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a:9:{s:12:"shoshi_title";s:34:"誰が何を論じているのか ";s:11:"shoshi_isbn";s:17:"978-4-7885-1531-4";s:16:"shoshi_publisher";N;s:11:"description";s:961:"◆新たな知の立脚点を求めて  縮小する経済、混迷を極める政治と難題が山積みの日本。停滞感からヘイトスピーチをしたり教育勅語復活を訴えるような排外的で夢想的な勢力が力をつけています。既存の論壇・思想が頼りない今こそ、核心を突く問題提起を探しだし新しいビジョンを共に作る必要があるでしょう。近現代思想史の大局を見抜いてきた著者が、凡庸なものから先見性をもつものまで600人以上の論考を読み、労働環境を改善しうるジョブ型正社員論、自助に誘導される介護政策の問題、素朴実在論に陥らないビッグデータの利用法、アメリカの軍事リバランシングを巡る混乱など、難題を解きほぐしていきます。知的状況の記録であるとともに未来への指針を得られる地図となる時評集です。";s:6:"author";s:22:"小熊 英二(著/文)";s:10:"publishers";s:9:"新曜社";s:9:"publisher";N;s:9:"productor";s:9:"新曜社";s:12:"release_date";i:1502982000;}

誰が何を論じているのか 現代日本の思想と状況

小熊 英二(著/文)
発行:新曜社

四六判   554頁  並製
価格 3,200円+税

ISBN 978-4-7885-1531-4   C1030
在庫あり(出版社情報)

奥付の初版発行年月 2017年8月
書店発売日 2017年8月18日
登録日 2017年7月21日

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紹介

◆新たな知の立脚点を求めて
 縮小する経済、混迷を極める政治と難題が山積みの日本。停滞感からヘイトスピーチをしたり教育勅語復活を訴えるような排外的で夢想的な勢力が力をつけています。既存の論壇・思想が頼りない今こそ、核心を突く問題提起を探しだし新しいビジョンを共に作る必要があるでしょう。近現代思想史の大局を見抜いてきた著者が、凡庸なものから先見性をもつものまで600人以上の論考を読み、労働環境を改善しうるジョブ型正社員論、自助に誘導される介護政策の問題、素朴実在論に陥らないビッグデータの利用法、アメリカの軍事リバランシングを巡る混乱など、難題を解きほぐしていきます。知的状況の記録であるとともに未来への指針を得られる地図となる時評集です。

