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デンマークの教育を支える「声の文化」
オラリティに根ざした教育理念
- 書店発売日
- 2016年12月6日
- 登録日
- 2016年11月5日
- 最終更新日
- 2016年11月17日
紹介
デンマークと言えば、何をイメージされるだろうか。アンデルセン、バイキング、レゴ、福祉、水力発電などに加え、近年ではデザインやICT(情報通信技術)の分野で先端を行くことでも知られる。直近では、二〇一六年の国連「世界幸福度調査」で一位となったことで注目されている。本書は、この「世界で最も幸福な国」の教育を支えてきたものは何かについて、歴史的教育理念と教育現場の視察をもとに考察したものである。
デンマークが現在のような国になった背景には、二〇〇年前のある人物が大きく影響を与えている。牧師であり、哲学者、教育者、そして政治家でもあったN・F・S・グルントヴィだ。グルントヴィはデンマークを愛し、国民の幸福を願い、「生きた言葉による対話と相互作用」という理念を唱えた。その理念が、今日の教育現場にもオラリティ(声の文化)として息づいていると考えられる。オラリティはリテラシー(活字の文化)に対する概念で、想像力や共同性に大きく影響すると言われている。
本書では、このグルントヴィの理念を基礎としたデンマークの「声の文化」について、できるだけ分かりやすく記述した。そして、それが教育理念としてどのように具現化しているかを、現地の学校における授業の様子や関係者へのインタビューを交えて紹介する。現場の雰囲気を伝える写真もできるだけ多く掲載した。
国際競争のなかで教育改革を続け、「世界一幸福な国」になったデンマークだが、慢心はない。大人たちは子どもたちの幸福のために何が必要か、常に真剣に問い続けている。その核心には、オラリティ文化における「生きた言葉での対話」があるのだ。読み終えて、「日本でもこういう教育ができるはずだ!」という思いを持っていただければ幸いである。(こだま・たまみ)
上記内容は本書刊行時のものです。