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「心の理論」テストはほんとうは何を測っているのか? 熊谷 高幸(著) - 新曜社
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「心の理論」テストはほんとうは何を測っているのか? (ココロノリロンテストハホントウハナニヲハカッテイルノカ) 子どもが行動シナリオに気づくとき (コドモガコウドウシナリオニキヅクトキ)

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発行:新曜社
四六判
232ページ
並製
価格 2,200円+税
ISBN
978-4-7885-1597-0   COPY
ISBN 13
9784788515970   COPY
ISBN 10h
4-7885-1597-0   COPY
ISBN 10
4788515970   COPY
出版者記号
7885   COPY
Cコード
C1011  
1:教養 0:単行本 11:心理(学)
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2018年10月
書店発売日
登録日
2018年9月7日
最終更新日
2018年10月2日
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紹介

心は集団の中でどのように発達するか?
 「サリーとアン課題」などで知られる「心の理論」テストは、他者の心を読む能力を測るもの、と考えられています。しかし、そもそもテスト場面の意味を理解するには、どんな経験と、それに基づく能力が必要なのでしょうか? 本書はまず、テストが実施される現場に立ち戻り、園児たちの具体的な反応を丁寧に分析します。さらに、この時期の子どもたちの生活を支配する集団の視点を取り入れた新テストを開発し、なぜ四歳頃を境にパスできるようになるのか、なぜ自閉症児はパスできないのか、といった謎にも、まるでパズルを解くように迫っていきます。「心の理論」研究に新たな視座を提示する刺激的な書。

目次

「心の理論」テストはほんとうは何を測っているのか? 目次

序章 「心の理論」テストの現場に戻る
  サリーとアン課題とともに有名になった「心の理論」
  心への気づきをどう確かめるか?
  テストにパスしない子どもも状況は読んでいる
  集団の視点と個の視点
  「心の理論」を専門家の視点から現場の視点へ

1章 「心の理論」を捉え直す本書の視点
  「心の理論」の華々しいデビュー
  「心の理論」はなぜ重要か?
  「心の理論」に対して現れ始めた疑問
  「心の理論」を建て直す本書の視点

2章 「心の理論」テストを解剖する
  サリーとアン課題が実施される現場に戻る
  サリーとアン課題がおこなわれる現場の構造は?
  集団的バイアスのかかる状況
  マキシーとチョコレート課題
  情報共有ができない事態の発生
  スマーティ課題
  台本(スクリプト)をもとにして作られる行動イメージ
  映像記憶について
  写真課題
  カメラと人の目の違い

3章 二種類の他者と二種類の「心の理論」
  サリーとアン課題の中の二種類の人間関係
  二種類の他者と二種類の「心の理論」
  日本の子どもは「心の理論」の達成が遅い?
  私-あなた関係に重心を置きやすい日本文化
  子ども時代にも及ぶ日本人の人間関係
  同心円的な関係を日欧の言語に当てはめてみると
  私-あなた関係にもとづく日本語世界
  共有と非共有のあいだ
  私-あなたの関係から第三者を見る視点へ

4章 共同行為の中で気づくスクリプトの違い
 大人がイメージする「心の理論」の誤り
  「同じ」と「違う」に気づくとき
  園での集団生活の始まり
  園生活の台本(スクリプト)
  園生活の中のスクリプトの特徴
  集団の中で気づくスクリプトの違い
  自閉症児に対するスクリプト支援
  スクリプトを途中からたどることができる利点

5章 「心の理論」の新テストの開発
  共同行為性が見えにくいサリーとアン課題
  新テストの開発
  遠足課題の作成
  サリーとアン課題とともに適用してみると
  子どもは自分の選択をどう理由づけたか?
  現在形と過去形に分かれた理由づけ
  クイズ感覚で答える
  時間意識の芽生え
  二つの過去
  心を表すことば
  自分の視点と第三者の視点とのあいだでの迷い
  所属による理由づけ
  遠足課題に表れた強い目的意識
  皆に合流させたい気持ち
  個の動きへの注目

6章 子どもが途中経過に注目し始めるとき
  中継点に注目する必要
  サリーとアン課題の修正版
  遠足課題の修正版
  修正課題を四~五歳児に当てはめてみると
  目的意識が強まった場合
  修正課題でも変わらなかった部分
  出来事の後先に注目することの重要性
  遠足課題の修正版にはどう反応したか?