目次

誰が何を論じているのか 目次
読者の方々へ

※各章の下の名前の方々はその章のテーマを論評した記事/論考の主な執筆者

1「政治の対立軸」はいかにして可能か
  ―経済政策と労働改革
    宇野重規 飯田泰之
    細野豪志 濱口圭一郎

■選挙に頼れない今、対話を

2 立憲主義とはなにか
  ―自殺・うつ病・財政、そして民主主義
    北中淳子 神野直彦
    M・ブリス 想田和弘

3 ポピュリズムを呼びこむもの
  ―「橋下現象」と自民党改憲草案
    村澤真保呂 木村幹
    小林節 宇野重規

4 「アベノミクス」への評価
  ―リフレ政策をめぐる緒論
    P・クルーグマン 伊東光晴
    柳澤協二 寺島英弥

5 猫が読んだ憲法論議
  ―中東地域研究と知識人たちの憲法観
    佐伯啓思 大塚英志
    内橋克人 A・ビナード

6 身近な「停滞ニッポン」
  ―婚活、ヤンキー、シルバー民主主義
    蓑輪明子 綾屋紗月
    斎藤環 速水健朗

7 連帯をもたらす経済
  ―日中関係、財政、税制
    時殷弘 古木杜恵
    神野直彦 藤吉雅春

■「脱原発」実現しつつある日本

8 「悪の凡庸さ」
  ―ヘイトスピーチ、安保基本法、ロボット戦争
    丸山真男 五野井郁夫
    川口創 谷口長世

9 構造改革と原発
  ―金融緩和と産業政策
    岩田規久男 本山美彦
    小林慶一郎 泉田裕彦

10 メキシコからの視点
  ―尖閣諸島、選挙制度改革、AKB48
    五百旗頭真 片山善博
    山口二郎 杉田敦

11 日本の市場構造特性
  ―日韓関係、農業改革、「脱成長」
    木村幹 李元徳
    田中洋子 広井良典

12 耐えて忍んで「教育家族」
  ―「解釈改憲」、教育危機、労働環境
    水島朝穂 佐藤学
    木下武男 矢野眞和

13 「保守化」とは何か
  ―集団的自衛権と社会基盤
    北岡伸一 石破茂
    内田裕也 木村草太

14 統計学は神を降臨させうるか
  ―ビッグデータと「地方消滅」
    西垣通 竹内啓
    小島寛之 辻琢也

15 ウクライナの憂鬱
  ―クリミア危機、イスラム国、資本主義
    宇山智彦 A・リャブチュク
    高岡豊 H・デイリー

16 「保守」の安倍政権批判
  ―STAP細胞と「若手研究者の地獄」
    渡邉恒雄 和田春樹
    野家啓一 K・カルダー

■そんなことしている場合か

17 人権保護こそ地方創生の道である
  ―「慰安婦」問題、ブラック企業、地方創生
    今井隆 小倉和夫
    五十嵐泰正 Y・モンク

18 分裂するアメリカ
  ―「中間層」の喪失、戦争の変容
    G・パッカー 越智道雄
    篠田英朗 津上俊哉

19 政治の危機
  ―二〇一四年衆議院選挙、ギリシャ危機
    柿﨑明二 竹中平蔵
    P・エレフセリアディス 吉田裕

20 アベノミクス総点検
  ―政党政治、日韓歴史問題
    御厨貴 R・ツェルナー
    毛利和子 高橋洋一

21 情報過多時代の「反知性主義」
  ―「知性」の変容とピケティ
    T・ピケティ 酒井隆史
    上野俊哉 樋口直人

22 格差の「ニッポン的形態」
  ―震災四周年と「科学の中立性」、投票行動分析
    稲垣文彦 まさのあつこ
    添田孝史 菅原琢

■「ネット右翼」への対処法

23 「働き方改革」と英語教育
  ―WE導入、教育格差、沖縄
    海老原嗣生 岡崎勝
    江利川春雄 仲里利信

24 生きやすい社会とは
  ―少子化、ネット依存、「空き家問題」
    千田有紀 樋口進
    清水義次 藻谷浩介

25 介護破綻と介護難民
  ―安保法制、大阪都構想、ダイエット
    磯崎陽輔 長谷部恭男
    増田寛也 日吉野渡

26 「論壇」という存在の意義
  ―安保法制、デジタル変容、「地方移住」、観光ビジネス
    安倍晋三 辻元清美
    藤村厚夫 B・ランバーグ

27 戦後七〇年とは、建国七〇年のことである
  ―「戦後七〇年」とSEALDs
    樋口陽一 楊大慶
    三島憲一 M・ブリス

■「戦後」とは何なのか

28 共振する社会
  ―安保法制、政治とコミュニケーション
    牧原出 M・バーネット
    P・ウォーカー 本間龍

29 環境破壊と難民問題
  ―労働運動再考、流通とコンビニ
    A・シナイ 浅見和彦
    木下武男 新雅史

30 公明党の軌跡
  ―シリア内戦、介護離職、貧困LGBT
    御厨貴 東順治
    黒木英充 吉崎達彦

31 日本の政治意識と社会運動
  ―報道の自由、女性の政治進出
    吉田徹 鈴木秀美
    大山礼子 野口悠紀雄

32 EUとイスラム
  ―解雇と連帯感覚、オリンピック、新エネルギー
    冷泉彰彦 N・ウッズ
    K・マリク 神林龍

33 死刑の比較政治学
  ―格差と「下流老人」
    佐藤舞 千葉景子
    F・ブルギニョン 春日キスヨ

■「無難」な報道機関必要か

34 ただいまベルリン
  ―世界経済、政治の構造変動、住宅政策
    L・サマーズ R・イングルハート
    平山洋介 坂口一樹

事項索引
人名索引
装幀―難波園子

前書きなど

誰が何を論じているのか 読者の方々へ
 本書を手に取るのは、どんな人だろう。小熊英二という著者名にひかれた人だろうか。いわゆる「論壇」のマッピングに興味がある人だろうか。近年の時事問題に関心がある人だろうか。あるいはまた、本の編集や講演依頼の企画のために、いろいろな問題の専門家を把握しておきたいという人だろうか。

 目次をご覧いただければわかるように、本書に収録されているのは、さまざまな専門家たちが書いたさまざまな分野の論考にたいする私の論評だ。論評した論考の著者は六〇〇人を超え、あつかった分野も政治・経済・外交・軍事・歴史・法学・哲学など多岐にわたる。本書を通読すれば、あくまで私の視点を通じてだが、日本と世界の諸問題に関する一通りの知識と、専門家の位置取りがわかるだろう。

 私が本書に収録された論評を書いたのは、二〇一三年四月から二〇一六年三月である。私はこの時期、朝日新聞の論壇委員という仕事をしていた。この仕事のため、私のもとには、毎月毎週、朝日新聞社からさまざまな雑誌が送られてくる。それを読み、これはと思った論文をとりあげながら論評するのが論壇委員の仕事だ。

