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[決定版]原発の教科書 津田 大介(編集) - 新曜社
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[決定版]原発の教科書 (ケッテイバン ゲンパツノキョウカショ)

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発行:新曜社
A5変形判
360ページ
並製
価格 2,400円+税
ISBN
978-4-7885-1536-9   COPY
ISBN 13
9784788515369   COPY
ISBN 10h
4-7885-1536-9   COPY
ISBN 10
4788515369   COPY
出版者記号
7885   COPY
Cコード
C1030  
1:教養 0:単行本 30:社会科学総記
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2017年9月
書店発売日
登録日
2017年7月13日
最終更新日
2017年9月7日
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紹介

◆反対/推進の二項対立の陰、原発新設は着々と進む!
 再生エネルギーへと向かう世界の動向に逆行し、遂に政府はエネルギー基本計画に原発の新増設や建替えの必要性の明記を検討することとしました。本書では反原発派/推進派の対立図式の先鋭化が招くリスクを踏まえ、特殊な被災経験をもつ日本こそが知る事実と提言を、各界第一人者の書き下ろしで紹介します。廃炉、廃棄物、核武装、抑止力、原子力協定、交付金、避難計画、コスト、倫理他30項目に、前新潟県知事・泉田裕彦氏、東浩紀各氏と編者との徹底討論、もんじゅ君の漫画、武田徹氏他によるコラムも添えて、今後の原発課題を丁寧に解説します。

目次

[決定版]原発の教科書 目次
巻頭によせて 津田大介

〈原発〉基礎知識 小嶋裕一
  原子力年表 / 原発地図 / 世論調査 / 東京電力福島第一原発事故概要 / 基本ワード

それでも醒めない「もんじゅの夢」 もんじゅ君

第Ⅰ章 原発の現在
  論点整理
  [エネルギー基本計画] 偏りと漂流――現在のエネルギー政策について 橘川武郎
  [廃炉] 福島第一原子力発電所の廃炉の前途――混迷からの救出 佐藤暁
  [避難計画] 原発避難計画の問題点 上岡直見
  Column1 原発訴訟 河合弘之
  [避難者] 帰還政策が奪う地域の未来――福島県民に何が起きているのか? 山下祐介
  Column2 風評被害をめぐる「福島の食」の分断 小松理虔
  [原発輸出] 日本の原発輸出と核不拡散 鈴木真奈美
  Column3 不可解な「規制の虜」 黒川清
  INTERVIEW1 歴史に対して責任を果たしたい――元新潟県知事・泉田裕彦氏に聞く(津田大介)

第Ⅱ章 原発を考えるための4つのポイント
  論点整理
  [供給安定性] エネルギー安全保障から見た原子力 秋山信将
  [環境性] 地球温暖化対策と原子力発電 高村ゆかり
  [経済性] 原子力発電事業のリスクとコスト――持続可能性を検証する 高橋洋
  Column4 原発に関する安全安心 神里達博
  [安全性] どこまで安全であれば十分安全か? 佐藤暁
  Column5 核融合発電の可能性 小嶋裕一
  講演 夢からさめたこの国は、これからどこに向かうのか 小泉純一郎

第Ⅲ章 「核」か「原子力」か
  論点整理
  [核武装] 核燃料サイクルと独自核武装の“幻影” 太田昌克 
  Column6 独自核戦力のコストと核武装の代償 武田康裕
  [日米原子力協定] 日米原子力協定――日本の再処理とプルトニウム保有への米国の懸念
  新外交イニシアティブ 日米原子力エネルギープロジェクトチーム
                   (猿田佐世・平野あつき・久保木太一・西原和俊)
  [六ヶ所村] 核燃料サイクルと「六ヶ所村」 長谷川公一
  [放射性廃棄物] 日本における高レベル放射性廃棄物の最終処分の状況と問題点 伴英幸 
  [オンカロ] 「オンカロ」レポート 核のごみの最終処分場を訪ねて 小嶋裕一
  [合意形成] 「核のごみ」最終処分場にかかわる合意形成のために 今田高俊
  INTERVIEW2 誰にも保障できない10万年後の安全
  映画監督・マイケル・マドセン氏に聞く(津田大介)

第Ⅳ章 原発の未来
  論点整理
  [脱原子力] 脱原子力を決めたドイツ──背景と課題 熊谷徹
  [交付金] 原発立地自治体と交付金 清水修二
  Column7 もし本気で脱原発を望むのなら 武田徹
  [立地自治体] 原発が亡びても地方は生き残る 村上達也
  [核燃料サイクル] 原子力政策の今後──対立を超えて、根本的改革に取り組め 鈴木達治郎
  Column8 風評の固定を生む、福島の語りにくさ 小松理虔
  Column9 囚人のジレンマと福島第一原発事故 武田徹
  [倫理] 原発は倫理的存在か 東浩紀
  鼎談 なぜ我々は「原発」を忘れたいのか――報道・ネット空間・無気力の連鎖から、先へ
  東浩紀 × 津田大介 × 小嶋裕一

