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西郷隆盛はなぜ犬を連れているのか 仁科 邦男(著/文) - 草思社
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西郷隆盛はなぜ犬を連れているのか 西郷どん愛犬史

発行:草思社
四六判
288ページ
定価 1,500円+税
ISBN
9784794223128
Cコード
C0095
一般 単行本 日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2017年11月28日
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書評掲載情報

2018-01-07 朝日新聞  朝刊
評者: ペリー荻野(コラムニスト)

紹介

上野公園の西郷隆盛の銅像が犬を連れていることから、
「西郷といえば、犬」というイメージは、一般によく知られている。
だが、西郷が「異常なほどの犬好き」であったことは、あまり知られていない。

幕末京都の祇園の茶屋で、伊藤博文、木戸孝允などの長州勢が
夜中まで芸者をはべらせ、歓を尽くす中、
西郷ひとりは、芸者には目もくれず、愛犬と鰻飯。食べ終えたら、即帰宅。犬にしか興味がないのだ。
また、戊辰戦争のさなかに、ささっと鹿児島に帰り、犬を引き連れ、狩り、温泉ざんまい。
明治7年には、鹿児島・指宿(いぶすき)の鰻温泉に犬13匹を連れて、温泉旅行(犬最多記録)。
そして、西南戦争には、あろうことか、犬連れ出陣。
熊本、宮崎と撤退を続け、味方の兵士が次々と銃弾に倒れていく中、
西郷は相も変わらず、犬を連れ、狩りにいそしんでいた。

なぜそれほどまでに、犬から離れられなかったのか──

西郷は、維新最大の立役者であるにもかかわらず、
明治政府の中で、目立った仕事をしていない。
明治6年の征韓論争に敗れ、鹿児島に帰った後の動きも、あまり知られていない。
そして、なぜ西南戦争を起こしてしまったのかも、あまり知られていない。
多くの謎に包まれた男なのである。

西郷本は世の中にあまたあれど、西郷の人格を尊ぶものなどが中心で、
「西郷の謎」を真に明らかにした本は、見当たらない。

西郷とは何者か、それは、彼の業績を追っても見えてはこない。
彼がこよなく愛した犬との歩みをたどってこそ、西郷が見えてくるのである。

西郷は犬と一緒にいるとき、素の自分でいられた。
犬との歩みから、
西郷が「その時、何を思っていたのか」が鮮明に見えてくるのである。

本書の著者、仁科邦男氏は
犬関連史料の収集を40年も続けている、唯一無二の「犬の歴史家」である。
初の一般書「犬の伊勢参り」(平凡社新書)で脚光を浴び、
弊社刊「犬たちの明治維新 ポチの誕生」でもヒットを飛ばした。
その著者の最新刊が、
本書「西郷隆盛はなぜ犬を連れているのか 西郷どん愛犬史」である。

あまたある西郷本とは一線を画す、
西郷の「こころ」に肉迫できる希有な書である。

目次

はじめに
戦い終わって犬三匹  


第一章 
犬と生きる喜びを知った奄美大島時代

1 藩の圧政に心痛める
幕府の追及を恐れ「けとう人の島」へ
薩摩藩の資金源──奄美の黒砂糖 

2 犬連れ猟で気晴らし
猪狩りで失敗続き 
歓喜の桜田門外の変 

3 犬との生活 
奄美の犬たちの食料 
アマミノクロウサギ狩り 
犬を連れて、いざ鹿児島へ 


第二章 
犬と成した幕末維新  
 
1 貧しかった西郷家 
犬二匹と二百両の借金 
西郷家の財産事情 

2 坂本龍馬は犬を見たか 
龍馬と犬と、西郷邸の雨漏り 
京都西郷邸の犬と、寺田屋の犬 
龍馬夫妻、西郷の狩り場に新婚旅行 

3 犬連れの京都、祇園 
西郷はなぜ大久保を狩りに誘ったか 
祗園の茶屋に連れて行ったのは、蘭犬「寅」か 
西郷をもてなした名妓は「君竜」か「君尾」か 

4 戊辰戦争期の西郷と犬 
「度量が狭い」か「太っ腹」か、食い違う西郷評 
戊辰戦争をよそに鹿児島で長湯治 
坊主頭で犬連れ温泉旅行 
廃仏毀釈したらどうなるか、犬連れで下調査 