 私のもとに届く雑誌は、それこそ多岐にわたる大量のものだ。『世界』『中央公論』『文藝春秋』といった老舗の論壇誌、『科学』『都市問題』『POSSE』『外交』などの専門誌、『フォーリン・アフェアーズ・リポート』『Newsweek』といった国際情勢誌、『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』『週刊エコノミスト』などの経済誌、『正論』『WiLL』『Voice』といった保守系雑誌、『ピープルズ・プラン』『情況』『インパクション』といった左派系雑誌、『選択』『FACTA』などの事情通向け雑誌、さらには『週刊新潮』『週刊文春』『週刊朝日』『SPA!』といった週刊誌。私はこれらのほぼ全てに目を通し、傍線を引き、付箋を貼り、切り抜き、メモをとる作業を、この六年ほど続けている。論評にとりあげたのは、そのなかのごく一部だ。

 この仕事を始めたのは、二〇一一年四月からである。それ以後、二〇一六年三月まで、前述したように、私は論壇時評執筆者を補佐する論壇委員を務めていた。この時期は、作家の高橋源一郎氏が論壇時評を書いており、彼を補佐する論壇委員が、私を含めて六名集まっていた。これらの論壇委員と論壇時評執筆者は、毎月第三火曜に集まって議論し、論壇時評にとりあげる論考を決める。そのさい各論壇委員は、その月の注目論文の論評を作成する。本書に収録したのは、その時期に論壇委員として書いていた論評である。そして二〇一六年四月以降は、私が高橋氏に代わって論壇時評の執筆を受けつぎ、続けて雑誌を読んで論評する仕事を続けている。

 六年以上にわたって各種の雑誌を読んでいると、多くのメリットがあった。その一つは、俗に「テーマの先取り」とよばれるものだ。その時々に雑誌や新聞で注目されるテーマのほとんどは、じつは数年前から目立たない形で論じられていることが多い。

 たとえば、二〇一六年大統領選におけるトランプの勝利で、アメリカ社会の分断が注目された。しかし私はこの問題についての特集記事を、二〇一四年一一月の論評でとりあげていた。それゆえ私は、トランプの勝利を聞いても驚きはしなかった。

 また二〇一五年の安保法制のさいに、にわかに注目された「立憲主義」という概念も、二〇一三年五月の論評で自分の考えをまとめていた。そのほか、高等教育無償化やビッグデータ、過労自殺や働き方改革、リフレ政策や難民問題なども、世で話題になる前に良質な論文を読み、自分の考えをまとめていた。こうしたさまざまな問題を、十分な準備をもって考えることができたのは、幸いだったと思う。

 また個々の問題だけでなく、それら相互を連結させて全体構造を理解するために、論評を自分で書くことはよい修行になった。そして国内の問題だけでなく、世界の問題も並行して論文を読み、ひるがえって日本を相対的に理解することができた。またこの時期、メキシコやタイ、ドイツなどに客員教授や講演などで出かけていたため、世界の変化を肌で感じたうえで日本の問題を論じることができた。

こうした全体情勢への理解は、学者にとって重要なものだ。しかしそうした理解は、本当は、日々を生きている誰しもにとって重要だ。たとえば住宅政策について、教育の状況について、「働き方」改革について、うつ病や自殺について、ビッグデータやAIについて、知識があるのとないのとでは、人生に大きな違いが出る。

 今も昔も、「政治とは 遠きにありて 思うもの」という姿勢の人は多い。それ以上のことをする余裕がない人の方が大部分だろう。しかしそれでは、日々の動向にふりまわされ、追われるだけになってしまう。余裕がないから全体像がつかめず、全体像がつかめないから余裕がない。その悪循環から抜け出すには、多少面倒でも、やはり学ぶしかない。

 とはいえ、ある問題についての本や雑誌をいきなり読もうと思っても、誰のどの仕事が良いのか迷うだろう。それ以上に、そうした個々の問題が、どういうふうに連関しているのかを理解するのが困難だろう。本書がそうした状況を変えるのに、少しでも役立つのなら幸いである。 もちろん、本書に記してあるのは私の見解にすぎない。できれば、本書を契機として、論評した論文や、その著者の仕事を読んでもらいたい。その結果、私の論評が一面的であったと理解するようになったなら、それは私にとって幸いなことだ。なぜなら、あなたがそうした地点に行きつくのに、本書が役立ったのだから。

 なお本書には、私と同時期に論壇委員だった方々が選んだ、注目論文のリストが掲載されている。合わせて参照していただければ、より幅広い理解につながるだろう。また私が二〇一一年四月から二〇一三年三月までの二年間に論壇委員として執筆していた論評は、『論壇日記』(新曜社、二〇一五年)としてすでに発刊した。

 また本書収録のメモや書評には、論文や本に対する、私なりの論評が含まれている。当然のことだが、それらはあくまで、私の視点からの論評にすぎない。私の書いたものを参考にするにしても、最終的な評価は、読者が実際に読んで判断していただきたい。

 最後に付言すると、私が行なったのは、それぞれの論文や本に対する論評であって、著者に対する論評ではない。一本の論文の評価は、その著者の仕事すべての評価、いわんや人格に対する評価とは別である。

執筆の時点において、また本にする過程において、多くの方の助力をうけた。感謝したい。

二〇一七年六月
小熊英二

上記内容は本書刊行時のものです。