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探究!教育心理学の世界
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年3月
- 書店発売日
- 2017年3月7日
- 登録日
- 2017年2月16日
- 最終更新日
- 2017年3月13日
目次
探究! 教育心理学の世界 目次
まえがき
習得編
1 教育心理学とは
教育心理学の定義と課題 藤澤伸介
教育心理学の魅力と方法 無藤 隆
2 発達のメカニズム
教育と遺伝要因 安藤寿康
発達理論と発達段階 中澤 潤
発達研究法 飯高晶子
身体の発達と心への影響 松嵜くみ子
言語と認知の発達 内田伸子
社会性と情緒の発達 大久保智生
道徳性の発達 二宮克美
3 学習のメカニズム
学習とは何か 藤澤伸介
記憶のメカニズム 井上 毅
知識としての記憶 井上 毅
記憶と転移 寺尾 敦
習得のための学習法 藤澤伸介
探究力と創造性の獲得 楠見 孝
態度 犬塚美輪
4 学習を支える教育実践
教授学習の行動主義的基礎 小野浩一
目標・診断・評価 藤澤伸介
学習意欲 鹿毛雅治
授業づくり 鹿毛雅治
学習スタイルと教授スタイル 小林寛子
5 「ニーズ」と援助
学校教育とカウンセリング 伊藤亜矢子
しつけと学習の援助 鈴木雅之
学級風土と学級経営 伊藤亜矢子
6 特別支援教育
教師教育における特別支援 小沼 豊
障碍の理解─通常の学級における特別支援教育 小貫 悟
人権と特別支援教育 松田信夫
7 教育とICT
教育の情報化 田中俊也
情報機器活用の可能性と評価 田中俊也
ネット化浸透の負の側面 高比良美詠子
探究・活用編
1 教育
トピック1-1 教育理解の諸アプローチ 中澤 潤
トピック1-2 日本の学校教育と心理学 市川伸一
2 発達
トピック2-1 ピアジェ理論を考える 中澤 潤
トピック2-2 ギリシア神話と心理学 小川俊樹
トピック2-3 モンテッソーリ教育を考える 飯高晶子
トピック2-4 エリクソン理論を考える 山岸明子
トピック2-5 母語の獲得 大津由紀雄
トピック2-6 中高生の社会性 大久保智生
トピック2-7 知能について 安藤寿康
3 学習
トピック3-1 日本の学習者の実態
─「高水準な義務教育の成果」の裏で 山森光陽
トピック3-2 ごまかし勉強 藤澤伸介
トピック3-3 学習観と学習法の選択 吉田寿夫
トピック3-4 学習習慣 藤澤伸介
トピック3-5 記憶と学習の意味 前野隆司
トピック3-6 自己調整学習 篠ヶ谷圭太
トピック3-7 予習の効果 篠ヶ谷圭太
トピック3-8 学習方略としての概念形成 藤澤伸介
トピック3-9 概念受容学習と概念発見学習 工藤与志文
トピック3-10 学習方略の活用 藤澤伸介
トピック3-11 ノートの活用 藤澤伸介
4 学習を支える教育実践
トピック4-1 ガニェの分類と学習指導要領 鈴木克明
トピック4-2 教師の成長 藤澤伸介
トピック4-3 学習指導要領と学校現場の乖離 藤澤伸介
トピック4-4 学力テストの実施法 藤澤伸介
トピック4-5 指導要録・通知表・内申書 鈴木雅之
トピック4-6 テストの統計的基礎 村井潤一郎
トピック4-7 指名と発問 藤澤伸介
トピック4-8 黒板の活用 藤澤伸介
トピック4-9 教授の基本原理 藤澤伸介
トピック4-10 集団思考と単独思考 釘原直樹
トピック4-11 教えて考えさせる授業
─中学の数学を中心に 市川伸一
トピック4-12 習得の基礎としての「読解力」の指導 犬塚美輪
トピック4-13 母語獲得と外国語学習の違いから見えてくる
言語教育のあり方 大津由紀雄
トピック4-14 英語学習プロセスを探る
─中学生の英文主語把握 金谷 憲
トピック4-15 学習指導要領改訂と英語力経年変化 斉田智里
トピック4-16 理科教育における動機づけの可能性 飯高晶子
トピック4-17 社会科における誤概念の修正 進藤聡彦
トピック4-18 学級はどう変化していくか 伊藤亜矢子
トピック4-19 習熟度別少人数学習集団編制 山森光陽
トピック4-20 応用行動分析学の教室での活用 平澤紀子
トピック4-21 居眠り・私語・カンニング 釘原直樹
トピック4-22 学級崩壊 小林正幸
5 「ニーズ」と援助