前書きなど

[決定版]原発の教科書 巻頭によせて
津田 大介

 突然の連絡だった。2014年3月13日、筆者のメールボックスに経済産業省資源エネルギー庁原子力政策課からメールが届いたのだ。内容は「原子力政策の方向性について意見交換をしたいので、1時間ほど時間を取ってもらえないか」というもの。都合をつけてミーティングを設定すると、原子力政策課長がやってきた。当時は経産省が日本の中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」の策定に向けて検討を進めている段階で、政府原案の一部が示された時期でもあった。

 彼らがメディアに出演している人間をピックアップして、自分たちの進めたい政策について「レク」(大臣やメディア向けの説明)を行う目的で来ることはミーティング前から容易に想像できた(実際に知り合いのメディア関係者にこの件について聞いてみたところ、原子力政策課が数十人単位でレクに回っていることが確認できた)。  彼らが持ってきた資料には、原発の総電力供給力が今後どうなるのか、時系列のグラフで示されていた。原発には40年(長くても60年)という「寿命」があり、「40年廃炉基準」を厳格に運用した場合には、2030年末の時点で、現存する48基のうち30基の原子力発電設備が廃炉となる。そうすると80%の稼働率でも全電源の15%しか発電することができない。つまり、もし、日本で原発をこのまま使い続けるのならば、原発を新設するなり、古い炉をリプレースする(置き換える)必要がある。そのことを遠回しに伝えるレクだった。

 原発の新設は、設置許可の申請から実際の営業運転開始まで10年前後の時間を必要とする。彼らはレク中しきりに「もうあまり時間は残されていない」という趣旨の話をしてきた。数年以内に新設やリプレースの国民的議論を始めるべきだということを言外に匂わせた。政府や経産省は原発を今後も使い続けることを前提に動き始めていたのだ―東京電力福島第一原発事故という未曾有の過酷事故からわずか3年しか経っていない時点での話である。

 筆者はこのレクを聞いた時から「そう遠くない将来、原発の新設・リプレースが原発議論の中心になる」と確信した。そうであるならば、議論が本格的に始まる前に新設・リプレースに伴う論点を炙り出し、国民一人ひとりが判断できる材料を増やす必要がある。こうして生まれたのが2015年5月に公開された、筆者が編集長を務めるウェブメディア『ポリタス』の特集記事「原発"新設"の是非」(http://politas.jp/features/6)である。本書はその内容を大幅にアップデートし、帰還政策や避難計画といった問題から、エネルギー安全保障や核武装など、原子力に「頼らざるを得ない」日本特有の事情まで、この2年で惹起された新たな論点を加えて教科書仕立てにしたものだ。

 日本政府は2014年4月に第4次エネルギー基本計画を閣議決定、翌2015年には2030年度の電源構成で原発の割合を20~22%にすると決定した。先に電源構成の割合を決めることで、新設・リプレースの議論の道筋をつけたとも言える。そして2017年6月に経産省が国のエネルギー計画に将来の原発新増設やリプレースの必要性を明記するという『日本経済新聞』の報道が出て、2カ月後にそれを否定する他社の報道が続いた。ついに「その時」がやってきたのだ。

 原発政策を巡る世界的な状況は2017年に入ってから大きく動いている。既に2022年までの脱原発を決めたドイツや、原子力事業の再開を国民投票で否決したイタリアに続き、台湾(2017年1月に2025年までの脱原発を定めた改正電気事業法が成立)、スイス(2017年5月に原発の新設を禁止し、2050年までの脱原発を柱とする新エネルギー法が成立)、韓国(2017年6月に文在寅大統領が原発の新規建設白紙化を表明、建設中の新古里原発5、6号機を中断)といった国々が既存の原発を使いつつも、原発の新設は行わず、原発が寿命を迎えるまでの間に再生可能エネルギーを伸ばして〝ゆるやか〟に脱原発することを相次いで表明した。

 他方、世界の原発事情を概観すると、国際的に脱原発が進んでいるとは言えない状況が見えてくる。日本原子力産業協会の2017年版レポートによれば、2017年1月1日時点で建設中の原子炉は60基あり、稼働中の原子炉は世界で計447基に及ぶ。

 日本は原発を今後も使い続けるのか、それとも脱原発を果たすのか、大きな岐路に立たされている。政府は原発の新設・リプレースを具体的な政策テーブルに載せつつある。もはや、原発に対して反対あるいは賛成の立場から感情的・原理的な主張を繰り返し、議論を停滞させている場合ではない。福島第一原発事故から得られた教訓を生かせるかどうかは、これからの我々日本国民の手にかかっている。  正確な知識に基づき前向きで構築的な議論を行うために。原発についても福島についても語ることを止めないために。日本の原発をどうするべきか、自ら考えて結論を出すための材料として本書を活用していただければ幸いである。

上記内容は本書刊行時のものです。