7章 自閉症児は「心の理論」テストにどう反応したか?
  強いゴール意識
  自閉症児はどう理由づけたか?
  迷いを示さない速い選択
  迷いはなぜ生じるのか?
  シナリオによる支えの必要
  二つを同時に立てることがむずかしい
  私-あなた関係の基礎の弱さ

8章 第三者への共感はいつ生まれるのか?
  「心の理論」にともなう共感性
  動物は第三者の心を意識するだろうか?
  集団に影響を与える第三者
  第三者らしい第三者が生まれるとき
  遅延者・逸脱者としてのサリーの存在
  遅延者・逸脱者を見る先行者の立場
  第三者の中に自分を見るようになるとき
  同情・はずかしさ・秘密が生まれるとき
  スクリプトの発生・衝突・意識化へ
  集団内で気づくスクリプトの同型性
  「私たち」という視点の意味
  集団的バイアスと日本の子ども
  「心の理論」の認知成分と共感成分
  「心の理論」の達成に男女差はあるのか?
  第三者になると見えてくること

9章 先行者に対して働く「心の理論」
  先行者の行動予測が始まるとき
  カード分類テストの中の「心の理論」
  カード分類テストを自閉症児に適用してみると
  集団行動を反映する前頭葉の働き
  カード分類テストの簡易版を幼児に適用してみる
  テストの中で示された幼児と自閉症児の反応の違い
  物語の主人公を追跡する
  子どもが物語世界に入っていくとき
  自分の人生の物語を作り始める

終章 行動の流れの理解が「心の理論」を生む
  子どもの立場から「心の理論」を捉え直す
  「私たちの視点」対「彼/彼女の視点」
  行動を実行前、実行後、途中で見つめられるように
  スクリプトの多様化と集団性バイアスからの解放
  誤信念課題の一人歩き
  「心の理論」一五か月成立説の登場
  「心の理論」一五か月成立説への疑問
  第二者(あなた)の心から第三者(彼/彼女)の心へ
  「私」「あなた」「彼/彼女」を包み込む「私たち」という場
  「心の理論」に作用する共感成分と認知成分
  自閉症児の場合
  三種類の他者
  
  
あとがき
和文文献
英文文献
索引
  
  
 装幀 臼井新太郎
 装画 朝野 ペコ

前書きなど

「心の理論」テストはほんとうは何を測っているのか? あとがき

 「心の理論」は、今では、子どもの発達にかかわる誰もが気にすることばになっている。しかし、その正体はわかりにくく、専門家だけが立ち入る分野になりつつある。このため、人々は、横目でそっと、このことばを見つめながら、通り過ぎていくのが現状である。

 しかし、「心の理論」は、人の心を読む能力なのだから、子どもが人々とかかわる中で形成されていくはずである。だから、人々がかかわる、その現場から離れたところで議論が進められているのは非常に残念な状態である。

 本書で述べてきたように、心を読む行為は、行動を読む行為から生まれる。そして、行動を高いレベルで読むためには、行動とそれを包む出来事のしくみについてあらかじめ知っておくことが必要になる。この、行動と出来事のしくみを表すものが本書の中で何度も説明してきたスクリプト(台本)である。スクリプトは集団の中で作られ共有される。だから、「心の理論」を、それが生み出される現場に返すためには、スクリプトというものがキーワードになりそうである。

 そこで、このキーワードをめぐる議論を生むためのささやかな試みとして、本年、二〇一八年の発達心理学会で、「『心の理論』をスクリプトの視点で捉え直す」と題するラウンドテーブルを企画した。幸い、長年、「心の理論」に取り組んでこられた子安増生氏と木下孝司氏にコメントをいただき、また、ちょうど「心の理論」とスクリプトの関係をテーマに研究を進めている、京大院生の柳岡開地さんにも話題提供をしていただくことができた。企画には多くの方にご参加いただき、私にとっては、このテーマの重要性を確認することができる大切な会となった。

 また、この企画がきっかけとなり、長年、障害児の発達とスクリプトの問題について取り組んでこられた、長崎勤氏と佐竹真次氏よりお誘いがあり、コミュニケーション発達支援とスクリプト研究会で講演をさせていただいた。この研究会でも、ちょうど、スクリプトと「心の理論」を結びつけようとする動きが始まっていたのである。

 「心の理論」というテーマが現れて四〇年。このテーマを現場と子どもたちのもとに返す動きはすでに始まっているのかもしれない。このような中で、私の努力の範囲を越えて、このテーマが子どもの発達にかかわる多くの人々が共有できるものになっていくことを期待する。
  
 この本には、理論研究に加え、関連する実験研究をいくつか織り込んでいる。その実施に当たっては、多くの方々に助けていただいた。福井大学教育学部附属幼稚園と特別支援学校の生徒と先生方には多大なご支援をいただくことになった。また、私立北郷わしのこ保育園にもご協力いただいた。さらに、福井大学教育地域科学部(現在は教育学部)障害児教育コースの多くの学生の皆さんと当時の大学院生、門美幸さんには実験に協力していただいた。また、私が福井大学で主宰してきた自閉症児の療育教室に療育者として参加してこられた小坂正栄さんと学生諸氏からもご支援をいただいた。ここに謝意を表したい。

 また、出版に当たっては、新曜社の皆様にお世話になった。特に、編集部の田中由美子さんには、いつもながら、原稿の細部にまで何度も目を通していただき、その過程で、私自身の思考を深めていくことができた。ここに、感謝の意を表したいと思う。

上記内容は本書刊行時のものです。