第三章 
明治初年、
犬と狩りと温泉ざんまい  

1 日当山温泉に家族旅行 
奄美に残してきた菊次郎と菊子を引き取る 
家族、親類、犬と大温泉旅行 

2 犬連れの狩人、西郷隆盛 
狩りを通じて庶民にとけ込む 
優秀な猟犬が欲しくてたまらない 

3 犬に食わせるための鰻の蒲焼 
仰天の高額紙幣を黙って置いていく 
児孫のために美田を買わず 


第四章 
官職を辞し、
故郷で犬との日々  

1 兎狩りと温泉ざんまい 
征韓論争から身を引き、下野 
犬十三匹と鰻温泉 
犬連れ温泉の旅、三カ月 

2 私学校設立 
私学校と農地開墾 
宮崎の白鳥温泉への旅 

3 庄内からの来訪者 
庄内の菅実秀ら西郷を訪ねる 
庄内一行、桐野利秋と兎狩り 

4 士族騒乱をよそに兎狩り 
神風連、秋月、萩の乱 
西郷の胸中、「天下驚くべきの事を」 
騒ぎを避けて、犬と小根占へ 
警視庁中警部、鹿児島に潜入 
火薬庫襲撃事件 
愛犬と別れ、小根占を立つ 


第五章 
犬連れの西南戦争  

1 葉巻をくゆらし余裕の出陣 
出陣の時、犬はいたか 
磯邸前で旧藩主に敬礼 
想定外だった熊本での戦闘 

2 犬連れ西郷の目撃者たち 
官位剝奪の使者と兎狩り 
西南戦争は「戦争」ではなかった 
熊本籠城戦と犬猫 
熊本撤退、人吉で兎狩り 

3 犬連れ撤退 
犬連れで人吉を去る 
宮崎の亀松少年と犬連れ兎狩り 
犬を連れ、北へ北へと撤退 
司馬遼太郎が語る犬連れ西郷 

4 ついに「戦争」が始まった 
陸軍大将の軍服を焼き、犬三匹を放す 
城山の最期と犬たちのその後 


第六章 
狩りを始めた明治天皇  
─西郷への追憶─

1 西郷自刃の衝撃 
西南戦争直前の京都行幸 
赤坂仮皇居で兎狩り 

2 西郷への追憶と兎狩り 
庭で犬を飼う喜びを知る 
多摩で本格的な兎狩り 
憲法発布、賊徒の汚名除かれる 


第七章 
西郷と犬、銅像になる  

1 なぜ犬連れ像になったのか 
建設地、上野に決まる 
犬連れ像を推した榎本武揚 
西郷像の身なりの発案者は大山巌 

2 顔は似ているのか 
キヨソーネの肖像画への評価 
「こげな人じゃなかった」発言の解釈 
犬のモデルになった仁礼景範の愛犬サワ 

 
終章
文明開化の果てに──絶滅した薩摩犬  


あとがき 
「西郷隆盛と犬」の略年表 

著者プロフィール

仁科 邦男  (ニシナ クニオ)  (著/文

1948年東京生まれ。70年、早稲田大学政治経済学部卒業後、毎日新聞社入社。下関支局、西部本社報道部、『サンデー毎日』編集部、社会部などを経て2001年、出版担当出版局長。05年から11年まで毎日映画社社長を務める。名もない犬たちが日本人の生活とどのように関わり、その生態がどのように変化してきたか、文献史料をもとに研究を続ける。動物文学会会員。ヤマザキ学園大(動物看護学部)で「動物とジャーナリズム」を教える(非常勤講師)。著書に『九州動物紀行』(葦書房)、『犬の伊勢参り』(平凡社新書)、『犬たちの明治維新 ポチの誕生』『伊勢屋稲荷に犬の糞 江戸の町は犬だらけ』(いずれも草思社)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。