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震災復興と地域産業 3
生産・生活・安全を支える「道の駅」
- 書店発売日
- 2013年6月25日
- 登録日
- 2015年8月13日
- 最終更新日
- 2015年8月13日
紹介
東北はじめ全国の農山漁村では、東日本大震災の前から、地域資源を活かした取り組みを深めつつあった。その拠点として、中心的な役割を担っていたのが「道の駅」である。地域産業振興の拠点、人びとの交流の拠点として、地域に根差しながら進化を遂げてきた。
道の駅が誕生したのは1993年のことであり、今年でちょうど20年目を迎える。その数は右上がりに増え続け、2013年3月末時点で全国1005カ所にのぼる。その間、各地の道の駅は、地域ならではの産品を掘り起こし、販売することを通じて、「地域の顔」へと発展を遂げた。土日・休日ともなれば、駐車場に車があふれかえる道の駅も少なくない。もはや、道の駅は通過点ではなく、目的地となりつつあった。
東日本大震災では、防災拠点としての役目を果たしたことが注目されよう。三月のあの晩冬の闇の夜、被災地の道の駅では多くの住民が暖をとった。食料品や毛布なども提供された。断水状況下でトイレを開放し、スタッフたちが手作業で処理に当たったケースも報告されている。
通常、道の駅は避難所としての指定を受けていない。しかしながら、あの状況下では、一時避難所までたどりつくことのできない人びとがどれほどいたことか。駅長やスタッフたちの柔軟な対応により、住民を救った道の駅も少なくないのである。
そして道の駅は震災後も、地域の拠点として機能し続けた。道路情報だけでなく、住民たちの安否情報を蓄積、情報発信していく。被災者に寄り添いながら、刻々と変わるニーズにも柔軟に対応していった。避難者向けに、食料品だけでなく下着や長靴等の日用品も揃えた。ボランティアや自衛隊、建設関係者が立ち寄ることが増えれば、温かい食事を提供するなど、フル稼働で対応した。さらに営業再開後は、「産業復興の拠点」として重要な役割を担っている。
震災前から人口減少、超高齢化が進んでいた東北地方で、道の駅は地域の新たな可能性を導く存在としてさらなる進化を遂げている。休憩機能や地域の連携機能を超えた「その先」を、被災地の道の駅の奮闘記から読みとっていただければ幸いである。(まつなが・けいこ)
上記内容は本書刊行時のものです。