

……
 第二次世界大戦後クラシック音楽から、前衛音楽や実験音楽を含む現代音楽へと分岐し、その進化にともないテープ・ミュージック、エレクトロニック・ミュージック、エレクトロアコースティック・ミュージック、そしてコンピューター・ミュージックへとさらに発展してきた。
 エレクトロニック・ミュージックやコンピューター・ミュージックが始まった当時、機材は個人で所有しにくいものが中心であり、スタジオや研究所での作品制作が主流であった。しかし現在では誰もが当然のように、コンピューター一台で作品制作できるようになった。そうなるまでに多くの人物によって、多大なる時間と労力が費やされていることを忘れてはならない。
 本書ではその経過を、背後の要因などにより生まれた機材や作品、その他の重要な事柄を可能なかぎり紹介、解説していくということに重きを置いている。それらを知ることにより、新たなアイデアのきっかけとなるだろうし、現在自分が直面しているものへの理解を深めることができることは間違いないだろう。
 経過を調べていると、背後にある戦争や社会状況などと深く関わっていたり、ある個人の特別な人生のあり方に起因していたりと、興味深いものが多い。また技術にしても、技術だけのようでいて実はあまりにも人間臭く、それと接すれば接するほど、不思議と人間自体の素晴らしさを感じられるのだ。
 ある作品のアイデアから、とてつもない機材を構築してしまい、それが後に偶然にも大きな影響を及ぼしてしまうものもあったし、またある特別な機材が、思わぬ方法で作品に応用され、それまでになかった美学が生まれたこともあった。
 人間という生き物は、習慣にとらわれやすく、習得してきた知識と比べて物事を判断したがるものであり、それを超えるものに対しては恐怖を抱き、拒絶しようとする性質も多い。新しいものへの寛容な理解は理想であるが、それを実現するには大きな努力が必要となる。また人間は、自らの頭脳と身体を比較して物事を見る傾向を持ち、例えば、古くからあるあらゆる楽器は人間の身体機能、身体能力と大きさに即している。これに反するもの、例えば新たな楽器を開発しようものなら、人間はたちまち嫌悪感を抱くだろう。例えばヒューマノイド・ロボットが歩行したり、人間と握手するのを見て、人間は驚きと興味を抱くのに対して、そのロボットが所有している人工知能で、人間に代わって作曲でもしようものなら、たちまち恐怖を抱いてしまう。時が経ち、慣れてしまえばその恐怖はなぜか容易に忘れてしまうが、その後に出てきた新しいものに対しては、同じように嫌悪感を抱く。新しいかどうかということより、習慣との比較であり、人間は常に主観的に判断するものなのである。
 これはいつの時代、どんな文化でも、程度の差はあるにしても変わることはないだろう。ことさらそのようなものから出てきた作品に対する理解は難しいものとなろう。その無理解は、質の悪い作品と同等レベルで扱うことによって、より強く拒絶されるという結果を生んでしまう。しかしこれと矛盾するような傾向もある。まず人間は飽きやすく、一つのことを長く続けていられない傾向があり、ここでいうと、新しいものは理解したがらないが、同じものをいつまでも見聞きしていたくはないということだ。さらに人間はエゴが強い。理性としての社会的協調性は学習できるとしても、個人の防衛本能は自身のエゴと十分に結びついており、それは脳の深い所に生物学的に備わっているものである。社会の中で生き延びるためには、人と協調しながらも、個人を守りつつ何らかの形で主張しなければ本能的にやっていけないのだ。そのもう少しばかり強くなったものが、人と異なる個人の考えや、創造したものの優越性や特殊性を誇示するという現象だ。別の見方をすれば結果としての新たなものの創造とは言え、これまで恐怖感を抱いていたものも所詮このようなものであると考えることもできるだろう。
 新しいものを嫌いながら新しいものを欲する。その繰り返しが一直線上に並べられ、それが歴史となる。そしてそれはアートでもある。現代音楽、エレクトロニック・ミュージック、コンピューター・ミュージックの変遷を比べても、人間の本質と別物であるとは到底言いきれない。そのような現象を観察するのは本書のような文献であり、必然的に文章として再考することになったのである。……

版元から一言

本書は現代エレクトリック・ミュージック発展の歴史をロマン派のクラシック音楽時代からたどり、最新の現代アート研究機関などの紹介などまで含めた本です。さらに、MIDI規格の技術的な紹介、さらにはCsoundを使ったサウンド・シンセシスの実践に関する詳細な情報は、他に類を見ない貴重な資料となるでしょう。また、フランスのIRCAMやオランダのSTEIMなどの研究所の紹介は貴重なものといえます。
第1章は本書全般の解説、第2章は現代音楽へのイントロダクションで、後期ロマン派から戦後の現代音楽、テープ・ミュージック、ミュージック・コンクレート、エレクトロニック・ミュージックなどへの発展した背景が解説されています。第3章は初期エレクトロニック・ミュージックの楽器と歴史について述べ、第4章は1960年代以降の現代音楽について、第5章では、初期のエレクトロニック・ミュージックとコンピューター・ミュージックについて、第6章ではヨーロッパにおけるコンピューター・ミュージックのスタジオ・レポートが書かれています。第7章ではインターフェースやセンサーによる作曲と演奏、ニューメディアによる拡張、現代音楽との関わりなどに触れています。また、最後に、第5章の補足としてMIDIに関する技術的な解説を、第6章の補足としてCsoundの解説が収載されています。Csoundは、コンピューター・ミュージックの歴史において避けることができないプログラムで、近年のコンピューター・ミュージックの発展が、より具体的に理解できるはずです。
パリを中心にヨーロッパ各地、さらにはアメリカでも活躍する著者が、本人の言葉で著した内容は、欧米の先端ニューメディアの現状を現す言葉とも言えます。本書は古びることのない、エレクトリック・ミュージックの詳細を伝える基本資料となることでしょう。

「エレクトロニック・ミュージックの歴史を後期ロマン派から紐解き、IRCAMやSTEIMなどの研究所レポート、さらにはCsoundを使ってのサウンド・シンセシス実践まで、フランス在住の著者が自身の見聞によりまとめ上げた、新しい音楽の創造を志す者が寄って立つべき、そして超えていくべきバイブル。」サウンド&レコーディング・マガジン編集人 國崎晋

「この本の中で私の仕事に関して詳細に取り扱われていることはとても名誉なことです。これらの解説は、私の音楽の詳細な分析であり、また私の音楽の本質を述べています。」ディーター・シュネーベル(ドイツ、作曲家)

著者プロフィール

後藤 英  (ゴトウ スグル)  (

作曲家、ニューメディア・アーティスト。国際的に評価されており世界活地で活躍。フランス語、英語、ドイツ語、日本語の4カ国語を巧みにこなし、世界中を斬新で刺激的な作品で新たなテクノロジーと関連させて発表している。フランス、パリにあるポンピドゥー・センターのイルカム招待作曲家、研究員、ボルドー芸術大学准教授。

上記内容は本書刊行時のものです。