トピック5-1 認知カウンセリング 藤澤伸介
トピック5-2 TET(教師生徒関係訓練法)
─望ましい教師と生徒関係 市川千秋
トピック5-3 予防的援助に一般意味論の活用を 藤澤伸介
トピック5-4 ブリーフカウンセリング
─解決焦点化アプローチ 市川千秋
トピック5-5 認知行動療法 神村栄一
トピック5-6 中1ギャップ 村栄一
トピック5-7 構成的エンカウンターグループ 野島一彦
トピック5-8 生理学的病態としての不登校理解 三池輝久
トピック5-9 モンスターペアレント 小野田正利
6 これからの教育を考える
トピック6-1 日本の特別支援教育 山口豊一
トピック6-2 フィンランドの教育からの知見 福田誠治
トピック6-3 ニュージーランドの教育からの知見 植阪友理
トピック6-4 21世紀型教育 森 敏昭
あとがき
引用文献
索引
〔付録〕索引活用ガイド
著者一覧
装幀=藤澤伸介
前書きなど
探究! 教育心理学の世界 まえがき
編 者
【1】閉ざされた本と開かれた本
学問の本には閉ざされた本と開かれた本がある。とはいっても表紙の話ではない。中身の話だ。重要事項だけがまとめてある本は、読んでも思考が限定されるので内容が閉ざされている本だ。これに対し、詳しい解説があって色々な問題意識をどんどん広げていける面白い本は、内容が開かれた本である。
左の表に公認心理師とあるから、「資格取得に役立つ教材なら、必要最小限の努力で効率よく記憶できるように、学習項目を簡潔にまとめた受験用指南書だろう」と推測し、本書を閉ざされた本だと誤解した方もあるかもしれない。
しかし、本書の編集方針はそれと真逆である。意味も十分に理解できないままに断片的知識を機械的に暗記して試験だけ乗り切っても、試験が終わればほとんどの記憶は消失して、暗記に費やした時間とエネルギーがすべて無駄になり、しかも内容が身につかないために、その学問を活用した問題解決ができないという事態になることを、教育心理学者は嫌というほど知っているからである。
人は、学びたいと思ったことしか学ばない。だから、内容に興味をもつか、その知識を使って問題解決をしたいと思わなければ、ある領域に精通することは不可能である。よって、本書には面白い知識や色々な分野で役立つような知識が、たくさん詰め込んである。順序にとらわれずに興味をもったところから拾い読みをし、気づいたらしっかりと身についていたというような、そういう読者を満足させるように作った書籍が本書である。つまり開かれた本なのである。
【2】もし脳細胞の記憶情報がコピーできたら!
教師の脳細胞に記憶された諸概念を学習者にコピーする技術が開発されたら、学校は不要になるだろうか。筆者はそう思わない。教育は知識のコピーではないからだ。人はかけがえのない人生を歩んでいるが、それは各人に個性があるからで、人生観も百人百様だ。学問の内容も、概念が構造化されて人生観や自己像の一部になるわけで、その構造化に個性が出るし、社会現象の理解の仕方もまた各人で異なる。だから、教育は各人が本人らしく個性的に人生を組み立てられるようにしていく営みなのである。
たいていの読者は富士山を見たことがあるだろうが、富士山のイメージは全員異なっているはずだ。見た方向も、時間も、季節も異なるからだ。で、どれが正解ということはない。ほんものの富士山を見て形成されたイメージである限りすべてが正しい。
諸理論の内容も教育現場の事象についても、研究者によって見方は変わる。見方が変われば対処法も変わる。本書ではそのことがわかるように、各執筆者に学問的主張をしていただくようお願いした。だから一つの事象でも理論でも、読者は色々な角度から見られて、実質により迫れるはずだ。例えば、不登校は何回も登場するが、執筆者によってすべて捉え方が異なる。その結果、社会的スキル訓練を重視したり睡眠教育を重視したりと、対策も変わってくることになる。
これは、読者の認識の深まりを促そうとしたことと同時に、事象の把握、理論の理解、人生観、人間観はそもそも多様だということを読者に伝えたかったからである。たとえ記憶情報のコピーが可能になっても、実施するとたぶん拒絶反応が出るだろう。要点集の機械的暗記をさせられると不快になるのも拒絶反応の一種と考えられる。だから、受験対策の要点集にはしていないのである。
【3】教育心理学は役に立つか?
教育心理学のテキストは読者の学習改善にも役立つはずだというのが、筆者の考えである。したがって、従来の概論書と異なり、特に学習方略をたくさん紹介した。しかも、研究上の文脈よりは方略利用者の便宜を考えて配列した。学習に有害な方略は別として、各人がその効果の程を色々な科目で試してみることが重要だと考えたからである。学習方略を色々試すと、習得活動は楽しくなるに違いない。
「教育心理学なんて教育現場には役立ちませんよ」と言う教師が時々いるが、役立つかどうかは学問の側の問題ではないので、その人が役立ててこなかったことを表明しているに過ぎない。筆者としては、教育心理学ほど教育現場で役立つ学問はないと思っているので、授業実施者の立場からも活用できるようなトピック設定を積極的に行った。授業づくり、教科の心理、黒板、予習、……など現場教師に役立ちそうなトピックも、類書と異なり多く採用してある。
【4】執筆陣をどう集めたか?
「入門書は読者が素人だから執筆者は専門家でなくてもかまわない」という考えがある。筆者はこの意見に賛成しない。入門書こそ、第一線で活躍している専門家が書くべきだと考えているからだ。
心理学で確かめられている知見に「最初の印象は強烈」というのがある。人が面接試験では最高の自分を示そうと頑張るのはそのためだ。同様に、その学問を初めて読者に紹介する入門書こそ、その領域に精通している人材が精魂を傾けて執筆すべきなのだ。考えてみてほしい。初めて富士山を訪れる多様な人々皆が満足するガイドができるのは、富士山を知りつくした人だけだ。気楽に登山を楽しむだけの人も、将来エベレスト登頂を目指すかもしれない人も含まれているからだ。自力登頂できる人はそもそもガイドを雇わない。
したがって、本書の各節はそれぞれの領域に最もふさわしいと考えられる方々に執筆をお願いした。その結果、多様な読者の知的好奇心を十分に刺激できる豪華な書籍に仕上がり、至福の極みである。読者の方々は、順序にとらわれずに興味に任せて好きなところからお読みいただきたい。
【5】なぜ二部構成なのか?
本書の構成は、習得編と探究・活用編から成る。習得編は、全国から100大学の教育心理学の授業シラバスをランダムに入手し、その最大公約数的内容を参考に、理論を中心に体系化した。したがって、多くの教育心理学者が基礎知識と考えている内容が習得編に含まれている。
また、探究・活用編は、各担当教員が独自に取り上げることによって授業の個性化が図れるようなトピックを、編者の判断で選び、入れるようにした。研究者が注目しているテーマ、社会現象として報道されているような問題、心理的支援の具体的方法、日本のこどもたちの現状や海外の教育事情、各教科の学習改善や教育改善のための知識、データを理解するための統計の基礎知識など、あらゆる内容が含まれている。これだけ多様な内容であれば、将来公認心理師として活躍するための基礎的素養としても、役立てられるに違いない。
このように二部構成にしたのは、大学での授業用テキストとして活用しやすくするためである。授業時間数を考えて書籍の内容を取捨選択するようなことはせず、内容を豊富にすることで、担当教員が各人の専門性に合わせて内容を自由に選択し構成できるので、各担当者の授業内容がテキストに縛られずにすむのである。授業で割愛された部分の内容は、学生が各自の興味に合わせて、発展学習として楽しめばよい。そう考えて、読書ガイドも各項につけるようにした。
以上が本書の特徴である。多様な目的に適った深い読みができるように構成したので、索引なども活用しながら、是非探究の醍醐味を満喫いただきたい。
版元から一言
◆知的好奇心に開かれたテキスト!
大学の授業でいかに教師が探究的活動を奨励しても、学生たちはなかなか発展的な学習をしない傾向があるといいます。どうすれば知的好奇心を引き出し、深い学びが身につくのでしょうか? 本書は『ごまかし勉強』で知られる編者のもと各領域の第一人者が結集し、学問的な客観性と同時に、読み物としての面白さや学習の意義が伝わる記述を心がけて作り上げた贅沢なテキストです。大学の教職課程や公認心理師資格取得の教科書、研究者を目指す人にとっての入門書、現職の教員が自分の教育を考えるヒントに富んだ参考書として好適!
上記内容は本書刊行時のものです。